ハッテン銭湯と呼ばれて〜ゲイのハッテン被害に悩む銭湯店主の本音(前編)

インターネットを通じてゲイの間で「都内屈指のハッテン銭湯」などと呼ばれている公衆浴場があることをご存知ですか? 
夜毎に多くのゲイが集まることは話題になり、さらに多くのゲイ達が集まってくる。 

意図せずに有名になってしまった銭湯の経営者の皆さんは、そのことに大きなショックを受け、悩みを抱えているという話が伝わってきました。
そこで、実際に悩みを抱えている銭湯経営者の方に集まっていただき、銭湯をハッテン場として勝手に使用するゲイから日々受けている被害の実態や、どのような対策を取っているのか、そして彼らの本心をうかがうことにしました。 

銭湯をハッテン場として利用するゲイの中には
「俺たちが売上を支えているんだ」
「俺たちが行かなくなったら売上が激減するのを分かってるから目をつむっているんだろ」
と当たり前のように考えている人が少なくありません(実際にこのような発言を何回も耳にしています)。
しかし、銭湯経営者の皆様の本心はまったく違っていました。

公共の銭湯でハッテン行為を行うゲイに関して、銭湯の経営者のみなさんに被っている被害と悩みについて伺ってみました。

※座談会に参加していただいたのは都内の三軒の銭湯店主の皆様です。
プライバシーに配慮して、記事内では仮名(Aの湯・Bの湯・Cの湯)とさせていただきます。

 

Aの湯さんの実情
一年間で30回くらい警察に来てもらいました 

 

■銭湯を継ぐまで知らなかった状態

僕はここの店主を継いで4年くらいです。10年くらい前からウチがゲイの人の間では有名だったらしくネット上では「都内屈指の」とか「ゲイが集まる銭湯」って言われたりしていたみたいですが、よく知らなかったんです。 

自分が引き継いで店に入ってみると、その酷さがどんどんどんどん分かってきて。

ウチは構造的に死角が多いものだから、それがゲイの人にとっては使える場所だと思われたようです。
夜遅くなるほどゲイの人が増えるんです。来る人来る人「ゲイっぽいなあ」と思う方ばかりで。
本当にひどかった頃は、浴室内の至るところでくわえたり、しごいたり、3人輪になってしごきあったりとか。
閉店間際の遅い時間に、死角にある狭い風呂にすし詰めで入ってたりなんてこともありました。 

隠れてこっそりとかじゃなくて一般のお客さんがいるときもやってる人が結構いて、
「変なことしている奴らがいるよ」
って苦情言われたこと何回もあります。
面と向かって言いにくいのか、電話で苦情もらったこともありますし。
お客さんが保健所に苦情を言って、保健所からかかかってきたこともあります。 

自分が店を引き継ぐ前からそんな状態だったのですが、親父もどうしていいかわからないって感じだったようです。
1年くらい親父が入院して、その間、お袋が一人で切り盛りしていた時期があったんです。当然、男湯の見回りができないので、その頃に余計にひどくなったってのはあるみたいです。 

 僕もネットで検索してみたら、
「都内屈指の」
とか
「ゲイが集まる銭湯」
とかバンバン書かれていて、こんな風に書かれているんだと初めて知ったんです。 

■状況を改善するために見回り強化と警察とのやり取り

店内がこんな状態では、自分の友達や知り合いを店に呼ぶこともできないんですよ。
また、周囲には新しいマンションが増えてきて、そういうところに引っ越してきた人たちに
「広い風呂を楽しみませんか?」
と営業して新規顧客の開拓もしたいのですが、おおっぴらに迷惑行為をするゲイの人たちがたくさんいては、宣伝なんてできないですよね。
これはなんとかしなきゃいけないと考えました。

まずは見回りを強化してみたんです。
そうしたら見に行くたびにやってる人たちがいて。
注意したら一旦は止めるけど、自分がいなくなったらまた始めるってことの繰り返しで。
これは警察呼ぶしかないかって思っても、なかなか踏ん切れないんですよね。 

でも、この状態で一般のお客さんに迷惑が及ぼされ続けるのは良くないので、踏ん切りをつけました。
で、以降は見つけたら
「はい、警察呼ぶよ」
って。 

それから一年間に30回は警察に来てもらって40人くらいを連行してもらいました。 

 でもね、警察に来てもらっても、やってた当事者にシラを切られてしまったらどうしようもないんですよ。
連れて行ってもらって注意だけで終わってしまう。
第三者の目撃者がいないとダメなんですよね。

だから、なかなか立件までは結びつかなかったです。
でも警察には、悪質な場合は単に注意で済ますのではなく家族か職場に連絡して伝えて欲しいとは要請しました。

東京都の迷惑防止条例で初めて立件できたのが、2年くらい前のことです。
それまでは見回りを強化したり、お客さんから
「あの人やってるよ」
って教えてもらった人に
「お兄さん、やってるんでしょ?」
って声掛けたりして。
そうすると次から来なくなる人も結構いるんです。
教えてくれるお客さんの中にはゲイの人もいるんですよ。 

■注意喚起の貼り紙の真意とは 

見回り強化の他には、注意を喚起するための貼り紙もしてみました。 

実は、この貼り紙はゲイの人に向けてではなく、一般のお客さんに向けて貼ったつもりなんです。
「今まではこんな風だったけど、うちはちゃんと対応していますから安心してください」
というメッセージの方が大きかったんです。 

それを見て来なくなったゲイの人もいたようで、貼った直後は売り上げが下がりましたけど、一般の人が増えてきたようで売り上げもちょっとずつ戻ってきています。

見回りの強化や、警察を呼ぶことを始めてからは、迷惑行為をするゲイの人もだんだん減ってきました。
それでもゼロになっているわけではないので、回数は減りましたが今でも警察に来てもらうことはあります。
ただ、困ったことに、ウチに来なくなった人たちが、近くの他の銭湯に拡散しているようなんです。 

 

Bの湯さんの実情 その1
ハッテン行為をするゲイとの闘い 

 

■サウナがゲイの集まる場所になっていることを知って 

ゲイっぽい感じの人がいるなってのはなんとなく気づいていたんですけど、まさか迷惑行為をやっているとは思ってなかったんです。
でも、タイミング的には渋谷区のパートナーシップ証明書のニュースが流れた頃から意識し始め、その頃にAの湯さんの話を聞いたりしてから注意して見るようになりました。 

 ウチの場合はサウナの中がそういう人が集まる場所になっていたんですね。
ある日、よくお見えになる一般のお客さんから
「サウナの中で触りあってるよ」
と言われて。
「どんな人ですか?」
と聞いたら、その半年くらい前から来るようになった県外ナンバーの車の人だったんです。 

で、その県外ナンバーの人の存在に引っ張られるように意識して見るようになったら、いろいろ分かってきたんです。 

■ハッテン行為をするゲイの特徴と見回り強化

脱衣場とかサウナの入り口が見えるところには監視カメラつけているんですけど、特有のちょっと怪しい動きがあるんですよね。
すれ違いざまに目は合わせないんだけどチラッと見たりとか。
サウナに入る時も、一度覗いて一般のお客さんがいるのかどうかを確認して入りますね。 

そうやって注意し始めると、よく来る人の中で30〜40人くらいのゲイと思しき人の顔は覚えました。
その中でも、県外ナンバーの人を含めて明らかに怪しい人が5人くらいをマークするようになったんです。 

 見回りを強化し始めたら、マークしてた5人のうち県外ナンバーの人と、もう一人がサウナに入ったんです。で、窓からそっと覗いてみたらくわえてたんですよ。
ドア開けて中に入ったら、2人はすぐに離れたんですけど
「警察呼ぶから、着替えて」
って。 

ウチのサウナはコの字型になっていて窓からは見えない奥の方の死角に、マークしていた5人のウチの1人がいたんです。
で、その人に
「一緒にやってたの?」
って聞いたら
「いや、やってない」
と。 

「でも、ここにいたでしょ。見せられたの? だとしたら被害者だから」
と言ったら
「いや、気づかなかった」
って。
自分の心情的にはその人も完全に黒なんだけど、『とりあえず、いいや』ってことにして他の2人は警察に連れて行ってもらったんです。 

警察を呼んだのは、まだその一回だけです。

■ハッテン行為をするゲイへの対処は続く

あとは口頭で注意したのがあります。
マークしてた1人がサウナに入ったので中を覗いたら、ちょうど離れた所を見たんですよ。
で、中に入って
「ちょっと勘違いされると大変なことになるよ、警察呼ばれてからじゃ遅いですから気をつけてくださいね」
って。 

 警察に連れて行ってもらったのと、口頭注意したので、とりあえずマークしている5人のうちの3人は来なくなったんですけど、まだ2人は残っていますね。 

ほとんどはサウナでなんですけど、ミスト室ってのがあるんですが、 片付けに入ったら浮いてたんですね、量的には2人分の白いのが。
だいたいこの人がやったんだろうなって見当はついているんです。
しばらく来なかったんですけど、最近1年ぶりくらいで来たんですよ、その人。
顔は覚えているんで、しっかりマークしています。

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公共の場である銭湯で、一部のゲイがどんなハッテン行為をしてきたのか、銭湯の現場の声を聞いていただいています。
LGBTの権利運動が進む一方、これまで表立って語られることのなかった一部のゲイによる行為の是非に注目が集まり始めています。みなさんはどのように感じられているでしょうか?
本音座談会はまだ終わりません。後編でも、銭湯店主の皆さんの本音がさらに語られます。
そちらも併せてお読みください。 

後編はこちら

READ  長年のクローゼットを経てカミングアウトをした90歳のゲイの人生「私みたいな人間はこの世には一人もいないと思っていた」

ABOUTこの記事をかいた人

いたる

LGBTに関する様々な情報、トピック、人を、深く掘り下げたり、体験したり、直接会って話を聞いたりしてきちんと理解し、それを誰もが分かる平易な言葉で広く伝えることが自分の使命と自認している51歳、大分県別府市出身。LGBT関連のバー/飲食店情報を網羅する「jgcm/agcm」プロデューサー。ゲイ雑誌「月刊G-men」元編集長。現在、毎週火曜日に新宿2丁目の「A Day In The Life」(新宿区新宿2-13-16 藤井ビル 203 )にてセクシャリティ・フリーのゲイバー「いたるの部屋」を営業中。 Twitterアカウント @itaru1964