自民党の性的指向・性自認に関する特命委員会の真実を直撃。 その1「なぜ自民党が特命委員会を立ち上げたのか?」

日本のLGBT人権問題の現状

日本では、2017年の現在でもセクシュアル・マイノリティの人権に関しての法整備が全くなされていません。いくら大企業がLGBTフレンドリーを謳い始めても、肝心の法律が定められていないのでは国民的課題として人権意識を高めていくことは難しいでしょう。

※法務省人権擁護局の啓発活動「年間強調事項」17項目の中には、
(14) 性的指向を理由とする偏見や差別をなくそう
(15) 性同一性障害を理由とする偏見や差別をなくそう
上記の2項目が取り上げられています。
http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken04_00005.html

この現状を変えていこうということで、現在、セクシュアル・マイノリティの人権に関する法律を作ろうという動きがあります。

最初は、LGBT法連合会が「差別禁止法」を実現させようと超党派のLGBT議連に働きかけました。

■参考記事
無職中年ゲイが聞く、「LGBT差別禁止法」ってなに? 本当にいるの?
(Letibee LIFE)

ところがLGBT議連での法制化に向けての動きが遅く、そこで民主党前政務調査会長(当時)の細野豪志氏が、「差別解消法」を民主党案として提案して、2016年5月に野党4党により衆院に共同提出されました。

■参考記事
LGBT差別解消へ法案、野党4党提出、公明は慎重姿勢(朝日新聞DIGITAL)

※差別禁止法と差別解消法とは?
差別禁止法は、多くの場合は、個人に対しても罰則が伴います。
今回の野党の差別解消法案は、国、地方自治体、企業に対しての規定が定められます。差別が確認されると勧告をして改善されない場合はそれが公表されます。


そしてもう1つは自民党が取り組んでいる性的指向・性自認に関する特命委員会です。2016年2月に当時の稲田朋美政調会長の肝入りで発足し、5月24日に「性的指向・性自認の多様なあり方を受容する社会を目指すためのわが党の基本的な考え方」という政策が発表されました。

■参考資料
性的指向・性自認の多様なあり方を受容する社会を目指すためのわが党の基本的な考え方(自民党)

■参考記事
自民党性的指向・性自認に関する特命委員会「議論のとりまとめ」等について(BLOGOS)

LGBT法連合会に関しては上記の記事を始め、Letibee LIFEでは複数回ご紹介してまいりましたが、自民党の特命委員会に関わっている方にはお話を聞けていませんでした。
しかし、私たちLGBT当事者にとっても重要な政治の動きに関しては、広くアンテナを張り、ご紹介していくことが必須であると考えています。

上記BLOGOSの自民党橋本岳衆議院議員の記事に記載されているように、2012年のレインボープライド愛媛が行った政策アンケートに、「(セクシュアル・マイノリティの)人権問題として取り組まなくてよい」と答えたり、地方議員の差別的な発言が続いた中での今回の自民党の取り組みに対しては、「選挙のためのパフォーマンスだろう」と言う声に代表される懐疑的な見方が当事者の中にも多いのも事実です。

2016年11月20日の朝日新聞「(360°)LGBT、自民足踏み」と言う記事で、

「家族の絆を守る特命委員会」では昨年(※注:2015年)3月、複数の議員から同性愛について「考えるだけでぞっとする」などの発言があり、笑いが起きた。

と報じられ、ますます懐疑的な見方が強まる傾向があります。

では、自民党の性的指向・性自認に関する特命委員会は、実際はどのような考えで進められているのか、この特命委員会のアドバイザーであるNGO「BASE KOBE」代表繁内幸治さんを直撃することにしました。
私の疑問に関して、非常に率直にお答えいただいたインタビューは予想以上の長時間に及びましたので、ここでは二回に分けてご紹介致します。

第一回は、
「なぜ自民党が、性的指向・性自認に関する特命委員会を立ち上げたのか?」
と言うテーマで、繁内さんがアドバイザーとして関わるようになったきっかけから紐解いて参ります。

きっかけは宝塚市議の不適切発言

いたる(以後”I”):ここ最近の政治の動きを見ていると、イデオロギーに関してはひとまず横に置いておいて、今の政権与党に働きかけない限り、LGBTの人権問題は動かないのではないかと考えているんです。

繁内(以後”S”):まさにおっしゃる通りですよ。

I:リベラルな立場の方の中には繁内さんは、保守の方だとお考えの方も少なくないようですが。

S:私は若い頃は国家公務員で、労働組合の役員もやっていていた人間なんですよ。そういう経験をしたから分かるんですが、何でもかんでも野党と組んで政権政党に批判ばかりしていると、やってる本人は充実しているかもしれませんけど、溝ばっかり深めてしまい(LGBT当事者にとって)なんの利益にもならなかったって結果になる可能性があります。LGBTの人権課題がそういう結末を迎えてしまうことは避けるべきだと思っています。
LGBTのコミュニティの中で与党ともうまく渡り合えるアクティビストがいればいいのですが、残念ながら色々探ってはみましたが一人も見当たらなかったですね。
自民党の特命委員会のアドバイザーを引き受けることで、リベラル色の強い当事者皆さんからご批判は重々分かっていましたが、他にいないのであれば、「私が引き受けなければならない」というのが、今回の特命委員会のアドバイザーに関してのそもそもの始まりだったんです。

I:僕自身、自民党の特命委員会に関してよく分かっていないので教えていただきたいのですが、繁内さん以外で、この特命委員会のアドバイザーとして関わっている当事者の方はいらっしゃるのでしょうか?

S:一人もいません。自民党政務調査会事務局に確認しましたが、そもそも、自民党に20以上ある特命委員会でアドバイザー職がいるのは1割程度と極めて少ないそうです。特命委員会というのは、有識者にお越し頂いて意見を述べてもらうことはあっても、委員会内に(民間の)アドバイザーを置くというのは珍しいことのようです。

I:そうなんですね、では、なぜ繁内さんにアドバイザーのお話が来たのでしょうか?

S:私はHIVに関わる活動を神戸で約15年間やってきたんです。NGOの名称も、活動の拠点が神戸だから「BASE KOBE」と名付けました。地元のニーズが分かっているのは、やはり地元の人間だという自負がありましたので、「神戸の草の根レベルでやれるべきことをしっかりやり、それ以外のことはしない」ということで活動してきたんです。東京は東京で勝手にやってくれと、その代わり東京でやったことでも(地元に合わないことは)カーボンコピーしないということに徹してきたんです。
そんな中、去年(2015年)の4月に宝塚市議会議員の大河内茂太さんが、議会で不適切な発言をしたことを覚えてらっしゃいますか?

■参考資料
「宝塚がHIV感染の中心に」自民議員発言、議事一時中断(神戸新聞NEXT)

実はその前の年(2014年)にも、自民党の兵庫県議会議員がひどい発言をしたことがあったんです。

■参考資料
「同性愛者のHIV指導必要ない」委員会で井上県議(神戸新聞NEXT)

その時、私はたまたま神戸を留守にしていました。その間に、当該県議に対して当事者始めいろいろな方からの非難が集中してしまい、県議本人が心を閉ざしてしまうという最悪の事態になってしまいました。私が神戸に戻ってから県議ご本人に電話をかけても、
「そんなこと言っても、どうせあんたも他の人と一緒やろ、もうええわ!」
と切られてしまったんです。
これは自民党に行かないとどうしようもないと思って、初めて自民党兵庫県連の幹事長にお会いして、
「できるだけソフトランディングさせたいんで、幹事長からご本人に説明して欲しい」
とお願いしたんです。そしたら幹事長も「わかった」ということで電話してくれたにも関わらず、ご本人は、「もういい」と言って幹事長の話すら聞こうとしなかったんですね。
攻撃した人たちは、思いが強すぎて結局、県議ご本人を追いやってしまったわけです。
議員は次の選挙で落選してしまいました。おそらくご本人の中では憎しみが残っているだろうと思われます。
私は、地元に根ざしたNGOは、地域に対して責任があると考えているので、この件は今でも宿題だと捉えています。憎しみの連鎖や固定化が起きないようにしたいのです。彼もLGBTのことでは対応が極めてまずかったけれども、他の部分ではいいところもあるようにも思っています。
で、先の大河内さんの発言があった後、当日の夕方、大阪の旧知の弁護士から連絡をもらったんです。
「今日、宝塚の市議会で自民党の議員が問題発言をしている。明日の神戸新聞の朝刊に載るようだ。去年の県議のようにならないよう早く動いて欲しい」と。
神戸新聞朝刊の主要な記事は、日付の変わる0時にインターネットで先行して流れますので、「それを確認したら大河内さんに連絡します」と、知人の弁護士には伝えました。
で、0時にニュースがアップされたのを確認してから、面識のない大河内議員にfacebook経由で連絡させてもらったら、すぐにご返信頂いたので、私の考えを丁寧に説明したんです。
「私は神戸のNGOの代表です。今後あなたに対する当事者団体等から様々な非難が起こるでしょうが、私は決してあなただけを一方的に非難しない。今回の発言の真意を聞かせていただき、これからどういう風に解決していけるのか一緒に考えたい」
とお伝えしました。すると2日後には、BASE KOBEの事務所に大河内議員がいらしてくれたんです。
お会いしたら分かりますよ、大河内さんが差別主義者じゃないことは。
初対面で約3時間お話しして分かったのは、大河内さんの発言は誤った一方的な情報を基にした不適切なものであって、根底に差別意識はないだろう、ということでした。
それならば、彼を差別主義者として当事者団体等が追い込んでしまうのは誤りであって、地元の当事者団体の代表でもある私がこの人と向き合って、彼が抱えているモヤモヤとしたものをきちんと勉強してもらうことで整理してもらい、願わくば理解者になってほしいと考えたのです。
それから彼に対してはずーっとレクチャーし続けたんです。面談や電話を合わせて1000時間くらいでしょうか。交わしたメールも膨大な数です。お忙しい中で、本当によくお付き合いいただけたと思いますよ。

I:大河内議員の考えは変わりましたか?

S:ご本人は早い段階から理解してくれたようで
「これは私だけの問題ではない。自民党の地方議員の大半は、LGBTについては、理解ができていない。今後、私の発言と同じようなことが起きないように動きたい」
とおっしゃったんです。
大河内さんも40歳過ぎの方ですが、セクシャル・マイノリティに関して学校で教育受けたわけでもなく、市民啓発がなされているわけでもないのです。もともと理解ができる土壌がない上に、保守の人たちには(LGBTに関する)一部の団体から、否定的な情報が伝わっています。だから、そんな保守の人たちの琴線に触れるような発言が議会でなされたんですね。
ご存知のように、大河内さんの発言がなされるちょっと前に、渋谷区の長谷部区長が、渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例(同性間のパートナー証明を含む)を発表されました。宝塚市長は、元社民党国会議員で、「宝塚市でも(同性パートナーシップ条例を)やるねん」という動きがあり、それに対して自民党が「何言うとるねん」と反発してゴタゴタした中で、ああいう発言がなされるという、背景としては非常にまずいものがあったんですね。
私自身お付き合いをさせていただいてよく分かりましたが、大河内さんは非常に勉強熱心な方なんです。講演会に参加をし、新宿2丁目や堂山町を訪ね、自主的に多くの本も読み、映画を見て学びを深めていかれました。市民も大河内さんのお人柄が分かっているのか、リベラルが強い宝塚市という土地柄ながら、保守系議員として選挙でも圧倒的な得票数でトップ当選されているんです。
私も解決に向けて色々と頑張ってみましたが、左派議員や支持者の皆さん、複数の市民団体等から、執拗な追求や事実に反すような不条理な攻撃が続き、非常に憂慮し悩まされました。
しかし、大河内さんの理解も進み、自ら自民党を動かそうというところまで考えが至り、自民党のつながりを手繰って手繰って、当時の党の政策責任者である政務調査会長だった稲田朋美さんに私の信書を託すことができました。
大河内さんがLGBTに関しての学びを深めると同時に、私も大河内さんや保守の皆さんとの出会いを通じて溝を埋めていけたように思います。当初は保守の皆さんとは、対立することも多かったのですが、大河内さんが変わるとともに、私も今につながる大きな学びを得たと言っていいでしょう。私も変わったということですね。

稲田政調会長(当時)に話したこと

S:稲田さんに託した信書にこのように書きました。
「LGBTと言っても様々な人がいます。当事者にも、当事者の親御さんにも保守の方はたくさんいらっしゃいます。そして、保守の親を持つLGBTの当事者が一番大変な思いをしています。他人事にしないでください。このままイデオロギーの対立の中で、この問題が立ちいかなくなるのは困る。LGBTの様々な課題の解消を目指すことを、オリンピックを見据えて自民党の喫緊の課題にしてください」
ということで私案としての『理解促進法』(これは後日、衆議院法制局の指摘を受けて『理解増進法』と変更)という法律を作って欲しいとお願いをしました。
その直後に稲田さんがアメリカでの講演で、
「保守政治家と位置付けられる私ですが、LGBT(性的少数者)への偏見をなくす政策をとるべきと考えています」
と、私にとっても思いもよらぬ発言をされたんですよね。信書を託して本当によかったと思いました。

■参考記事
自民・稲田政調会長「真のチャンピオンは倒れても立ち上がる人」米シンクタンクで講演(産経ニュース)

これを聞いてみんなびっくりしましたよね。急に出てきた稲田さんの言葉でしたから、自民党内もそうですが、LGBT当事者もびっくりしましたよね。「ほんまかいな?」って。大河内さんも私も。信書を託した直後でしたから、信書を読んでいただけたのだと確信しました。しかし、当事者のリベラルの活動家の方が、「選挙のためのパフォーマンスだろう」とか色々おっしゃったじゃないですか。

I:私も、そうだと思ってました。で、稲田さんのアメリカでの発言の後、どのような動きになったのでしょうか?

S:アメリカでのスピーチの後、再び稲田さんに信書を託しましたところ、稲田さんが会うとおっしゃって下さいました。
2016年1月19日に、大河内さんとともに自民党政務調査会長室を訪ねました。
その時、稲田さんは私に
「必ず対応します。少し時間を下さい」
と言われました。
その後、連絡があり、
「特命委員会を作りLGBTの課題を考えることになりました。すでに役員人事も決まっています。初回の委員会の前に役員に挨拶をしてもらえませんか」
と言われました。
そこで2月10日に大河内さんとともに上京して、委員長の古屋圭司さんと前事務局長の橋本岳さん(現在の事務局長は、宮川典子さん)の議員会館事務所を訪ねご挨拶させて頂きました。
第一回の自民党の性的指向・性自認に関する特命委員会は2月23日に開催されました。
古屋委員長から、政務調査会事務局を通じて、「特命委員会に来て話をしてほしい」と依頼を受けた私は、自己紹介と今日までの流れ、そして私案として温めてきた『LGBT理解促進法』に関しての説明をしました。
後日分かったことですが、この会議には、自由同和会の平河事務局長が出席されていらっしゃったそうで、私の自民党に対する提言をそっくりそのまま、自由同和会の年間活動方針に加えていただいていました。

■参考資料
自由同和会平成28年度活動方針の最後の部分

私の話を聞いて頂いた後に、古屋委員長から、「アドバイザーになって欲しい」という提案があり、それを受けて全会一致でアドバイザーが決定したのです。自民党特命委員会で、アドバイザーを置くのは、先ほども言いましたように珍しいことなんです。
だから、この特命委員会に至るまでの流れは、元をたどれば、大河内さんという一人の自民党の地方議員の不注意な発言から始まり、ご本人が学びを深めながら、ご自身のLGBTに対する理解増進に真摯に結びつけていかれたんです。

I:大河内さんの発言にまつわることだけを取り上げれば非常にネガティブなニュースになってしまうのですが、そこから起きたことを考えると全く印象が変わりますね。

S:そうなんです。大自民党を動かしたわけですからね。ただしね、新聞というのは極めていい加減なものでね、叩くときはいくらでも叩きます。でも、例えば大河内さんが自費でLGBTのための市民向けの勉強会を主催し、講師を招いたりしているんですけど、地元紙でも主催者として大河内さんの名前は一切報じないですからね。批判は書くんですけど、それをきっかけに学んだり、自分の政策に活かしたりしていることは書かないんですからね。
日本のメディアというのは読む側にメディア・リテラシーがないと本当の情報は入手できないと、今回の件を通じて痛感しました。

自民党の中にも様々な人がいる

I:リベラルな立場の人の発言や報道から受ける印象だと、稲田さんがLGBTの人権に対してきちんと向き合う方だとは感じられませんでした。でも、繁内さんのお話を伺っている内に、例えば安保法案や憲法改正、歴史に関することなどと、LGBTに関することは分けて考えるべきなのだな、と考えるようになりました。それをごっちゃにしてしまうと、導き出される答えは「選挙目当てのパフォーマンス」になってしまうんですよ。

S:保守と言われる人たちの中にも色々な考え方があるんですよ。「保守の皆さんは、LGBTには無理解」と決めつけてしまっては、読み間違えてしまいまうと思います。
私は、今の自民党の皆さんには、LGBTに対して概ね2つの人たちがいると考えています。
1つは、政権党の議員として、国民の様々な課題に向き合おうとする皆さん。今回で言えば、稲田さんや古屋さんですね。古屋さんは、「真の保守とは、多様性を認めるものだ」と、私に話してくれます。この言葉は、私が自民党のアドバイザーを務めさせて頂く上での重要なキーワードになっています。
もう1つは、LGBTに関しては無関心。または、知識の少ない中で誤解が生じている皆さん。このような皆さんの中で、過去に「過激な性教育」ということでバッシングされた東京の「七生養護学校事件」ありましたよね。

■参考資料
七生養護学校事件(Wikipedia)

あれは、知的障害のある子たちに対して、より具体的に分かりやすく教えるために先生方が一生懸命考えて、リアルな人形を使って具体的に教えないと理解できないから、という教育上の極めて重要な側面をすっ飛ばして、過激な性教育だとレッテルが貼られてしまい、全国的に性教育ができなくなった、あるいはエイズ予防教育ができなくなった、という苦い経験があります。このような理解が少ない皆さんに、よりよく理解してもらうにはどうしたらいいか、というのがそもそもの始まりなんですね。

I:つまり、稲田さんや古屋さんは、前者の方なんですね。

S:そういうことなんですよ。だから、それを全否定するのはおかしいし、またもったいないと思います。

I:なるほど、これは僕を含めて理解していない人が多いでしょうねえ。

S:全く理解されてないんですよ。あまりにも政治とLGBTの関わりに興味がない当事者の皆さんが多いのではないでしょうか。特に私を含めた中高年。もちろん、ご結婚されていらっしゃる方も多いのではないかと思いますが。また、LGBTの活動家の多くは、何かしようとしても自民党から冷たくされていたので、野党に頼るしかなかった時代が長く続いて来ましたから、自民党についてはわからなくて当然ですよ。正直なところ、「自民党の特命委員会が、LGBT議連潰しだ」という人がいることに驚いたんですよ。情報が少ない中で、「自民党は敵」と、決めつけてしまっていますからね。

I:つまり、自民党の特命委員会の皆さんは、LGBTに関することには耳を傾け、共に考えてくれる可能性が決して低くないということなんですね。

S:そうなんですよ。例えば中国、韓国に対しては強硬であっても、実は稲田さんは弁護士でもあって当然のことながら人権意識は持っていらっしゃるので、LGBTの問題に関しては大いに一緒にやっていける方なんですよ。
稲田さんの息子さんの大学時代のご親友にトランスジェンダーの方がいらっしゃるし、その方にお会いして生きにくい話を聞いてらっしゃったので、以前からLGBTの人権に関心があったんですよ。
2016年の東京レインボーフェスタの会場に稲田さんをお連れした際も、その方と再会されているんです。とてもフレンドリーに話してらっしゃる様子をそばで見ていて、稲田さんがLGBTに対して偏見を持っている人ではないと改めて確信しましたし、お二人が実に自然で微笑ましく思いましたよ。
私は、稲田さんは、以前からLGBTの人権課題に関心はお持ちだったけれど、取り組まれる機会がなかっただけで、今回をよい機会にして頂けたんだなと思っています。
(その2につづく)

こういう経緯で、自民党の性的指向・性自認に関する特命委員会のアドバイザーに就任された繁内さん。
次回は、
・特命委員会がどのように進んできたのか?
・野党4党が提出した「LGBT差別解消法案」に比べると骨抜きだと批判される罰則規定がないLGBT理解増進法案を考えた真意とは?
・旗振り役の稲田議員が大臣となり特命委員会を離れた今の状況と今後の見通し
に関して、さらに深くお話を伺って参ります。

続きはこちら

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ABOUTこの記事をかいた人

いたる

LGBTに関する様々な情報、トピック、人を、深く掘り下げたり、体験したり、直接会って話を聞いたりしてきちんと理解し、それを誰もが分かる平易な言葉で広く伝えることが自分の使命と自認している51歳、大分県別府市出身。LGBT関連のバー/飲食店情報を網羅する「jgcm/agcm」プロデューサー。ゲイ雑誌「月刊G-men」元編集長。現在、毎週火曜日に新宿2丁目の「A Day In The Life」(新宿区新宿2-13-16 藤井ビル 203 )にてセクシャリティ・フリーのゲイバー「いたるの部屋」を営業中。 Twitterアカウント @itaru1964