【サムソン高橋の「ゲスの極み放談」】ゲイや同性愛者をLGBTでオブラートする気なの?

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非シャイニーなサムソン高橋がシャイニーの聖地「LETIBEE LIFE」で好き勝手にLGBT業界を語り尽くすと言う怖いもの知らずな放談企画。今回は一橋大学のアウティング事件から、最近の言葉狩りムーブメントやカミングアウトに関して語ります。(聞き手:いたる)

今年の夏は映画の季節だったね!

いたる(以下”I”):あんた、最近なんか映画観た?
サムソン高橋(以下”T”):LOVE まさお君が行く!』かしら。
I:うん、それまず最近のじゃないし(2012年公開)。話題の広げようが欠片もない映画どうして観てんだよ!
S:今んとこ最後に旅行に行ったベトナムのゲイサウナのテレビ室に映ってた衛星放送で、なんでか放映されてたのよ。いつものようにまったくモテなかったから最後までご鑑賞よ。シンガポールのゲイサウナでまったく同じ状況で『呪怨』観たのと、某24会館上野店で『オーメン』をシリーズ三作立て続けに観たときのほうが精神的にきつかったけどね。ホラー極まりなかったわよ。自分自身が。
I:この夏の映画といえば、あるでしょうが、邦画で大ヒットしたのが、ほら。
S:HIGH&LOW ザ・ムービー』かしら。ヤンキー漫画好きの極一部で盛り上がってるからちょっと興味あるのよね。
I:その映画さあ、知り合いで観たって人が一人もいないんだけど、結構ヒットしてんのよね……、って、ザイル映画の話じゃねえよ!『シン・ゴジラ』と『君の名は。』だろ、今年の夏映画を語るとしたら! 『シン・ゴジラ』なんて世界最速上映と銘打った公開日前日の深夜3時から歌舞伎町のIMAX観に行ったんだから。
S:もう、無理しなくていいのよ、50歳超えてるおじいちゃんが。
I:おじいちゃんじゃなくてオッサンだから!(怒) 無理してでもいち早く話題作をきっちり映画館で観たいのよ! 時代に取り残されたくないの!
S:必死ね。で、どうだったの。
I:すごく情報量の多い映画なわけよ。莫大な情報量って催眠効果があるのよね。で、深夜っつうか早朝だもんだから、途中でぐっすり寝ちゃって……。「寝ていた間にとんでもないことが起きていたに違いない」って二回目行って確認したのよ。そしたら、真ん中でゴジラが大暴れするシーンを丸ごと寝てたことが分かって驚愕したわ。IMAXの大音響も私の眠気には叶わないのねって。そんな訳で二回目は確認で終わったから、もう一度見に行ってようやく納得。面白かったわよ。
S:50超えると理解能力って落ちるのね……。私、オリジナルもその後のシリーズも含めて、たぶん人生で一秒も観たことがないのよ、ゴジラって。
I:わかった。『シン・ゴジラ』はこれで終わり。『君の名は。』はどうよ。普段はアニメ観ない私も、初日の歌舞伎町で号泣したわよ。
S:アニメってアニオタの兄にむりやり『伝説巨神イデオン・発動編』見せられたトラウマで好きじゃないのよ。あと私、いわゆるジュヴナイル(70年代の少年少女ものライトノベル)って苦手だからさ。
I:ねらわれた学園』も『なぞの転校生』も? 私が崇拝する『時をかける少女』も?
S:おしなべて苦手なの。それこそ、『未来少年コナン』が大っ嫌いだったからさ。
I:ラナー!(暴れ出す) 『未来少年コナン』をディスるなんて許さない! イデの力、発動!(ぶん殴る)
S:ギャー! 暴れるにしてももうちょっと若い人にわかりやすい形で暴れなさいよ!
I:なんで少年少女ものが嫌いなのよ?
S:ほら私、ゲイ以前に友だちのいない子だったからさ。昼休みは図書室で、遠足のバスは補助席で、組体操はいつも余ってひとりぼっち。だから同世代で生き生きしてる子供たちってのに対して、まんべんなく憎しみを抱いてたのよ……。
I:それ言ったら、私も小中学生のころ親父の転勤で転々としてたから、周りと溶け込めなくて浮いてたの。だから逆に私はジュヴナイルもの好きなのよ。自分が体験できなかったかつての理想の世界としてかりそめに味わってるんだと思うわ……。
S:やめましょうよ、導入部で50前後の親父が小中学生の頃のトラウマ語り合うのは……。
I:そうね。最近観た映画『怒り』に関しては記事書いたので、時間のある時に目通しておいて。
ゲイ当事者が称賛する、映画「怒り」で妻夫木聡が見せた自然なゲイ演技の凄さを感じる3つのポイント。
S:自分の書いた記事の宣伝は忘れないのね。

ゲイとか同性愛者って言葉狩りされちゃうの?

S:久しぶりの対談だけど、この間でLGBT関連で一番話題になったのは、やっぱり一橋大学のアウティング問題かしら。
I:デリケートかつ複雑な問題だし、いろいろ考えたり言いたいことはあるんだけど……、この件に関してまず一つ言及したいことがあるの。
S:なに?
I:この事件はいろんなメディアで報道されたんだけど、天下のNHKのサイトでは転落死した男性のことを『LGBT男性』って記載したの。はぁ? 何よそれ?って。
LGBT男性自殺で大学を提訴ーNHK首都圏NEWS WEB
S:ぼんやりしてるわね。
I:LGBT男性って、レズビアンでゲイでバイセクシャルでなおかつトランスジェンダーの男性のことかよって。ありえないでしょ? 「性的少数者」って意味だとしても、「性的少数者男性」ってのもおかしいでしょ。なんで堂々と「ゲイ」とか「男性同性愛者」とかって言えないんだよって。
S:だから、あれでしょ。「ホモ」や「オカマ」という言葉が差別語とされるから「ゲイ」「オネエ」という言葉に置き換えました、って感じの延長線上じゃないの。
I:でも「『ホモ』は差別語だから『ゲイ』に置き換えましょう」っていうのが認識としてあるなら、なんで堂々と「ゲイ」って言えないのよ。
S:「ゲイ」「男性同性愛者」だとちょっと生々しいからでしょ。なんかアルファベットの横文字で、きれいにオブラートに包んだ言い方にして。
I:結局「言葉狩り」ってことでしょ。それに近いことがこないだあってさ。『フォアミセス』って雑誌に性同一性障害に悩む子供を描いた漫画「見えない子どもたち」が載ったんだけど、宣伝文句が
「あなたは“LGBT”を知っていますか…!?」
「“LGBT”を我が子に告白されたら、あなたはどうしますか…!?」
ってやつで。
S:何よそれ?
「母さん、僕、LGBTなんだ」
「そうなの、LGBTらしく生きなさい」
って感じになっちゃうの? ずいぶんぼんやりしたカミングアウトになっちゃうわね。
I:まさしく少年ブレンダさんと俺がそういう感じでツイッターで憤ってたんだけどさ。
S:LもGもBもTも、お互い一緒くたにされたくないと思ってるわよね。
I:もともと「LGBT」って世間はごっちゃにしやすいけど、性の多様性(セクシャリティってグラデーションのようなもの)とか、セクシャル・マイノリティの文化を広めることによって存在の可視化を目指してます、って意識を内包した言葉じゃない。
S:それが生々しいことにふたをするきれいごとのオブラートに使われて、可視化されたと思ったらオブラート越しで余計にぼんやりしちゃってね。
I:LGBTのアクティビストの皆さんは最近のこの流れについてどう思ってるか聞きたいわけよ。
S:この対談に松中権を呼んで吊し上げるしかないわね。
I:吊るし上げる必要はないんだけど、松中権さん、これ読んでたら連絡待ってます! 「LGBT」をオブラートがわりに使われてぼんやりするっていうのとは逆に、最近の若い子たちって「Lです」とか「GよりのBです」とかって言うじゃない。そういう使われ方は新しいなあと思ったんだけど。
S:私は昔から一貫して使ってるんだけど、若い子は「ホモ」って自称する子も多いわね。「ゲイ」って言葉に最近色が付きだしたから、「ホモ」って言葉に差別的な意識を感じ無い世代がそっちのほうを好むという。私はもう最初っから「ゲイ」って言葉に内包される「ポジティヴさ」「オシャレな感じ」が嫌だったからね。
I:あんたのトラウマは置いといて、言葉って時代とともに変わったりリバイバルしたりするじゃない。最近若い子が「ホゲる」って言葉使ってるの知ってる?
S:嘘だ! 俺らより上の世代よ、ホゲるって。オネエではっちゃけるとかそんな意味でしょ?
I:「関西の方で昔から使われてたゲイ用語よね」と思ってたんだけど、最近若い子が「ちょいホゲ」とか言うのよ。
S:あなた、私にゲイの友だちがいないからって、騙そうとしてるでしょ!
I:本当だって。実際に20代前半の子が目の前で使ってるのを確認したんだから。思わず「関西の人?」って聞いちゃったわよ。北関東の出身で関西に行った事がないってことだったけど「普通に使いますよ」とか言われちゃって。で、推測したんだけどさ、最近「オネエ」って言葉の指す意味が「オネエ言葉」とか「オネエ言葉を使う人」とかじゃなくて「オネエタレント」とか、なんだか「ざっくりゲイ全般」(参考記事:オネエ告白のイケメン俳優、カミングアウトした理由)っていう意味になっちゃったから、代替えとして「ホゲる」が復活&浸透したんじゃないかしら、と。
S:そのうち「おケケ」とか「おリツ」とかも復活するかしら? 「ゲイ」も「男性同性愛者」も使いづらくなった結果、最終的にNHKでは「おケケ」で統一されるの。
I:ねえから。

隠花植物って素敵なの? ゴミなの?

I:一橋大ショックってのはわりと後を引いてさ。
S:どういう具合に?
I:俺とか、ゲイ雑誌の編集長をしていたわけじゃない。で、2000年代前半あたりから、インターネットにどんどんどんどん取られていくわけよ、雑誌が持っていた要素を。
S:エロとか、出会いの場とか、広告とかね。小説とかイラストや漫画とかも、今じゃもう最初からネットで発表するのが主流だもんね。
I:若い子は雑誌なんか通らずにインターネットからゲイの世界に入るんだろうな、とか、ゲイの出会いも清水の舞台から飛び降りるような覚悟しなくても手軽に手に入るようになったんだろうな、とか。そりゃ雑誌なんてまどろっこしいよな、てのを実感してたわけ。だから「選択肢は昔よりいっぱいある2010年代に、どうしてクローゼットで追い詰められちゃうんだろう」とショックだったわけですよ。
S:そりゃ追い詰められちゃう人は今も昔もいるでしょ。インターネットが普及しようと変わんないわよ。
I:アナクロな雑誌づくりに人生かけてた人間としては、そこは理解していなかったんだよね。クローゼットで追い詰められてる人はこの時代でもいるんだな、って考えたら、今回の一橋大学の事件ってこの人ひとりの問題じゃないなって今さら気付いたの。50過ぎのゲイのオッサンとしてはさ、若くてクローゼットで精神的に孤独を抱えていたり、精神的に追いつめられて周囲に対して無計画なカミングアウトしそうになっている人になんとか届くような記事を書きたいと思ったわけですよ。
S:根が真面目ね。下半身はえらいふざけてるのにね。
I:五月蝿いわね、上半身と下半身は別物よ。だからこういう記事を書いたの。

キミ、死にたまうことなかれ〜クローゼットの若いゲイの人に考えて欲しいカミングアウトのこと

ネットに記事を公開しておくと残っていくからさ、悩んでる人がいつか「カミングアウト」「クローゼット」とかのキーワードでググって読んで、参考にしてもらったり考えるきっかけになったら、と思ったわけ。そしたら、某・北丸雄二さんに噛みつかれちゃったんだよね。
S:え? どんなこと言われたの? 教えて?
I:そのニヤニヤした笑顔やめなさいよ。こういったことを言われたのよ。

S:これ読んでひとつ思い出したことがあって。
I:何よ?
S:ゲイのことを昔は隠花植物ってよく例えられてたじゃない。私、語感からなんとなくエキゾチックでエレガントな熱帯の植物を頭に思い浮かべてたのよ。
I:胡蝶蘭とかカトレアとか?
S:シンビジュウムとかアンスリュウムとか。私たち隠花植物って……ステキ! と思ってたの。そしたらよくよく考えたら、花の咲かない植物って、毒キノコとかゼニゴケとかじゃねえか! 確かに胞子まき散らしてるけど、失礼だな! と思って。
I:あんたには毒キノコやゼニゴケがぴったりだけどね。で、私にも軽率だったり省みなけりゃいけない点はあるとは思うの。
「重い荷物を手渡されて…」ってくだりは家族に対するカミングアウトを主に考えていたの。たしかに、友人とか知人レベルだと「重さを感じない」がゆえの言いふらしに出る場合もあるだろうけど、「常」と言い切るほど全てなの? という疑問は残ったわけ。
実際、その後取材を重ねたBuzzFeedJapanがこの記事を発表したら

一橋大ロースクール生「ゲイだ」とバラされ転落死 なぜ同級生は暴露したのか

某北丸さんもこんなこと言い始めて

S:あんまり「常」って感じじゃないわね。(笑)
I:それはともかく、某北丸さんのツイートに関しては放置しといたんだけど、他のアクティビストの方からも同様なご指摘をいただいたので、加筆修正をしたの。ただ、釈然としないものは残ってさ。
S:何が釈然としないの? アクティヴィストのツイッターのアイコンってどうして腕を組んでるポーズばっかりなんだろう、とか?
I:あれは不思議よね……じゃなくて、私の記事を「ゴミ」呼ばわりするのは個人の意見だからかまわないんだけどさ、今回の件で明らかになったように日本でもクローゼットで追いつめられそうになっている若いセクシャル・マイノリティっているわけじゃない。そういう人に向けて「ゲイの友だちを作ってほしい」と言うのはつまり、自分が「ゲイである」ことを認めなければできないことでしょ。これって某北丸さんの考えるカミングアウトのあるべき姿だと思うんだけどね。じゃあ某北丸さんは、クローゼットでいざるをえない人たちに向けては何のアクションも起こす気がないのかなってこと。
S:某北丸さんは、私個人の印象だけど、マッチョでアメリカンなのよね。思考や方向や言い方が。ご本人は否定されるというか「それくらいの想像力はある」とおっしゃると思うけど、基本的に強者の言い分よ。で、実際に強者だと思うの。経歴的にも、社会的地位にも、知識や知能的にも。ご立派な方よ。
I:本心で言ってるわよね?
S:あのね、下手に突っ込むと意図せず反語的になるから、止めてね。とにかく努力をされて報われて実現された方だと思うのよ。カミングアウトにもまっとうに向き合って、ご本人の中に恥ずかしい意識はないんだと思うわ。
I:私は彼の事を良く存じ上げないんだけど、そういうご意見をお持ちだってことから推測すると、若い頃から自分のセクシャリティを隠したりせず堂々とカミングアウトなさって、無理解な世間(会社)と闘っていらした方なのでしょうね。だからこそ、私の書いた記事が「過去のゴミ」に思えて許せなかったということなのかしら。
S:でも、LGBTに限らず、どうしようもない人っているじゃない。努力しても報われなかったり、努力することすら許されなかったり、努力がはなから嫌いなクズだったり。
I:あんたとか。
S:私とか。そういう人たちって某北丸さんの論理でいくと置き去りにされちゃうのよ。で、カミングアウトできる人たちはある意味強者で、陽の当たる人たちだから、ますますヒマワリのようなシャイニーとゼニゴケのような私たちとの乖離は進むという悪循環よ。でも私はカミングアウト至上主義でもあって。
I:そうなの?
S:奇しくも某北丸さんがOUT IN JAPANで言ってるんだけど、


「カミングアウトとは、社会に蔓延するそうした誤情報をどんどんアップデートして実態に近づかせる修正作業でもあるのです。」

 

つまり、ダサい人やクローゼットで追い詰められてる人や私みたいなクズもLGBTの中にはいるんですよ、と世間に開示していかないと、息苦しくなっちゃうわよ。
I:そういう意図であんたみたいなゼニゴケがテレビで顔出ししたりハッテン場の話したりしてる、と。
S:ただ、某北丸さんがOUT IN JAPANでおっしゃってたのが
「性的少数派は『ヘンタイ』という下世話な話になってしまうから、誤解を解くようにカミングアウトが必要だ」
という内容なのに、私や熊田プウ助さんは真逆のことをしているというね……。
某北丸さん、メンゴ!
I:メンゴ! じゃねえよ! でも、家族に対するカミングアウトは「重たい荷物」であることは事実よね。私はこんなにあけっぴろげでゲイ雑誌の編集長までした男だというのに、一緒に暮らしている母親だけにはカミングアウトできてないからさ。
S:それはやっぱり重いのね。
I:重いわよ。あんたはどうだったの?
S:前も話したけど、いい歳して無職でぶらぶらして、「いい加減に働いて仕送りしろ!」とか文句言われたのね。だから黙らせてやろうと「ゲイだからほっといて!」と言ったら、「そんなことどうでもいいから働け!」と返されたわよ……。
I:カミングアウトより、いい歳して無職という事実のほうがはるかに重かったわけね……。
S:誰か私の重荷を受け止めて!

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