【台湾:婚姻平権を追う】台湾のLGBTプライドは如何にして「アジア最大」に成長したのか?

台中LGBTプライドに掲げられるレインボーフラッグ

台湾の婚姻平權(婚姻平等の権利)を巡る動きをご紹介する【台湾:婚姻平權を追う】。5月6日(土)、5月7日(日)の2日間にわたって開催された「東京レインボープライド」。日本を代表する一大LGBTイベントとして年々注目度が高まっており、過去最多の来場者数を記録したことで大きな話題を集めました。一方、台湾で毎年開催されている最も大規模なLGBTイベントといえば「台灣同志遊行(台湾LGBTプライド)」。今年も秋に開催が予定されており、近年の同性婚をめぐる討論の活発化に伴って、さらなる規模の拡大が見込まれています。「アジア最大」と称されるまでに成長した台湾のLGBTプライドは、なぜ現在の地位を確立することができたのでしょうか。

「台灣同志遊行(台湾LGBTプライド)」とは?

taiwan lgbt pride muscle men

2015年台湾LGBTプライドパレードの様子(撮影:Kazuki Mae)

台湾の首都・台北にて毎年10月最終土曜日に開催されている「台灣同志遊行(台湾LGBTプライド)」は今年2017年で15回目。2003年に「台北同玩節」と呼ばれる台北市主催のLGBTイベントのプログラムの一つとして行われたパレードが始まりとされています。2,000人余りの参加者を集め、公的機関が行った中華圏初のLGBTパレードとして話題を集めました。

台北市が主催となったのは初開催時のみでしたが、翌年2004年からはNGO団体「台灣同志遊行聯盟」による継続実施が実現。以来現在に至るまで、毎年LGBTプライドを開催し、「アジア最大」の規模にまで成長させることに成功しています。

開催を経るごとに、参加者数は平均して毎年約5,000〜6,000人のペースで増加。昨年2016年のパレードにはおよそ8万2,000人が参加し、過去最多となる動員数を記録しています。先日行われた「東京レインボープライド」のパレード参加者数は約5,000人と伝えられていますが、その16倍にあたる人々が一斉に台北の街を練り歩くと考えると、その規模の大きさを改めて実感していただけるのではないでしょうか。

台湾のLGBTプライドに8万人が集う理由。

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2015年台湾LGBTプライドでレインボーフラッグを振る参加者たち(撮影:Kazuki Mae)

台湾の人口はおよそ2,300万人。日本の首都圏人口(約3,500万人)にも満たない数字でありながら、なぜ「アジア最大」と言われるほどのLGBTプライドが実現しているのでしょうか。

まず考えられる理由としては、台湾におけるLGBTを取り巻く環境がアジアトップクラスの水準にまで発展してきている点。台湾の国会における立法院では、婚姻に関する記述のある「民法」を改正し、同性カップルの婚姻を認めることを目指す「民法改正法案」が討論されている他、憲法の観点から同性婚を審議する「憲法法庭」の結果発表も、来る5月24日に控えています。「同性婚は合憲(同性婚を認めない現在の状況は違憲)」という判断が成されれば、同性カップルの婚姻に関する法整備も急ピッチで進められることが期待されています。

また、そうした公的機関の動き以上に、市民レベルではLGBTに関する討論が非常に活発。ネットメディアやSNSを通して、LGBT当事者が発言をすることもごく日常的に行われており、中には「網紅」と呼ばれるネット著名人の地位にまで登りつめる当事者もますます増えてきています。LGBT関連の話題に接する機会も自然と頻繁になるため、「身近な存在」として認識を持つ人々が日本以上に多いのが、台湾社会の特徴として挙げられます。

特に近年は、同性婚を始めとする「LGBTの権利」に関する討論が全社会を上げて行われていることもあり、ストレートカップルや当事者の友人、家族など、LGBT当事者以外のパレード参加者も急増中。セクシャリティをオープンにしやすい環境に加えて、「多様性に富んだ社会」を支持する人々のさらなる増加も、パレードの規模拡大と深い関係があるかと思われます。

社会運動に積極的な台湾精神。

讓生命不再逝去為婚姻平權站出來音樂會

2016年12月に25万人が参加したLGBTイベント『讓生命不再逝去為婚姻平權站出來音樂會』(撮影:Kazuki Mae)

台湾の歴史を紐解いてみると、国の重要な局面に際して、数十万人単位の社会運動がしばしば起こっていることが分かります。

最も記憶に新しいところでは、台湾国内のみならず、世界中から注目を集めることとなった太陽花學運(ひまわり学生運動)。2014年3月、当時の台湾政府が進めていた中国大陸との「サービス貿易協定」締結をめぐって、学生たちが立法院に突入、およそ3週間にわたって国会を占拠し、審議内容の見直しを訴えた出来事です。この運動には学生のみならず、彼らの考えに賛同する多数の国民が参加。総参加者数は30万人とも50万人とも言われ、後の政権交代(現在の蔡英文総統率いる民進党の躍進)や、新政党・時代力量の誕生につながったとされています。

LGBTに関するものでは、昨年2016年12月に行われた同性婚合法化を求めるためのイベント「讓生命不再逝去為婚姻平權站出來音樂會」において、25万人が台湾総統府前に集結。台湾の著名アーティストも登場し、立法院で討論が続いている「民法修正法案」の正当性を社会に広く訴えかけました。イベント終了後ほどなくして、法案の第一段階審査を無事通過したことが報道され、現在は次回審議へ向けての準備がなされている状況です。

「声を上げることで、国は変わる」という現実を、幾度となく体験している台湾の国民たち。社会運動の意義と威力を正確に理解しているからこそ、自分たちの望む未来のために一丸となって積極的に参加する土壌が、台湾には整っています。「アジア最大」の規模にまで急速に邁進してきた台湾LGBTプライドの原動力は、「思いは伝わる」、「自分たちの手で社会は変えられる」という個々人の持つ確固とした信念の中に秘められているとも言えそうです。

台湾LGBTプライド2017は10月28日(土)開催予定!アジア最大のパワーをぜひ現地で。

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2015年台湾LGBTプライドで巨大レインボーフラッグを掲げる先頭グループ(撮影:Kazuki Mae)

「多様性に富んだ社会」を望む人々が、総力を挙げて作り上げてきたパレード「台灣同志遊行(台湾LGBTプライド)」。近年ではアジア最大のパワーを一目見ようと、日本を含む海外からの参加者も増加傾向にあります。憲法法庭の結果次第では、「婚姻平權(婚姻平等の権利)」実現というニュース付きで、これまで以上の盛り上がりも予想されます。今年2017年の台湾LGBTプライドは10月28日(土)開催予定。この秋は台北で、台湾社会の努力の結晶に触れてみませんか。

台灣同志遊行(台湾LGBTプライド)
Web:http://www.twpride.org/
Facebook:https://www.facebook.com/Taiwan.LGBT.Pride

 

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1987年香川県生まれ。旅で訪れた台湾に恋して、2012年に来台。2013年には念願の海外社会人デビューを果たし、現在台北にて広告関連のデザイナーとして奔走中。台湾でのLGBTな日々をつづるブログ『にじいろ台湾』を書いています。