【トロントプライド2017】カナダ、トロントに注目する理由

カナダがセクシュアル・マイノリティにとってフレンドリーな国だとご存知でしたか?
毎年6月に開催されているトロント・プライドは、世界最大級の大きなプライド・パレードだとご存知でしたか?
どうしてカナダがLGBTフレンドリーなのか、そこにはカナダならではの理由があるようです。
オンタリオ州トロントとトロント・プライドの魅力をシリーズでご紹介していく【トロント・プライド2017】、第一回はカナダ、トロントに注目する理由を探ります。

①LGBTフレンドリーな若き首相の存在
②カナダでは”LGBTTIQQ2SA”が使われる理由
③同性婚を世界で3番目に認めた国 カナダの同性愛に関する歴史
④カナダの同性婚の実態を直撃!

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①LGBTフレンドリーな若き首相の存在

2016年5月の伊勢志摩サミットへ参加するために初来日した、カナダの若きイケメン首相、ジャスティン・トルドー氏。美しすぎる首相夫人として有名なソフィー・グレゴワール氏と共にタラップを降りてくる様子がニュースに取り上げられるや、一気に日本中の注目を集めることになりました。

■参考記事
カナダのイケメン首相、日本でフィーバーAFP BB
イケメンすぎるカナダ首相ジャスティン・トルドー氏が初来日ライフバンクーバー
「トム・クルーズかと…」サミットで来日中のカナダ首相がイケメンすぎるIROIRO

2015年に第29代カナダ首相となったジャスティン・トルドー氏は、第20・22代カナダ首相のピエール・トルドー氏の長男です。イケメンぶりに血筋の良さ、身体能力の高さやアグレッシブな青春時代など、ジャスティン・トルドー氏には世間の注目を集めてしまう要素が揃っています。

2016年5月のGQ誌では「もっともスタイリッシュな政治家」として紹介され表紙にも登場。 

2016年5月のGQ誌では「もっともスタイリッシュな政治家」として紹介され表紙にも登場。

画像引用元:GQ

ここまででもジャスティン・トルドー首相に注目せざるをえない理由は十分に伝わっていると思いますが、本当にすごいのはここから先です。

先住民族がいる北米大陸で、国内に英語圏とフランス語圏があり、かつ移民を多く受け入れているカナダは、まさに多民族国家。2015年に首相に就任したジャスティン・トルドー氏が組閣した内閣は、男女15人ずつという男女同数内閣であり、かつ、先住民の血を引く大臣やインド系の大臣、アフガニスタンから難民としてカナダに移住した閣僚など、他民族内閣でもあるのです。さらにゲイであることを公言しているスコット・ブリソン議員が大蔵大臣に任命されました。
まさに”ダイバーシティ&インクルージョン”を実践する組閣で、これぞ”Equality(平等)”だと言えるでしょう。

そんなジャスティン・トルドー氏ですから、LGBTに関してもとてもフレンドリー。首相選挙に出馬していた2015年6月のトロント・プライドを歩き「来年は首相として歩く」と約束しました。
そして首相になった2016年のトロント・プライドには、レズビアンであることを公言しているオンタリオ州首相(州知事のようなもの)キャスリーン・ウィン氏、トロント市長ジョン・トーリー氏と共に参加してパレードを歩きました。

2016年のトロント・プライドより。ジャスティン・トルドー氏(中央)キャスリーン・ウィン氏(中央左)ジョン・トーリー氏(中央右)

2016年のトロント・プライドより。ジャスティン・トルドー氏(中央)キャスリーン・ウィン氏(中央左)ジョン・トーリー氏(中央右)

引用元:the star.com

■参考記事
【初来日記念】おさらいしよう!ジャスティン・トルドー首相ってこんな人(ライフバンクーバー

②カナダでは”LGBTTIQQ2SA”が使われる理由

LGBTという言葉ではセクシュアル・マイノリティを網羅できないということで、LGBTsとかLGBTQとかLGBTQIとか、様々な言葉があることはご存知の方も多いでしょう。
ところが、カナダではもっと長いLGBTTIQQ2SAが使われているのです。
聞き馴染みのないこの言葉の意味をご説明します。

L Lesbian(レズビアン)
G Gay (ゲイ)
B Bisexual(バイセクシュアル)
T Transgender (トランスジェンダー)
T Transsexual(トランスセクシュアル)
I   Intersex(インターセックス)
Q Queer(クイア)
Q Questioning(クエスチョニング)
2S 2-spirit(トゥー・スピリット)
A Ally(アライ)

いかがですか?
よくご存知のもの、聞いたことはあるけど詳しくは知らないもの、など様々だと思いますが、中でも「2S」=2-spirit(トゥー・スピリット)は初めて目にするという方が多いと思われます。

これはアメリカ先住民に関係する言葉なのです。
アメリカ先住民の中で、女性・男性の2つの心を持つ人は神に選ばれた人、神の言葉が聞ける人、霊的なパワーを持つ人と考えられ、宗教的に特別な存在として尊重されていました。祈祷を捧げる立場や、司祭的立場など、それぞれの部族の中でも重要な役目を任されていました。
ところが、アメリカ大陸にイギリスからの移住者がやってきて、キリスト教的価値観が導入されたことで、2-spiritは差別や虐待されるようになりました。

”女性・男性の2つの心を持つ人”と言うと、トランスジェンダーや(日本で言うところの)Xジェンダーとしてカテゴライズされてしまいそうですが、アメリカ先住民の考え方を尊重して2-spiritというカテゴリーを明記している点。
いわゆるSOGI(性的指向・性自認)の問題ではなく「性分化疾患」であるインターセックスを含めている点。
Queer(クイア)というカテゴリーで様々なセクシュアリティを含めている点。
性的指向・性自認が明確になっていないQuestioning(クエスチョニング)を含めている点。
そして当事者だけじゃなく、理解者であるAlly(アライ)も含めている点。

先住民がいて、移民を多く受け入れる他民族国家である国だからこそ、色々な人がいる「ダイバーシティ」と、その色々な人たちが社会的一体性をもち活躍する「インクルージョン」を実践しているカナダらしい言葉だと言えるでしょう。

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③同性婚を世界で3番目に認めた国
カナダの同性愛に関する歴史

世界で初めて同性婚を認めた国はオランダで、2000年のことです。
その後、2003年にベルギー、そして2005年にスペインとカナダで同性婚が認められました。
お隣のアメリカ合衆国が2015年になってからですから、カナダの先進ぶりがよくわかりますね。

しかし、カナダでも同性愛を禁じて弾圧していた歴史もあったのです。
そのカナダで、セクシュアル・マイノリティの人権がいかに認められてきたのか、その歴史を振り返ってみましょう。

フランス人、そしてイギリス人の入植が進んだカナダは1763年にイギリス領になりました。

1859年
悪名高きイギリスのソドミー禁止法をカナダ法規として採用。罰則に死罪を設けるという厳罰化。1969年までの110年間施工されていた。

1969年
同性愛行為が合法化
この年の6月28日にニューヨークでストーンウォールの叛乱が起きたことを考えると、国境を接しているアメリカ合衆国に比べてカナダの人権意識の進み方の速さを実感できます。

1999年
最高裁がセクシュアル・マイノリティのカップルも、年金・通院・税金の面でストレートのカップルと同じ権利を受けるべきだと述べる。

2003年
トロントがあるオンタリオ州ブリティッシュ・コロンビア州同性婚が認められる
アメリカ合衆国では2000年にバーモント州で「シビル・ユニオン」、カリフォルニア州で「ドメスティック・パートナー」制度を施工。

2004年
ケベック州ユーコン準州マニトバ州ノバスコシア州サスカチュワン州ニューファンドランド・ラブラドール州同性婚が認められる

2005年
7月20日にカナダ全土同性婚が認められる

■参考記事
【同性婚が認められて10周年】カナダの同性愛の歴史/過去と現在/世界の現状ライフバンクーバー

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④カナダの同性婚の実態を直撃!

実際にカナダでの同性婚は、そして得られる権利はどのようなものなのか、カナダ国籍の白人男性と結婚した日本在住歴が長い中国系のズイミンさんにお話を伺いました。
ズイミンさんは、トロントと近郊のリッチモンド・ヒルで「唐変木」というラーメン屋を3軒経営されています。

Q.同性婚をして、生活面で変わったことはありますか?(公的サービスなど、なんらかのプラス面を教えて欲しいです)
ズイミンさん:カナダの同性婚は、異性婚と全く同じ条件が公的サービス(税金、財産分与、保険等)に適用されます。
また、考えたくない事ですが、例えばパートナーが植物人間になってしまった時の生命維持装置継続の選択などの権利を持つことが出来ます。

Q.同性婚をするにあたり、なんらかの支障になるものはありましたか?(カナダにおいての話です。家族内のことではなく)
ズイミンさん:
全くありませんでした。
カナダでは、6ヶ月間同棲しているという事実があれば、同性婚をする条件が整います。
同性婚をすると永住権を貰え、その後は5年毎の更新となります。
そのうち4年間をカナダで一緒に過ごしていれば、パスポートを申請する事も可能です。
また、例えば仕事の理由でカナダ以外の海外に数年間住んでいたとしても、パートナーと一緒だったと証明されれば、適用されます。

Q.同性婚ウェディングをやられた率直なご感想を聞かせてください。
ズイミンさん:
本当に何の差別もなく、普通に結婚式が挙げられましたので、単純に嬉しかったです。
親族・友人だけでなく、見知らぬ方々からも祝福して頂き、結婚して本当に良かったと思いました。

Q.生活する上で、トロントの良いところを教えてください。
ズイミンさん:
アジア人・LGBT等に関して全く差別がなく、心地よく生活が出来ます。
今、実はサンフランシスコに出張に来ていますが、アメリカは人種によってサービスの質が異なると感じ、やはりカナダ(トロント)は住みやすいと思いました。

Q. 唐変木について
ズイミンさん:
トロントに3か所にある人気ラーメン店。今後は上海にオープンするなど、世界展開をしていく予定です。

唐変木公式サイト 

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ズイミンさんのウェディング・フォトより

移民を受け入れ、セクシュアル・マイノリティの人権も当たり前のように認められている、カナダに”ダイバーシティ&インクルージョン”という考え方が浸透している国だということがよく分かるお話でしたね。

⑤世界最大級のトロント・プライドが今年もやってくる

今年もトロント・プライドがいよいよ開催されます。
イベントが次々と開催されるプライド月間のフィナーレ、6月25日に世界最大級のプライド・パレードが開催されます。
日本からはツアーも組まれているので、海外旅行に慣れていない方でも参加しやすいですよ。

TrontPride

トロント・プライド ツアー 公式サイト

シリーズ【トロント・プライド2017】、次回は
プライドパレード目前のオンタリオ州とトロントの魅力
に迫ります。

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ABOUTこの記事をかいた人

いたる

LGBTに関する様々な情報、トピック、人を、深く掘り下げたり、体験したり、直接会って話を聞いたりしてきちんと理解し、それを誰もが分かる平易な言葉で広く伝えることが自分の使命と自認している51歳、大分県別府市出身。LGBT関連のバー/飲食店情報を網羅する「jgcm/agcm」プロデューサー。ゲイ雑誌「月刊G-men」元編集長。現在、毎週火曜日に新宿2丁目の「A Day In The Life」(新宿区新宿2-13-16 藤井ビル 203 )にてセクシャリティ・フリーのゲイバー「いたるの部屋」を営業中。 Twitterアカウント @itaru1964