台湾史上最大のLGBTイベントが台北で開催、25万人参加へ。

讓生命不再逝去為婚姻平權站出來音樂會

台湾LGBTプライドを凌ぐ新記録を更新!過去最大規模に。

12月10日(土)の「世界人権デー」に合わせて、台湾・台北では同性婚合法化を求めるイベントが開催。10月に過去最大の8万人を記録して成功を収めた「台灣同志遊行(台湾LGBTプライド)」を上回る参加者が会場を訪れ、台湾の歴史上前例のない大規模なLGBTイベントとなりました。

同性婚支持者25万人が凱達格蘭大道に集結。


「台灣同志諮詢熱線」など同性婚合法化に向けて活動するグループの呼びかけにより開催された「讓生命不再逝去為婚姻平權站出來音樂會」。総統府前の凱達格蘭大道には大勢の参加者が押し寄せ、会場内に収まりきらないほどの人出に。会場から最寄りのMRT(地下鉄)台大醫院駅までおよそ500mが支持者で溢れかえり、移動もままならないほどの大盛況となりました。

主催者側の発表によると、今回のイベントには当初の目標を上回る25万人が参加。これは2014年に起こった大規模な学生運動「太陽花學運(ひまわり学生運動)」に次ぐ規模となり、10月に台北で開催されたアジア最大級のLGBTプライド「台灣同志遊行(台湾LGBTプライド)」のおよそ3倍。LGBT関連イベントとしては台湾史上最大の規模を記録しています。

民法不修 歧視不休

現在、台湾では婚姻平權(婚姻平等の権利)を実現するための「民法改正法案」が、国会に当たる「立法院」にて審議段階に入っています。婚姻に関する性別の表記をなくすことで、同性カップルでも合法的に婚姻制度を利用できることを目指すものですが、この法案をめぐって立法院内でも意見が対立。同性カップルのみに適用される婚姻に準ずるパートナーシップ制度「同性伴侶法」を成立すべきという声も上がっており、世論を二分する白熱した議論が繰り広げられています。

(詳しくは『台湾の同性婚合法化への討論は今どこまで進んでいるのか?』をご参考ください。)

ステージに立つ尤美女立法委員

今回のイベントは「民法改正法案」を支持するもので、この法案の立役者でもある尤美女立法委員もステージ上に登場。あいにくの曇り空になぞらえて「太陽の光が射したとき、虹はかかる。」と変わらぬ支持の立場を表明し会場を沸かせました。イベントでは台湾の有名アーティストたちによるライブパフォーマンスや、著名人たちからの応援VTRも公開され、会場に集まった支持者たちにエールを送りました。

「民法改正法案」の次回審議は12月26日(月)。25万人の声が政治の場にどのように届いているのか、審議の行方に注目が集まっています。

同性婚反対派集会は全台湾で20万人を記録。

婚姻家庭全民決定

画像出典:聯合新聞網

支持派の動きが注目を集める一方で、同性婚反対派による活動も活発化。今回のイベントに先立つ12月3日(土)には、同じく総統府前の凱達格蘭大道にて反対派グループによる集会が催され、「民法改正法案」への異議を唱えました。

下一代幸福聯盟串聯多個反同婚團體發起「婚姻家庭全民決定,子女教育父母決定」陳情活動,下午2時在總統府前凱達格蘭大道聚集身穿白衣的群眾,(中略)主辦單位估計會有10萬人走上街頭。

出典:聯合新聞網『反同大遊行 白衣民眾聚集凱道』

(今月3日)、「下一代幸福聯盟」と複数の同性婚反対派グループが合同で集会を開き、「婚姻と家庭に関する法律は全国民(国民投票)によって決められるべきであり、子供達の教育は父母(異性の両親)によって進められるべきである」との立場を表明しました。総統府前の凱達格蘭大道にて午後2時より始まった集会には白い服に身を包んだ支持者たちが集まり、主催者側の発表ではおよそ10万人が参加したと伝えられています。

訳:Kazuki Mae

また今回の集会に合わせて、反対派グループは台湾の四大主要紙とテレビメディアにおいて大規模な広告キャンペーンを展開。新聞広告だけでもおよそ200万台湾ドル(約720万円)もの資金が投入されたと伝えられており、特にテレビCMの過激な言論に批判が集まるなど、大きなニュースとなりました。

反対派による集会は台北以外の主要都市でも開催され、参加者は合計で20万人と発表されています。今回の支持派イベントではこの人数を上回ることが必達の目標として定められていました。当初の目標を超える25万人の参加者を集められたことで、立法院での法案審議はもちろん、台湾社会へも大きな波及効果をもたらすことができたのではないかと、今後の動向に期待が寄せられています。

広告用募金に応募殺到!わずか5時間で1,000万円を達成。

婚姻平權廣告

画像出典:法律白話文運動 Plain Law Movement

反対派の一連の行動を受け、支持派も応戦の構えを見せた今回の集会。支持派メディアの「法律白話文運動(Plain Law Movement)」は反対派に対抗し、主要新聞による広告キャンペーンを展開することを提案。広告費用はすべて募金によって賄われ、わずか5時間で目標の2倍の金額を達成したとして話題となりました。

婚姻平權議題持續發燒,對於同性婚姻是否法制化也引發各界爭議,繼反同婚團體在四大報刊登廣告後,讓即將在12月10日走上凱道支持婚姻平權的團體,也決定募款刊登廣告反擊,(中略)目前已募得超過329萬因此停止接受贊助。

出典:聯合新聞網『募資登報挺同婚 不到5小時已達標獲329萬』

婚姻平權(婚姻平等の権利)に関する討論が過熱化し、同性婚姻の法制化をめぐって各界から様々な意見が飛び交う中、同性婚反対派グループが四大新聞に出稿した広告に対して、12月10日凱達格蘭大道で集会を開く同性婚支持派グループは募金による新聞広告出稿で反論することを決定。現在(開始から5時間)までにすでに目標金額を上回る329万台湾ドル(=約1180万円)が集まったため、新たな応募の受け付けは終了する運びとなりました。

訳:Kazuki Mae

募金活動が開始されるや否や、Facebookを中心としたSNSによって瞬く間に拡散。応募した人数も3,000人以上と驚異的なスピードと金額を実現したこの出来事からも、今回の支持派イベントへの注目度の高さをうかがい知ることができます。

イベントを支えた「蜜蜂」たち。

婚姻平權小蜜蜂計畫

画像出典:婚姻平權小蜜蜂 Facebookページ

インターネットによる宣伝活動が功を奏し成功を収めた今回の集会ですが、それと同時に忘れてはならないのが支持者たちによる「草の根運動」の貢献。「婚姻平權小蜜蜂」と名付けられたこの活動が今、台湾全国で広がりを見せています。

「婚姻平權小蜜蜂」計畫,顧名思義是希望每一個支持婚姻平權的朋友,都可以成為一隻小蜜蜂,把我們知道的正確訊息,透過身體力行的方式,把「蜜粉」傳遞出去。

出典:女人迷『婚姻平權小蜜蜂的實踐:親愛的路人,聊聊婚姻、伴侶法、同志伴侶法吧』

「婚姻平權小蜜蜂」計画は、婚姻の平等を支持する一人一人を「蜜蜂」にたとえて名付けたものです。自らの身体を動かすことによって花々の受粉を手助けする蜜蜂のように、知る得る正確な情報を街で出会った一人一人に自らの足で伝えていくために活動を展開しています。

訳:Kazuki Mae

駅前や公園、街の主要スポットなどに支持者たちが実際に立ち、街行く人々に婚姻平權(婚姻平等の権利)を訴えるチラシを配布したり、法案の改正によって何が変わるのか(変わらないのか)を説明してまわるなど、相互理解の機会を設けることが目的のこの「ミツバチ活動」。参加者全員がボランティアで運営されており、Facebookでの登録者数はすでに1万人を突破しています。

支持派イベント前にも様々なエリアで実施され、引き続き民法修正法案の審議が行われる今後もさらなる広がりが予想されます。「ミツバチ」たちの努力によって結ばれた実が台湾社会に希望の種を蒔く日は、もうすぐ近くまで来ているのかもしれません。

同性婚合法化へ向けて勢い付く台湾、全社会を上げての議論始まる。

25万人という台湾史に残る記録的な参加者数となった今回の支持派イベント。支持派、反対派双方ともに20万人規模の人々が動いたことは、「婚姻平權(婚姻平等の権利)」というテーマを社会全体で考える段階まで台湾社会が成熟しつつあることの証明と言えそうです。政治の場のみならず、全社会を上げての討論が始まった台湾がどのような結論を導き出すのか、今、世界が注目しています。

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ABOUTこの記事をかいた人

1987年香川県生まれ。旅で訪れた台湾に恋して、2012年に来台。2013年には念願の海外社会人デビューを果たし、現在台北にて広告関連のデザイナーとして奔走中。台湾でのLGBTな日々をつづるブログ『にじいろ台湾』を書いています。