LGBTセミナーを覗く!①LGBTツーリズム・セミナー

企業や自治体、学校、一般向けなど、ここ数年、各地でLGBTに関するセミナーが活発に開かれるようになっています。
参加して話を聞くことで、セクシュアル・マイノリティに関してよく分かっていない方が理解を深めるきっかけになるのであれば、それは当事者にとって決してマイナスではないと考えます。

では、実際にどのような内容で行われているのか、LGBTをテーマにしたセミナーやシンポジウムなどをシリーズでご紹介していきます。

第一弾はこちらです。

2017年2月17日(金)開催
IGLTA(国際ゲイ・レズビアン旅行協会)会長初来日記念 
LGBTツーリズム・セミナー

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インバウンドLGBT需要を狙う企業の熱を感じる

2017年2月6日に公開した記事「LGBTインバウンドの可能性とは? IGLTAアジアのアンバサダーに聞く」でご紹介した、IGLTA(国際ゲイ・レズビアン旅行協会)。
欧米を中心に、ホテル、航空会社、旅行会社などLGBTフレンドリーな旅行関係の企業が加盟している世界的な協会です。
上記の記事でもご紹介したように、アジアではまだまだ会員企業が少ないのが現状です。
しかし、ここ数年、日本の参加企業が活発な広報活動を継続していることで、加盟企業が増えてきています。IGLTA本部も、その動きには注目し、アジアでの会員企業を増やすことの重要性を認識しているようで、今回、IGLTAの会長が初来日することになりました。

会長初来日を記念して開催されたこの「LGBTツーリズム・セミナー」は、LGBTに関する基礎知識から、最新のLGBTマーケット情報までを紹介するという内容。
国内外のLGBTマーケットを取り込みたいと考える旅行関連の企業を中心に、広めのセミナールームが満席になるほど多数の参加者が集まりした。
参加された皆様は非常に熱心に登壇された方々の話を聞いているようでした。
熱の籠った話が続いたため、パネルディスカッション後の質疑応答の時間が短くなってしまいまいましたが、積極的な質問が寄せられるなど、LGBT市場を真剣に取り組もうと考える雰囲気が伝わってきました。

LGBTツーリズム・セミナーは下記の流れで進行しました。

❶LGBTの基礎知識
❷LGBTマーケットへのアプローチ方法について
❸IGLTAの紹介・LGBT市場最新情報
❹パネルディスカッション・質疑応答

では各パートから印象的な言葉をご紹介しつつ、その概要をお伝えします。

❶LGBTの基礎知識
講師は株式会社アウト・ジャパン取締役の後藤純一さんです。後藤さんはAll Aboutの【セクシュアルマイノリティ・同性愛】ガイドを務めるゲイ・ライターです。著書に「職場のLGBT読本」。

「LGBTとは」というセクシュアル・マイノリティに関する基本的な部分から、理解がないゆえに使ってしまいがちな差別的ニュアンスが含まれる単語、セクシュアル・マイノリティの権利に関して「世界各国がどのように取り組んでいるのか」また「取り組んでいないのか」という実情。そして、日本での現状などを、短い時間で簡潔に分かりやすく解説されました。

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❷LGBTマーケットへのアプローチ方法について
講師は株式会社アウト・ジャパン代表取締役、Out Asia Travel代表、IGLTAアジア・アンバサダーの小泉伸太郎さん

Out Asia Travelとして、欧米からの旅行客のランドオペレート(地上手配)を多数手がけてきた実績を基に、今までに来日した欧米のLGBT観光客の実例を紹介しました。
欧米のお客様が、日本で何をしたいのか、何を求めているのか、という実例。また旅行会社にランドオペレートを手配する人たちの収入の高さや、実際に日本での旅行にかけた金額の高さ。
そして、欧米のLGBT観光客が「何を大事にしているのか」という価値観にも踏み込んで解説されました。

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❸IGLTAの紹介・LGBT市場最新情報
講師は、初来日したJohn Tanzella IGLTA(国際ゲイ・レズビアン旅行協会)会長。

IGLTA(国際ゲイ・レズビアン協会)とは、どのような協会なのか。その成り立ちから目的、そして現在どのような企業が加盟しているのか、またIGLTAが行なっている様々な活動という実情、さらにIGLTAの情報の提供する方向が変わってきているということを解説しました。
具体的には、以前は「企業と企業」(ホテルと旅行会社とか)を結ぶ方向性だったのが、近年は「企業と顧客」を結ぶ方向性に変わってきているとのこと。実際に、IGLTAのサイトを通じて旅行会社やホテルなどを探す顧客が増えてきているようです。
さらに海外のセクシュアル・マイノリティ顧客獲得には、どのような活動をするべきなのかということにも踏み込んで話しました。

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❹パネルディスカッション・質疑応答
John Tanzella IGLTA(国際ゲイ・レズビアン旅行協会)会長池内 志帆さんホテルグランヴィア京都 営業推進室 担当部長)、金光 弦太さんグランデコリゾート 販売促進セクション主任)の三氏が登壇。

IGLTA会員のグランデコリゾートの金光弦太さんからは、2011年の東北大震災による道路の崩壊、その後の風評被害により集客ができなくなった実情。
そして多方面での集客を目指すための方策としてIGLTAに加盟したこと。
LGBTへの理解が深まることで変わってきた考え方、そして考え方が変わることで見えてきたことなど、実体験を踏まえて解説。
また新たな集客をするためのきっかけとして3年前に始めたゲイだけのスキーツアー「グランデコ・レインボー・ウィークエンド」(2017年3月11日〜12日)についての実例が紹介されました。

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アジアで初のIGLTA本部理事(board member)に就任したホテルグランヴィア京都の池内志帆さん。2006年に日本企業で初めてIGLTAに加盟して、2013年からIGLTAの年次総会に参加してきたという長年の経験をもとにグランヴィア京都で実施してきた実際の例を列挙。
・京都のお寺と組んで同性ウェディング・プランを仕掛け訪日観光客に好評
・スタッフがレインボーのピンバッジをつけることで当事者の反応があること
・ロビーの誰でもトイレの看板をセクシュアリティ・フリーに変えたこと
・ウェブサイトで使用する舞妓さんのイラストの着物をレインボー柄にしていること
・世界各地で開かれている旅行博のLGBTに特化したブースに出展していること
・京都らしい商品を6色のレインボーカラーで品揃えしていること
・海外の旅行雑誌に同性ウェディングをやっているという広報活動
・社内研修を繰り返しスタッフの意識を変えてきたこと
・LGBTツーリズム見本市へ積極的に参加していること
日本のLGBTツーリズムのトップ・ランナーならではの様々な実績を紹介しました。

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パネル・ディスカッション、質疑応答では参加者から熱心な質問が飛び交い時間が足りないほどでした。参加者の多くは、セミナー後に新宿2丁目のゲイバーで行われた懇親会に場所を移し、IGLTA会員への質問や、集まった参加者同士で名刺交換などが積極的に行われた、とのこと。

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インバウンドのLGBT需要という可視化されつつある市場に関するセミナーだけあって、その市場に食い込んで行こうという参加企業側の意気込みが伝わってきました。
なかなか実態が見えてこないLGBT市場の中で、旅行関連だけは突出して熱くなっていることが理解出来るセミナーでした。

真の意味でのLGBTフレンドリーな企業が増え、そのことが収益にプラスになっていくことで、LGBTを取り巻く環境に好循環が生まれてくることを、大きな期待を持って見守っていきたいと感じました。

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ABOUTこの記事をかいた人

いたる

LGBTに関する様々な情報、トピック、人を、深く掘り下げたり、体験したり、直接会って話を聞いたりしてきちんと理解し、それを誰もが分かる平易な言葉で広く伝えることが自分の使命と自認している51歳、大分県別府市出身。LGBT関連のバー/飲食店情報を網羅する「jgcm/agcm」プロデューサー。ゲイ雑誌「月刊G-men」元編集長。現在、毎週火曜日に新宿2丁目の「A Day In The Life」(新宿区新宿2-13-16 藤井ビル 203 )にてセクシャリティ・フリーのゲイバー「いたるの部屋」を営業中。 Twitterアカウント @itaru1964