パスポートの男女以外の性別欄を求め、訴訟を起こす
アメリカ・コロラド州のある住民、ダナ・ジム氏は男性とも女性とも自認していないとして、パスポートの申請書類への性別の記入を拒否した結果、パスポートの発行許可が出なかった。そのため、ジム氏は州政府を訴え、既にいくつかの国が導入しているような、男女の性別を選ばなくてもパスポートを発行する制度をアメリカにも導入するよう求める意向を明らかにした。
訴訟の内容
LGBTやHIV関連の訴訟を支援している法律団体のラムダ・リーガルは、ダナ・ジム氏に代わって26日、訴訟を起こした。ジム氏はインター・セックスと呼ばれる(日本では最近は性分化疾患と呼ばれることが多い)、出生時の生殖器などの形が曖昧な状態で生まれていた。ジム氏の出生証明書には性別が記載されていないという。
訴訟では、被告人としてジョン・ケリー国務長官の名前が挙げられ、性別欄で「M」か「F」のどちらかを選択させられるのは差別的であり、ジム氏のような人に嘘をつかせることになると主張した。
男女以外の性別を選択できるパスポート
既にオーストラリア、ニュージーランド、ネパールなどの国は、パスポートの性別欄で男女の性別に加えてXやOtherなどを選ぶことを認めている。オーストラリアでは、男女以外の選択肢を用いるときは、医師や心理学者などの診断書を提出する必要がある。
ジム氏の弁護士の1人、ポール・カスティロ氏はそのようなパスポートを持つ人はアメリカに入国することができるとした上で、州でもXの選択肢をパスポート申請の際に認めるべきだと主張した。これについて、国務省の領事局の代表であるアシュリー・ガリガス氏は、訴訟が保留されている間はコメントを控えるとしている。
「X」や「その他」の性別欄をめぐって
Xなどの性別の選択肢によってどれほどの人が恩恵を受けるのかは、はっきりとは分かっていない。カスティロ氏は人口の1.7%はインターセックスだと推定しているが(諸説あり)、彼らの多くはジム氏とは違って男性か女性としての性自認を持っている(*1)。
ラムダ・リーガルは以前、他の団体と共同でトランスジェンダーの人のためにパスポートの規則の変更を国務省に求めていた。アメリカでは2010年以降、性別適合手術を受けている人は医師からの診断書があればパスポートの性別を変更できるようになっている。
*1:ドイツで行われた調査では、正分化疾患を持つ人439人のうち、400人は典型的な「男」「女」の性自認を持っており、自らを「男でも女でもない」と答えた人はわずか9人であったと報告されている。<参考:Clinical evaluation study of the German network of disorders of sex development >
画像出典:LGBTQ Nation