日本にLGBTに関する法律を!その動きの現状と問題って?

様々な報道などでご存知の方も多いでしょうが、2017年3月9日に、衆議院第一議員会館で「レインボー国会」と題した集会が開かれました。
Letibee LIFEでも傍聴記を公開しています。

東京五輪・パラに向け LBGT支援の法整備訴え NHK NEWS WEB
性的少数者、差別解消に法整備を 当事者、国会議員が意見交換 西日本新聞
「LGBTへの差別」なくして 新しい法律求める当事者たち 切実な叫び Buzz Feed Japan
Buss Feed 「レインボー国会」に潜入 アデイonline
「うちの地元にLGBTはいない」なんて言わせない。LGBT差別解消を求める「レインボー国会」が開催 SOSHI BLOG (ReBitスタッフ 松岡宗嗣氏のブログ)
レインボー国会 傍聴記〜”SOGIハラ”を流行語大賞に! Letibee LIFE

自民党、民進党、公明党、共産党、社民党の国会議員13名が来場。
勝間和代、三枝成彰、経団連、国連などの来賓。
全国各地から当事者のスピーカーが登場。
LGBTの人権に関する法案について法学者から解説。

と、記事を読む限りでは充実した内容の集会が開催されたように感じると思います。

しかし、このLGBTに関する法律を求める動きには、大きな問題があると感じています。
そこを明らかにすることで、当事者の皆様にこの法律に関して考えていただけるきっかけになればと考えました。

①3種類の法案が存在していることをご存知ですか?

人権問題に関する法案が必要だと考えた当事者のグループが、国会議員にロビイングしてその問題に関する超党派議連を作ってもらう。

そして議連で各党が賛同できる法案になるよう検討してもらい、法案を国会に提出。

国会で議論をして修正など加えて、全会一致という形で議員立法が成立

という流れで進んでいるならば、とても明快なのです。
しかし、LGBTに関する法案は現在3つ存在しています。

差別禁止法‥‥LGBT法連合会が提唱している法案
差別解消法‥‥野党4党が国会に提出した法案
理解増進法‥‥自民党の特命委員会がとりまとめ国会提出を目指している法案

それぞれの法案に関して、解説されているリンクをご紹介します。

<差別禁止法>
LGBT法連合会
性的指向および性自認等により困難を抱えている当事者等に対する法整備のための全国連合会 (通称:LGBT 法連合会)
全国の当事者団体などが集まって、差別禁止法案の成立を求めるグループ
■(参考資料PDF)LGBT法連合会が目指す「LGBT差別禁止法」とは

<差別解消法>
正式名称「性的指向又は性自認を理由とする差別の解消等の推進に関する法律案」(通称・LGBT差別解消法案)
民進党・共産党・社民党・生活の党と山本太郎となかまたち(法案提出当時/現・自由党)の野党4党が2016年5月27日に国会に提出した法案
■新聞報道 LGBT差別解消へ法案 野党4党提出、公明は慎重姿勢(朝日新聞)
■提出に至った説明 LGBT差別解消法案を国会へ提出(民進党公式サイト)

<理解増進法>
自民党の性的指向・性自認に関する特命委員会が取りまとめ国会提出を目指している法案
2016年5月17日に法案が取りまとめられたと報道された。
■新聞報道 自民がLGBT理解増進法案をとりまとめ 促進策を政府の責務に(産経新聞)
■法案と経緯 性的指向・性自認の多様なあり方を受容する社会を目指すための我が党の基本的な考え方(自由民主党公式サイト)

②LGBT法連合会が「差別禁止法」を提唱し続けるのはなぜ?

つまり、現状は

野党4党が「差別解消法」を国会に提出
自民党は「理解増進法」の国会提出を目指している

「差別禁止法」と「差別解消法」の名称が似ているの、混同している人も少なくないようですが、これは別の法案のようです。
ちなみに、LGBT法連合会は「理解増進法案」「差別解消法案」への見解を出しています

性的指向や性自認に関する法整備の議論に対するLGBT法連合会の見解

言葉が難しいので分かりづらいですが、「差別禁止法案」と「差別解消法案」には違いがあるというのは伺えます。

民進党公式サイトの「LGBT差別解消法案を国会へ提出」には、「LGBT差別解消法案(骨子案)を超党派議連の議論のたたき台として提出した」と書かれています。
ということは、LGBT法連合会が提唱する「差別禁止法」に関して、国会議員が議論したということは今までないのでしょうか?
すでに2つの法案が提出、ないしは提出を目指している現状で、「差別禁止法」を提唱し続けているのは、何か見通しがあってのことなのでしょうか?
「理解増進法案」が国会に提出されて議論が始まっても「差別禁止法」を提唱し続けるのでしょうか?

■参考記事
2016年5月27日の野党4党による「差別解消法案」提出後に行われた、LGBT法連合会事務局長の神谷氏へのインタビュー記事
無職中年ゲイが聞く、「LGBT差別禁止法」ってなに?本当にいるの?(Letibee LIFE)

上記のインタビューを読むと、「差別解消法案」「理解増進法案」のいずれかが成立することを期待しているようにも読みとれなくもないのですが、実際はどう考えているのでしょうか? これに関してはLGBT法連合会の考え方を聞いてみたいものです。

自民党の性的指向・性自認に関する特命委員会ができた経緯や現状は、2017年1月初旬に公開した下記記事をご参照ください。

■参考記事
自民党の性的指向・性自認に関する特命委員会の真実を直撃。その1「なぜ自民党が特命委員会を立ち上げたのか?」(Letibee LIFE)
自民党の性的指向・性自認に関する特命委員会の真実を直撃。その2「理解増進法を目指す真意と、現在の状況と今後の見通し」(Letibee LIFE)

③「理解増進法」と「差別解消法」で対立すべきなのか?

ここまでお読みいただいた方はお分かりいただけたと思いますが、LGBTに関する法案は少々混沌とした状況にあります。
この混沌とした状況を分からないままSNSで流布されている、イデオロギーなどのフィルターを通してバイアスのかかった意見に触れてしまい、本当の法案の内容を知る前に先入観を持って決めつけてしまっている人も少なからずいるようです。

しかし今、私たち当事者が知るべきなのは、国会に提出(もしくは提出を目指している)2つの法案に関して、イデオロギーのバイアスがかからない客観的な視点の分析ではないでしょうか。

2017年3月9日に開催された「レインボー国会」では、フラットな立場の法学者・鈴木秀洋氏による非常に興味深い解説がなされました。

■参考記事
レインボー国会 傍聴記 ”SOGIハラ”を流行語大賞に!

しかし、時間が押してしまった関係で、30分予定されていた解説時間が15分に短縮され、その後に予定されていた質疑応答は省略されてしまったため、来場者に配布されたレジュメを早口で読み上げるのみに終わってしまったのはとても残念でした。

そこで、鈴木秀洋氏に直接インタビューを申し込みました。
年度末でご多忙のご様子なのですが、4月にお話を伺わせていただく予定にしています。

なるべく早く「理解増進法」と「差別解消法」に関して、客観的な分析をご紹介いたしますので、ご期待ください。

④最後に

国会で成立を目指している法案は、私たち当事者にとって大切なものだと考えています。
だからこそ、その法案の違いや、進んでいる状況などを広く開示して、多くの当事者の皆さんが理解することが重要だと思います。

そこを理解した上で、広く議論がなされることが必要ではないでしょうか。

Letibee LIFEでは、今後も様々な立場の方々の、法案に意見、考えをご紹介していきます。

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ABOUTこの記事をかいた人

いたる

LGBTに関する様々な情報、トピック、人を、深く掘り下げたり、体験したり、直接会って話を聞いたりしてきちんと理解し、それを誰もが分かる平易な言葉で広く伝えることが自分の使命と自認している51歳、大分県別府市出身。LGBT関連のバー/飲食店情報を網羅する「jgcm/agcm」プロデューサー。ゲイ雑誌「月刊G-men」元編集長。現在、毎週火曜日に新宿2丁目の「A Day In The Life」(新宿区新宿2-13-16 藤井ビル 203 )にてセクシャリティ・フリーのゲイバー「いたるの部屋」を営業中。 Twitterアカウント @itaru1964