史上初!ゲイの黒人青年を描く「ムーンライト」がアカデミー賞受賞

※速報 公開日前倒し&公開劇場拡大決定!

アカデミー賞作品賞受賞で、いきなり日本でも大きな話題を呼び始めた「ムーンライト」。
予定されていた公開日(4月28日)を、約一ヶ月前倒しして2017年3月31日(金)に公開されることが決定いたしました。
また公開劇場も一挙に拡大されました。
より多くの劇場で見ることができるようになりました。
公開劇場は公式サイトでご確認ください。
(2017年3月3日加筆)

ラ・ラ・ランドとの一騎打ちを制したゲイ映画

2017年2月26日(日本時間2月27日)、米ロサンゼルス・ハリウッドのドルビー・シアターで行われた第89回アカデミー賞の発表・授賞式で、貧困層の黒人ゲイ青年というマイノリティを主役にした映画ムーンライトが作品賞を受賞しました。
アカデミー賞の前哨戦と言われる第74回ゴールデングローブ賞(現地時間1月8日開催)では、ドラマ部門の作品賞を「ムーンライト」が、ミュージカル・コメディ部門の作品賞を「ラ・ラ・ランド」が受賞。さらに「ラ・ラ・ランド」がゴールデングローブ賞史上初の7部門を制したことから、アカデミー賞でも作品賞の大本命と予想されていました。
しかし、ハリウッドの外国人記者クラブが選ぶゴールデングローブ賞と、ハリウッドで映画製作に関わる映画人が選ぶアカデミー賞では、選考結果に違いが出るのはよくあること。
特に、1月中旬のトランプ大統領就任以降、マイノリティを排除する傾向が見られる政策に対する批判の声はアカデミー会員の中でも大きく、政治的意志がアカデミー賞選考にも影響するのでは、という声も大きくなっていました。
また2016年の第88回アカデミー賞は主要部門が全て白人候補ばかりだったことが大きく批判されていたこともあり、今年はその反動か有色人種が中心の作品が多くノミネートされ、その中でも「ムーンライト」は特に高い評価を受けていました。
それゆえアカデミー賞は、ハリウッドで夢を追いかける男女の恋を描いたミュージカル「ラ・ラ・ランド」と、貧困層の黒人ゲイ青年というマイノリティを描いた「ムーンライト」の一騎打ちとなるのではと、例年に増して発表への期待が膨らんでいました。

26日の発表・授賞式では、プレゼンターのフェイ・ダナウェイとウォーレン・ベイティという名優2人によって読み上げられた作品賞は「ラ・ラ・ランド」。ステージに上がった関係者がスピーチを始めたところで、実はプレゼンターの手に渡っていたのは主演女優賞の封筒だったと判明。
前代未聞のハプニングに襲われた授賞式でしたが、作品賞は「ムーンライト」と発表し直されました。

セクシュアル・マイノリティが主役の作品が、アカデミー作品賞を受賞するのは史上初のこと。もちろん作品の評価が非常に高いのではありますが、加えてマイノリティへの差別的政策を進めようとするトランプ政権へのアカデミー会員たちの強い意思表示が示された結果とも言えると思います。

「ムーンライト」と「ラ・ラ・ランド」の受賞結果をまとめました。

■ムーンライト
作品賞
助演男優賞(マハーシャラ・アリ)
脚色賞(バリー・ジェンキンズ/タレル・アルビン・マクレイニー)

■ラ・ラ・ランド
監督賞(デイミアン・チャゼル)
主演女優賞(エマ・ストーン)
美術賞
撮影賞(リヌス・サンドグレン)
作曲賞(ジャスティン・ハーウィッツ)
主題歌賞(City of Stars)

作品賞と監督賞をそれぞれ分け合うという、まさに一騎打ちの名に恥じない大接戦だったのがお分かり頂けますね。

ムーンライトってどんな映画?

では、作品賞を受賞した「ムーンライト」がどういう映画なのか、ご紹介いたします。
まずは日本版の予告編をご覧ください。

舞台はマイアミの黒人貧困層が住む町。
父を失った母子家庭で育つ主人公シャロンは、ゲイであることを幼くして自覚していた。
貧困層の中でも、さらにゲイとしていじめられるシャロン。困窮生活から麻薬に逃げる母はは育児放棄状態。
そんな過酷な少年時代、ティーンエイジャー期、成人した後、と自分の居場所とアイデンティティを探し求めるシャロンの人生の3つの世代を3人の俳優が演じ分けます。

かなりハードな物語は、脚色賞を受賞したタレル・アルビン・マクレイニーの人生が投影されているといいます。彼(と監督のバリー・ジェンキンス)は、主人公のシャロンと同じ黒人貧困層が住む町で生まれ育ちました。そしてゲイであることで受けたいじめや、考えた人生の意味などが脚本に投影されているそうです。

過酷な物語でありながら、映像は夢見るように綺麗です。
町山智浩氏の解説によると、これはカラーリストという職種の作業で撮影後の映像に特殊な処理が施されたそうです。光の部分の色を全て抜き透明にすることで、映像の中の光が直接観客の目に反射する効果を出しているとか。
また黒人の肌に反射する光の部分の色を抜き白く光らせたり、実在しない「青」を黒人の肌に乗せることで、今まで映像では見たこともないほど綺麗な黒い肌が表現されているそうです。

物語や、俳優の演技だけじゃなく、映像美も期待できるこの「ムーンライト」。
4月1日に発表されるLGBT版アカデミー賞GLAAD賞の受賞にも期待がかかります。

日本では、いよいよ3月31日よりTOHOシネマズシャンテほか全国公開が決まっています。
Letibee LIFEでは、公開に向けて、さらに詳しいご紹介をしてまいります。
ご期待ください。

ムーンライト日本ポスター

ムーンライト
MOONLIGHT
監督/バリー・ジェンキンス
脚本/バリー・ジェンキンズ、タレル・アルビン・マクレイニー
製作総指揮/ブラッド・ピット
出演/トレバンテ・ローズ、マハーシャラ・アリ、ナオミ・ハリス、アンドレ・ホーランド
配給/ファントム・フィルムズ
3月31日よりTOHOシネマズシャンテ他全国公開
公式サイト
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ABOUTこの記事をかいた人

いたる

LGBTに関する様々な情報、トピック、人を、深く掘り下げたり、体験したり、直接会って話を聞いたりしてきちんと理解し、それを誰もが分かる平易な言葉で広く伝えることが自分の使命と自認している51歳、大分県別府市出身。LGBT関連のバー/飲食店情報を網羅する「jgcm/agcm」プロデューサー。ゲイ雑誌「月刊G-men」元編集長。現在、毎週火曜日に新宿2丁目の「A Day In The Life」(新宿区新宿2-13-16 藤井ビル 203 )にてセクシャリティ・フリーのゲイバー「いたるの部屋」を営業中。 Twitterアカウント @itaru1964