「宝塚がHIVの中心に」自民党議員が発言
宝塚市議会にて、HIVに関して自民党議員の大河内議員が差別的な発言をしたことが取り上げられ、批判を浴びている。
性的少数者(LGBT)支援に向け、兵庫県内初の基本方針策定を目指す宝塚市。24日の市議会定例会で、自民党議員団の大河内茂太議員が一般質問に立ち、「(支援条例が制定され)宝塚がHIV感染の中心になったらどうするのか」と発言。別の議員が「不適切」と取り消しを求め、議事が一時中断した。
大河内議員は「HIVは、特に男性間の性的な接触によって広がっている。条例ができた場合、話題性もあり、たくさんの人が集まり、HIV感染の中心になったらどうするのか、という議論が市民から出てくる」と発言。これに対し、北野聡子議員が取り消しを求め、議事が中断した。
以前にもあったHIVに対する差別的発言
実は以前も、それも同じ兵庫県内でHIVに対する差別的発言が起きていた。
16日に開かれた兵庫県議会の委員会で、自民党所属の井上英之県議(44)が男性同士の性行為によるHIV(エイズウイルス)感染防止に向けた県の啓発活動を疑問視する発言をしていたことが県などへの取材で分かった。
井上県議は「社会的に認めるべきじゃないといいますか、行政がホモの指導をする必要があるのか」などと発言したという。井上県議は取材に対し、発言したことを認めた上で、「偏った性嗜好(しこう)で本来ハイリスクは承知でやっている人たちのこと。他にも重要課題がある中、行政が率先して対応する必要はない」と述べた。発言の撤回などは考えていないという。
これらの発言が、なぜ差別的か
HIVは、”Human Immunodeficiency Virus(ヒト免疫不全ウィルス)”の頭文字をとったウィルスの一種である。HIVに感染し放置した場合、人間の免疫システムがHIVウィルスによって徐々に破壊されていき、AIDS(エイズ, Acquired Immune Deficiency Syndrome の略)を発症すると、やがて死に至る。
しかし、現代では抗HIV薬の開発により、たとえHIVに感染したとしても抗HIV薬を定期的に飲めばHIVは抑えられ、AIDSの発症を防ぐことができる。一昔前では抗HIV薬の効果を発揮させるため、副作用が激しくても様々な錠剤を頻繁に飲まなければいけない時代もあったが、現代では副作用もほとんどなく、毎日1錠飲めば良いだけのものもある位だ。HIVは もはや”感染すれば死んでしまう恐ろしい死の病” ではなく、 “薬を飲めば抑えられる疾病” になりつつある。エボラ出血熱や狂犬病のような致死率の高い感染症というよりかは、糖尿病などのように”いかに人生をこの疾病と付き合っていくか”が大切な疾病なのである。
また、まともに教育を受けた人なら当然ご存じだろうが、HIVはそう簡単には感染しない。主に性交渉が感染経路であり、血液感染や母子感染なども可能性としては存在しても感染経路としてはかなり少ないケースだ。よってHIVポジティブ(HIV感染者)の人と一緒に生活したり、ご飯を食べたり、普通に生活をしていて感染をする可能性は限りなく0に等しい。
しかし、日本ではHIV感染者の中には男性同性愛者(ゲイ)が占める割合が高いと言われている。これは男性同士による性交渉は肛門性交を通じて粘膜が傷つくため性交中に出血してしまう確率が高いこと、男性同士の性行為は妊娠しないから安全だという誤解、発展場(出会いと性交渉を求めるゲイが集まる場所)の存在など、様々な要因が複合的に絡み合っていると言われている。
こういった事実を考えると、「(宝塚が)HIV感染の中心になったらどうするのか」という大河内議員の発言は不適切でありHIVポジティブや同性愛者たちの人権を侵害する、差別的な発言であることがわかるはずである。
HIVの感染自体は減らしていかねばならない疾病であるが、感染したとしても薬を飲めば何も変わらないし、性交渉をしない限り周囲には感染しないのだから、HIV感染者が一箇所に集まったとしても何も問題はないはずである。
それにも関わらずHIVポジティブの人を必要以上に恐れ、拒絶することはもはや自己を感染から守るためではなく、HIVポジティブの人に対して差別的な人権侵害である。
また、そもそも差別的な発言をした彼らは、ある事実を知るべきである。多くの人は、HIVポジティブになりたくて感染したわけではない。
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