※記事内に被害を受けた方の写真が掲載されています、苦手な方はご注意ください。
同性愛に不寛容な米国南部で起きた酷い事件
仕事に疲れて帰って来た恋人と2人、寄り添うように眠る。
なんて愛らしい状況でしょう。
しかも、同居している母さんにはゲイだとカミングアウトしたばかり。
何の心配も無く幸せに眠っていた2人は、突然今まで体験したことのない激痛で目が覚めたのです!
この事件の舞台は、アメリカ合衆国南部のジョージア州。
ジョージア州はヘイトクライム(憎悪犯罪)を罰する法律を持たない5つの州の一つです。
もともと南部といえば保守的な色が強く、セクシャルマイノリティに不寛容なイメージがありましたが、まさに、その通りの状況ですね。
さらにこの事件は、黒人の家庭の中でおきました。
アメリカのブラックミュージックシーンとそこに君臨する一家を描いた人気ドラマ「Empire〜成功の代償」でも克明に描かれていますが、マッチョ指向の黒人社会はゲイに対して不寛容な傾向がさらに強いそうです。
そんなセクシャルマイノリティにとって二重に苦しい背景の中で発生した事件について、ワシントンポストが報じました。
■引用元記事
Man who threw boiling water on gay couple will spend 40 years in prison
幸せな添い寝中に、突然熱湯が襲ってきた!
Anthony Goodenには、付き合って6週間になる恋人Marquez Tolbertがいます。
同居しているお母さんに、「自分はゲイだ」とつい最近カミングアウトしたAnthonyは、自宅のリビングのマットレスの上で、お互い働いて疲れきっていたMarquezと添い寝をしていました。
このとき、家にはもう一人男がいました。
その男Martin Blackwellは、Anthonyのお母さんの恋人で、長距離トラック運転手です。
仕事でこの街に来る時は、Anthonyの家に滞在することにしていたそうです。
目が覚めたMartinが寝室からリビングに出て来ると、そこには寄り添って熟睡しているAnthonyとMarquezがいました。
その2人の姿を見てカッとなったMartinは(←何故にカッとなるのか、理解出来ませんが)、キッチンに行くと鍋に水を溜めて火にかけます。
鍋が沸騰すると、Martinはその鍋を抱えリビングに向い、熟睡しているAnthonyとMarquezに熱湯とぶちまけたのです。
突然の熱さと激痛で目が覚めて状況が把握できないMarquezをマットレスから引き起こしたMartinは、
”Get out of my house with all that gay”
(ホモ野郎は俺の家から出て行け!)
と怒鳴りつけたのでした。
第一、そこはお前の家じゃないし!
と突っ込みたくなりますが、なによりも寝ているだけの人に対して熱湯をぶちまけるという異常さには、背筋が凍るような恐怖を覚えます。
「今まで感じたことのなかった激痛で目が覚めたんだ。どうしてこんなに痛いの? なぜびっしょり濡れているの? 自分の身になにがおきているのか理解できなかったんだ」
Marquezはその時の恐怖と痛みを思い出し、すすり泣きながらAP通信のインタビューに答えたそうです。
反省する素振りも見せず嘘をつく容疑者に下された懲役は?
Martinは、
「2人がセックスをしていたから、それが悪いことだと気づかせる手助けのために、ほんの少しお湯をかけただけだ。ほんの少しかけただけだから、大丈夫だよ」
と語っています。
しかし、Marquezの友人であるVickie Grayは、Martinは嘘をついていると証言しています。
「2人は長時間労働の後で疲れ果ててぐっすり寝込んでいただだけよ」
たとえ2人がセックスしていたとしてもいきなり熱湯をぶちまけることは許されることではありませんが、「ほんの少しお湯をかけただけ」というMartinの証言も、また大嘘でした。
Marquezは熱傷で爛れた皮膚を安定させるためのボディスーツを、今後2年間、一日23時間は身につけないとならないそうです。
毎週カウンセリングとフィジカル・セラピーを受けなければならないほど、Marquezは心身共に深い傷を負っています。
Anthonyの受けた熱傷はもっと深刻です。
病院に運ばれた彼は数週間に渡り昏睡状態でした。
全身の60%に熱傷を受けたAnthonyは、顔、首、背中、腕、胸、そして頭皮にも皮膚の移植手術を施す必要がありました。
アトランタでの裁判で、陪審はMartinに対し、懲役40年という量刑を決定した。
前記のように、ジョージア州はヘイトクライム(憎悪犯罪)を罰する法律を持たないため、この量刑にはヘイトクライムは加味されていません。
FBIのスポークスマンは、連邦法に基づきヘイトクライムの容疑として起訴する意向だと語っています。