LGBT映画『クィア・ジャパン』とは:田亀源五郎さんへのインタビューも掲載!

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日本のLGBTを取り上げた長編ドキュメンタリー『クィア・ジャパン』

昨年から今年にかけて、日本におけるLGBTQの人々を主題にドキュメンタリーを制作しているクリエイターのグレアム・コルベインズが、ゲイエロマンガや『月刊アクション』(双葉社)で連載中の『弟の夫』で話題を集める田亀源五郎さんにインタビューしました。コルベインズ監督の『クィア・ジャパン』は3月15日までクラウドファンディングを実施中です!

田亀源五郎さんへのインタビュー

田亀源五郎

田亀源五郎さん

Q:文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞の受賞おめでとうございます!受賞されてどう感じましたか?

― 素直に嬉しかったです。

 

Q:『弟の夫』はゲイの登場人物をポジティブに描き、一般のオーディエンスが持つ同性愛者に対するイメージを変えているようですが、このマンガによって見方が変わったという読者から反応はどのようなものですか?

― 多かったのは「目からウロコが落ちた」という感想。ゲイについて何も知らなかった、それについて考えたことがなかったという人たちが、いろいろ知ったり考えたりするきっかけになってくれた模様。「泣いた」という声も多かったです。

 

Q:田亀さんの作品はゲイコミュニティでは何年もよく知られていますが、なぜ大手から一般に向けての出版にここまで時間がかかったのでしょうか? 今まではLGBTを扱った作品にもっと拒否反応があったのでしょうか?

― まず第一に、ゲイエロマンガ以外のマンガを描くということに、私自身がさほど積極的ではなかったということがあります。私はずっと《ゲイの、ゲイによる、ゲイのための》カルチャーに焦点を絞って活動を続けてきましたし、20年以上前には対談で「ゲイマンガ以外を描くつもりはないんですか?」という質問に、「自分のマンガを日本のノンケに届けるよりは、世界のゲイの方に届けたい」と答えています。

一般向けのマンガを描くことを視野に入れ始めたのは、そういった活動にも自分なりの達成感を得ると同時に、一般のマンガ誌から声を掛けられるようになった10年ほど前からになりますが、とあるメジャーな青年誌で、担当編集氏は大いにプッシュしてくれたものの、編集長が「ゲイを題材にしたマンガは誌面に合わない」と判断して話がなくなるという体験をしました。その直後、同じ雑誌で有名なBL作家が描くゲイカップルのマンガ連載が始まったので、正直なところかなり複雑な気持ちでした。

『弟の夫』に関しては、別にゲイを題材にマンガを描いてくれという依頼があったわけではありません。私がプレゼンテーションした複数のアイデアの中に『弟の夫』のプロットがあり、それが結果的にOKとなって連載が決定したという経緯です。その際プロットを練るにあたって、私は前述した青年誌での没経験があったので、ヘテロ読者の興味を惹くように細心の注意をはらいました。それが功を奏したのかも知れません。また企画を練っていた当時、欧米での同性婚合法化の話題が、まるでトレンドのように一般のニュースをも賑わしていたので、上手く時流に合ったという側面もあるのかも知れません。掲載誌の方向性や編集者の意欲などによって、同じ内容でも媒体によって掲載の可否が異なるという可能性もあるでしょう。

しかしいずれにせよそういった考察は、評論家や社会学者がすることであって、作家としての私にはあまり関係がないことかなとも思います。

 

Q:渋谷区と世田谷区の同性パートナーシップ制度が開始されて1年が経ちます。田亀さんも世田谷区民ですが、これらはLGBTコミュニティにどのような影響があると思いますか?

― 自分が世田谷区民であるなしは関係なく、ゲイライツに関してこういった《動き》が出てきたことは、私は大いに歓迎すべきだと感じています。ポジティブな反応だけではなく、それに対しての批判的な言説や、あるいは明確なアンチLGBT的な動きも見えてきましたが、それら全てを引っくるめて、様々なことが《動いている》こと自体に意義を感じます。

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コルベインズさん(左)と田亀さん Toronto Comic Arts Festivalにて

Q:なぜ、ドキュメンタリー『クィア・ジャパン』の参加を承諾したのですか? この作品からなにを期待しますか?

― グレアムは良い友人ですから(笑)。それはさておき、私はずっと日本のゲイカルチャーの《記録》がとても少ないと思っていて、だからこそ自分でも『日本のゲイ・エロティック・アート』シリーズを手掛けたりもしてきました。よって、何らかの形でその《記録》が残り、後世のためのリファレンスとなる可能性があるだけでも、とても大きな意義を感じます。正直なところ、私個人のテーマはあくまでもゲイ・カルチャーのみであり、クィアという枠組みの広さには戸惑いも感じますが、日本のクィア・カルチャーの中の一つとしての、日本のゲイ・カルチャーの記録と紹介という面に期待しています。

 

Q:これからの田亀源五郎について教えて下さい。新作の構想などはあるのでしょうか?

― ここ最近、現実と地続きのリアルな世界や、しっとりとした心理ドラマを描く楽しさは、『弟の夫』で存分に堪能しているので、その反動もあってゲイエロマンガの方は、非現実的で奇想天外なネタばかり描きたい気分です(笑)。

クィア・ジャパンとは

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『クィア・ジャパン』は、日本のアーティストや活動家、パフォーマー、コミュニティーのリーダー、そして日常を生きる人々を紹介する長編ドキュメンタリーです。 インタビューや実生活の一片の描写を通して様々な当事者の、それぞれ違ったストーリーを見つめます。

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LGBTコミュニティーでポジティブな変化をもたらした人たちに注目しながらも、ゲイ、レズビアン、バイセクシャル、トランスジェンダーなどのセクシャル・マイノリティー当事者に立ちはだかる問題にも向き合っています。

『クィア・ジャパン』の製作は、カリフォルニアを拠点とする、監督であるグレアム・コルベインズが獲得した、日米友好基金(JUSFC)による「日米芸術家交換プログラム」のフェローシップにより可能となりました。

主な撮影が4月から始まるのを前に、現在、クラウドファンディングサイトKickstarterで資金を募っています。

また、東京付近在住の参加者・スタッフも募集中です!
参加ご希望の方は是非メール(queerjapandoc@gmail.com)にてご連絡をお願いします。
東京付近在住のカメラマン、編集、ラインプロデューサー、通訳者、音声スタッフなどの撮影スタッフを募集しています。
撮影期間:2016年4月~8月

【クィア・ジャパンWebsite】
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