レインボー国会傍聴記 ”SOGIハラ”を流行語大賞に!

20107年3月9日(木)12:00〜14:00
性的指向や性自認に関する公正と平等を求める院内集会 実行委員会が主催の「レインボー国会」が、衆議院第1議員会館B1大会議室にて開催されました。
どの様な集会だったのか、取材して参りました。

会場300人は入る大きな会議室。
正面向かって中央通路から左側は「撮影NG」ブロックになっています。
実際、TVカメラや報道関連のカメラがかなりの数が入っていたので、カミングアウトしていない当事者にとっては、この配慮はありがたいと思いました。

定刻には、会場の7〜8割は着席され、始まる前からなかなかの盛況ぶりでした。
集会は当初は下記のスケジュールで進行の予定でしたが、諸々の事情で前後したり、時間が押してしまい「⑧質疑応答」の時間がなくなったりと、変更がありました。それぞれのセクションを詳しく紹介します。

①主催挨拶 実行委員会より
②国会議員挨拶 ”以後、ご到着され次第、随時
③当事者から一言メッセージ
④実行委員会からの提案 → ※”SOGIハラ”という言葉を広めよう
⑤来賓挨拶
⑥法学者からの解説⑴ 鈴木秀洋氏(日本大学准教授)
⑦法学者からの解説⑵ 内藤 忍氏(独立行政法人労働政策研修・研究機構 副主任研究員)
⑧質疑応答 → ※時間の関係で割愛
⑨総括 → ※時間の関係で割愛
⑩閉会挨拶

 

司会:(左)杉山文野氏(東京レインボープライド代表理事) (右)土井香苗氏(国際NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ 日本代表)

司会:(左)杉山文野氏(東京レインボープライド代表理事) (右)土井香苗氏(国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ 日本代表)

①主催挨拶 実行委員会より

実行委員長・松中権氏(認定特定非営利活動法人グッド・エイジング・エールズ代表)
「みなさんパワーがあって、快晴ということで、日本全国から集まったみなさんの声を届けていきたいと思います」

岩本梓氏(LGBT法連合会共同代表代理)
「300人を越える会場が熱気で溢れています。これは法整備にかけるみなさんの思いを感じます」

②国会議員挨拶

国会会期中ということもあり、参加された議員のほとんどは来場して挨拶をしては退場するという感じで、滞在時間は10〜20分でした。国会が始まる13:00には、ほぼすべての議員は退出されていました。
国会議員挨拶は、到着され次第随時、ということだったので、途中からは「③当事者から一言メッセージ」と交互にスピーチされる進行になりました。

来場してスピーチをした国会議員の皆さんをスピーチ順にご紹介します。

馳浩 衆議院議員(自民党)LGBTに関する課題を考える議員連盟 会長

馳浩 衆議院議員(自民党)LGBTに関する課題を考える議員連盟 会長

永田町でLGBT当事者、支援者、学識経験者、自治体の方々がこうして一堂に集まって、みなさんが直面している課題、それは何なのかということ。それは法律で解決すべきなのか、日本人の意識を変えることで解決できるのか。いやその前に、住んでいる自治体によって何とかならないか。働いている職場で何とかならないか。通っている学校で何とかならないか。それぞれの段階、レベルにおいての課題というものがあるんだと、こういう認識を持っております。

西村智奈美 衆議院議員(民進党)

西村智奈美 衆議院議員(民進党)LGBTに関する課題を考える議員連盟 幹事長

行政、そして民間の方でも今、LGBTに対する人権問題の啓発は随分進んでいると思いますけども、残念ながらこの国会において立法作業が滞っているというのは、本当に申し訳ないことだと思っております。今日は2つの法案についてご講義があるということで、私もうかがいたい気持ちは山々なのですが、本会議のため参加することができません。是非みなさんで、いい議論をしていただいて、みなさん自身の声でこの国会を動かしていくという流れにしていただきたいと思っております。私は、隣にいる池内さん(池内さおり議員)と共に(野党4党が提出した)差別解消法の筆頭提出者であります。どこかで一致点が見いだせて世界に恥じない日本の立法ができるよう、これからも頑張っていきたいと思っておりますので、みなさんの後押しをいただきたいと心から願っております。

小宮山泰子 衆議院議員(民進党)

小宮山泰子 衆議院議員(民進党)

私の地元(埼玉県川越市)の隣の選挙区・入間市で民進党から公認候補として、性同一性障害をお持ちで生まれた方が市議会議員候補として立候補されております。私たちとしては、日常のこととして受け入れる、という態勢を整えつつあるのですが、私自身まだまだ知らないこともたくさんございます。私が埼玉県会議員をしていた20年ほど前は、川越にあります埼玉医科大学総合医療センターで、女性から男性への手術を当時は受け付けておりました。その時の臨床等の話を聞くと、本当にまだまだ分からないことがたくさんあるな、でもそれを当たり前として受け入れるべきだという話も医師の方から聞いておりました。

牧島かれん 衆議院議員(自民党)LGBTに関する課題を考える議員連盟 事務局次長

牧島かれん 衆議院議員(自民党)LGBTに関する課題を考える議員連盟 事務局次長

ワシントンD.C.に暮らしていた時に、色々なタイプのカップルの方たちが楽しそうに暮らしているなという印象を持ちました。一方で2001年9月11日のニューヨークでの同時多発テロの時、同性カップルのご苦労というのも近くで見させていただきました。大変な時、また悲劇にあってしまった時に、同性カップルはどうやって乗り越えることができるのか、日本ではそのサポートは十分できているのだろうか、というのが私自身の問題を考えるきっかけでした。みなさんが声を上げにくいだろうということもしっかり受け止めた上で、その分、私たちがしっかり働かねばならないということだと思っています。いじめをなくす、自殺をしないような環境にする、そしてみなさんがハッピーに社会の中で生活ができるような、ダイーバーシティ、そして一億層活躍と言われる中で、みなさんも一緒に日本を盛り上げていくというのが大事だと思います。

池内さおり 衆議院議員(共産党)差別解消法筆頭提出者

池内さおり 衆議院議員(共産党)※差別解消法の共同提出者

今日はレインボー国会ということで、私も中のシャツを虹を意識した色にしてきました。この社会はみんな違うから多様だし、このレインボーみたいに鮮やかになるんだと思うんです。だから、私自身もこのレインボーの一体どの辺に立っているのか、というのを考えます。その意味では、私も当事者だし、実はみんなが性的指向・性自認の多様性の当事者なんだと思うんです。女性ジェンダーって結構我慢させられることが多いんです。「あなたはどうせこの家から出ていく人だから」ということであまり期待もされないんですよね、将来に。自分のこの生きづらさが一体どこから生まれてくるのか、ジェンダーという言葉、社会が求める生きづらさ、女らしくあれという足枷に気づいた時から、私はその足枷を1個ずつ脱ぎ去りたいと思うようになりました。ありのままにみんなが生きていける、呼吸のしやすい社会にこの国を変えていきたいと思いますので、力を合わせて頑張りましょう。

初鹿明博 衆議院議員(民進党)

初鹿明博 衆議院議員(民進党)

初鹿明博議員のスピーチで、会場で配布された「SOGIハラ(ソジハラ)」について触れられた。
「SOGIハラ、これ皆んなで広めていきましょう。今まで、例えば「セクハラ」や「パワハラ」「マタハラ」とか、言葉が出来るまであまり皆んなが認識していなかったことが、名前が決まって広まっていくことによって、当事者がそういうことで苦しんでいたのか、という理解も広まっていくことになるんだと思います。この「SOGIハラ」を今年は流行語大賞になるよう広めていく一年にしたいと思います」
それを受けて、司会の土井氏。
流行語大賞を目指して頑張っていきます

同じく司会の土井氏より「ソギ」「ソジ」と人によって読み方が違っていた「SOGI」に関して
正式に『ソジ』と決定いたしました
と発表された。

続いて来場した2名の議員(画像なし)

逢沢一郎 衆議院議員(自民党)

昨日、グループの代表の方にわざわざ取り組みについて説明に、また勉強のためにお出でをいただきました。本当に嬉しく感謝いたしました。LGBTの立場の方が顕在化している面、また潜在的なところも含めると国民の7%程度いらっしゃるのではないか、そんな話を聞いたところであります。いわれなき差別だとか、偏見だとか、社会的な不条理だとか、そういうものない日本社会を目指していくのは当然のことであろうかと思います。2020年の東京オリンピック、パラリンピックを一つの目安としながら、日本を盛り立ててまいりたいと思います。国民のみなさまに正しくLGBTのことを理解をいただく、そして共感をしていただく、そういう大きな運動にしっかり取り組んでいきたいと思います。

牧山ひろえ 参議院議員(民進党)

幼少の頃から、アメリカやヨーロッパに長く住んでいましたが、クラスメートや職場の同僚にはLGBTの方が結構いらっしゃいました。みなさんカミングアウトしていました。日本に戻った時に非常に不思議に思ったのは、どうして同じパーセンテージのLGBTの方がいないんだろう、ということで、それがずっと気にかかかっていました。それはカミングアウトできなくしている社会だからなんだろうなと思っています。自由に自分らしく生きていたクラスメートや同僚のことを思い起こすと、同じことが日本にも起きるように私も今の立場で頑張らなければいけないなと思っております。

 

細野豪志 衆議院議員(民進党)

細野豪志 衆議院議員(民進党)

LGBTの問題は、私が議員になった直後から、なんとかしたいという思いがありまして、個人的には友人も多いものですから、取り組んでまいりました。ただなかなか国会の中で動きに結びつかなかったのですが、渋谷のパートナー条例の話がありまして、これは動かなければいかんと強く思いました。それで、馳さんにもお願いして超党派の議連を作っていただき、少しずつでも前に進んでいる状況です。個人的には法律を作りたいと思っています。企業のレベルや、教育の現場といったところでは、少しずつ前に進んでいるんですが、やっぱりその背景には法律がないと。我々は差別解消法という法案を出しているんですが、なんとか他の党派の皆さんにもご賛同いただいて、そこまではまずやりたいと。そしてその先はですね、2020年の東京オリンピック、パラリンピックがまもなくきます。オリンピック憲章に、しっかり書かれているわけですから、本来はみなさんの選択をしっかり敢行する意味では、同性婚を社会的にしっかり認めていくというのが、私は本来の姿だと思っています。ただ残念ながら国会はまだ随分手前にいますので、一歩でも二歩でも前に進められるように頑張っていきたいと思います。

石田昌宏 参議院議員(自民党)

石田昌宏 参議院議員(自民党)自民党の性的指向・性自認に関する特命委員会

私は元々看護師でして、看護の現場で働いている中で、多くの病気の方、障がいのある方とお付き合いさせていただきました。人が病んだり、苦しんだり、といった場面を横で見るとですね、いろいろなことを学びます。それが今の糧になっていると思います。最近、改めて皆様方のような思いを持ち、悩みのある方と話をするとですね、「まだ知らなかったな」「こう言う思いってあるんだなあ」と学ぶ体験をさせていただいています。その中で、少しずつ頑張っていくことは、もちろん社会のためにも、みなさんのためにも、自分自身のためにも意味のあることだと今、感じています。私は自民党の全国比例というところなのですが、私の先輩で性同一性障害特例法に携わった南野知恵子さんからもお導きいただきながら、今、自民党の性的指向・性自認に関する特命委員会のメンバーの一人にさせていただいています。
法律を作ることもとても大事ですが、細かい制度も同じように大事で、今、各省庁が取り組んでいます。皆様が生きづらいと感じる阻害になっている要件を一個一個洗い出して、それに取り組むということをやってきました。社会の中での生きにくさを少しでも解消していくには、制度と同時に理解も大事だと考えています。制度を進め、理解を進めるというのを同時にやっていきたいという思いはあります。

新妻ひでき 参議院議員(公明党)

私がこの課題に取り組もうと思ったきっかけは、以前、アメリカのワシントン州シアトルというところに5年間滞在していた時にプライドパレードを見て、これは本当に大切な人権の課題なんだなあと痛感したことです。その後、日本の現状を見るにつけ、これは何としてでも突破口を開かなければならない、という思いでLGBTに関する課題を考える議員連盟にも加わりまして、議論を深めているところです。今日の議論の資料をしっかり読ませていただき、今後の法制化の議論に活かしていこう思います。

続いて13:30頃に来場したのは

福島みずほ 参議院議員(社民党)

福島みずほ 参議院議員(社民党)

最近では、性同一性障害の人たちの刑務所や拘置所の処遇問題で交渉しています。戸籍を変更していないと、誰が見ても女性なんだけど男性刑務所に行かなくちゃいけない、誰が見ても男性なんだけど女性刑務所に行かなくちゃいけない、という問題があるんです。法務省は戸籍上の性別にあります、というんですが、もうそういうことではないでしょ、という風にも思っています。
ご存知のように、国会にはLGBT議員連盟があり、また野党で差別解消法案を国会に提出しています。もちろん、パートナー法や同性婚も必要なのですが、とにかくカミングアウトしてもしんどい、カミングアウトしなくてもしんどい、でも様々な人たちの差別を解消し、啓発をし、社会を変えるためには、LGBT差別解消法案がなんとしても必要だ、と思っています。2020年の東京オリンピック、パラリンピックまでに差別解消法を成立させて国際的なスタンダードにまで持っていきたいと考えています。野党は差別解消法案を作って提出しているので、なんとかこれを全会一致にしたいと思っています。

終盤、14:00直前に来場したのは

辻元清美 衆議院議員(民進党)

辻元清美 衆議院議員(民進党)

レインボー国会開催にあたりまして、一言連帯のご挨拶を申し上げたいと思います。
私はですね、LGBTを始めセクシュアル・マイノリティ、マイノリティと言われていることに少し抵抗があるんです。それはですね、すべての人の問題だと思っているからです。すべての人が幸せに生きていくための問題だと思っているんです。アメリカのトランプ大統領が誕生したり、ロシアの問題があったり、世界で逆行するような動きも出てくるかもしれないそんな中、日本の国会で少しずつ私たちの仲間を増やしていってます。是非みなさんと一緒に、すべての人の問題として取り組んでまいりたいと思います。共に頑張りましょう。

③当事者から一言メッセージ

全国各地から集まった様々なセクシュアリティの当事者から一言。(スピーチ順)

浜口ゆかり氏(高知ヘルプデスク代表)

高知県で当事者支援団体の代表をしております。地元新聞で私はカミングアウトしました。私には姉が2人いるのですが、1人の姉がどうしても理解してくれませんでした。母が亡くなった時にも、そのことを教えてくれず、私は大分経ってから知ることになったんです。大好きだった母の顔を見たかったので、安置所に行き一人で母にお別れをしました。家族からこう言った扱いを受けるということは本当に苦しいことなんです。だから、そういう意味でも「差別禁止法」というのはどうしても必要だと思います。

 

朝倉ケイト(歌手)トランスジェンダー

麻倉ケイト氏(歌手)トランスジェンダー

私は幼い頃に、お母さんのようになれる、と思っていたんですね。でも小学校での男女分けとかで、感じていた違和感に直面しました。「男性の体に閉じ込められた」という感覚にショックを受けました。「なんでスカート穿いたらあかんの?」と言ったら、周りの大人に怒られたりとかからかわれたりしたことで、私は自分の心を隠すようになりました。男子トイレに入るも緊張するんで毎回個室に入っていると、いつも大してる「大ちゃんや」とあだ名つけられたり。先生に心ないこと言われた時も、悪気はないんでしょうけど、自分的にはすごく落ち込んで学校を仮病使って休むような子でした。大人になってからもカミングアウトできなくてずっと悩んでて、自殺に近いくらいの自傷行為、身体中血だらけになったり、そういうことも繰り返しました。でも育ての母と呼んでいる自分を理解してくれる人と会ってから、こういう人が一人でもいてくれたら人間って強くなれるんやなと気付きカミングアウトできました。
歌の仕事でラオスに呼んで頂いた時に、現地の学校の先生と話しました。ラオスでは子供の才能を尊重して伸ばすことには性別は関係ない、と言われました。日本もそういう国になってほしいと思います。
※麻倉ケイト公式サイト

室井舞花氏(教科書にLGBTを!ネットワーク)

室井舞花氏(教科書にLGBTを!ネットワーク)

学習指導要領が今年度改正されるということで、その中で多様な性を生きる子供たちに配慮した内容を記載してほしい、ということを求めて活動をしています。このタイミングを逃すと10年後になってしまうということで、当事者の一人としてできることを続けています。
私は13歳の時に、初めて女の子に恋したんですけど、その同じ時期に教科書に記載されていた「誰も異性に関心を持つ」というのを目にして「自分は間違っているんだ、この教科書の中に自分はいないんだ」と感じとてもショックを受けた一人です。それから10数年経っているにも関わらず、教科書の中には同じ内容が書かれ続けている。自尊心を傷つけられたり、自分は間違っているんだと思う子供たちが、今も教室の中にいることが耐えられないと思い、キャンペーンを立ち上げています。多様な性を生きる子どたちだけではなくて、あらゆる子供たちが学校の中で自分は自分のままでいいんだということを安心して育っていくことができる環境を求めて活動していきたいと思っています。

土肥いつき氏(トランスジェンダーの高校教諭・京都)

京都で10年間、トランスジェンダーの子供たちの交流会をやってきました。おそらく日本で一番トランスジェンダーの子供たちと接している当事者だと思います。今、何十人ものトランスガール、トランスボーイが集まってくれています。
性同一性障害の特例法の「断種要件」と「手術要件」を外してほしいと考えています。学校の教員としてですね、子供たちに「将来性別変更したかったら、君は実子を作る選択肢はないんだよ」って、言えないですよ。あるいは妊娠したとしたら「20年間性別変更できないんだよ」って言えないですよ。
そしてもう一つ、「将来の夢は何?」「手術」こんな答え聞きたくないです、やっぱり。
特例法が一つの選択肢である今の状況では子供たちの選択肢があまりにも狭すぎる、ということを理解いただいてですね、特例法の要件の緩和ができることをお願いします。
ノルウェーでは6歳から性別変更できるようになっています。そのこともご理解いただいて、ぜひとも検討をお願いします。

 


小嵒(こいわ)ローマ氏(Rainbow Soup 代表理事)

(東京のコミュニティでは本名で活動しているので)どちらかと言えばそちらの名前をご存知の方が多いかもしれません。私自身は福岡の在住歴が長いので、LGBTコミュニティの活動も福岡が一番長いんです。ただ、本名で活動するのが怖いから、今でもニックネームで活動せざるをえないのが福岡の現状です。幸い、いろいろなムーブメントに後押しされて、九州でもパレード、映画祭、いろいろなレベルでの交流会、啓発活動など、本当に進んでまいりました。ただ残念ながら偏見はまだ根強くて、生きづらさを抱えている当事者も多いです。今年1月、私の知人の20代のレズビアン当事者が自殺で亡くなっています。もう誰も死なせてはいけないと思っています。そのためには、社会のバリアがいかに無くなっていくかということが大事だと強く思っています。それを無くしていく大きな力になるのが、自治体や国レベルの取り組みだと思っておりますし、こうした動きそのものがあることが、九州の当事者、家族、周りの方がにとっては本当に励みになることだろうを思っています。私の大好きな言葉を引用します。「一人の百歩より、百人の一歩」という言葉が大好きです。ぜひみなさんと一緒に手をつないで進んでいきたいと思っています。

続いて、2015年11月に報道された
「女性トイレ禁止は差別」 性同一性障害の公務員が提訴へ
この裁判の原告からのメッセージが、トランスジェンダーの畑野とまと氏により代読された。

また実行委員会のメンバーである柳沢正和氏(ドイツ証券・共同株式営業部長)より、「当事者として、管理職として」現状の問題点が説明された。

当事者の複合差別について、松中氏(カラフル@はーと)よりスピーチがありました。
カラフル@はーと…LGBT当事者で精神疾患、発達障害、依存症(アルコール・薬物・性行動、他)などの問題を抱える方のための、自助グループ。現在、主に中野区、杉並区、新宿区で当事者同士の交流会「カラフルミーティング」を実施している。

渋谷区のパートナー条例第1号となった東小雪氏は「SOGIハラ」に関するスピーチ

渋谷区のパートナー条例第1号となった東小雪氏は「SOGIハラ」に関するスピーチ

今、私は渋谷区で(パートナー条例の)証明書を取得することができましたけど、やはり、日本全国どこにでも当事者の人がいます。やはりこのSOGIハラ(ソジハラ)によって当事者が命を落としている、差別に遭っているということを、ぜひみなさん知っていただいて、ぜひこのSOGIハラを解決出来る法律を国レベルで作って欲しいと心から願っています。

会場で配布された「SOGIハラ」に関する資料

会場で配布された「SOGIハラ」に関する資料

 ⑤来賓挨拶

勝間和代氏(経済評論家)

勝間和代氏(経済評論家)

ダイバーシティや、マイノリティに関する様々な差別撤廃活動をしてきたと語る勝間和代氏。
「内閣府の男女共同参画会議」に10年参加し続けている経験から「日本では差別的土壌が許されている」という現実を認識し、様々な政策が男女のカップルを基準にしていることを説明。一年前まではセクシュアル・マイノリティに関して理解していなかったことを率直に話し、「法整備を進めるためにはLGBTの法整備に関わる議員さんを応援して出世してもらおう」と語りました。

大山みこ氏(経団連ダイバーシティ担当)

大山みこ氏(経団連ダイバーシティ担当)

ダイバーシティは企業の活力の源泉です。経団連としても、これからこの問題に真剣に検討し、企業として何ができるのか、何をしなければならないのか、きっちり勉強してまいりたいと思っています。ちょうど明日、こちらの松中権さんにも経団連でご講演をいただくことにしていますし、経団連の参加企業1300社に実情を把握するためのアンケート調査もやっております。5月をめどに色々アウトプットしていく予定です。

クン・ヴァンダイク氏(オランダのLGBT人権団体COC会長)

クン・ヴァンダイク氏(オランダのLGBT人権団体COC代表)

LGBTの人々は人権侵害を受けております。日常的に、世界中で、オランダで、そして日本でも。学生は本人が実際の、または周囲からそうと思われている性的指向、性自認、性表現、性的特徴により学校でいじめを受けています。また労働者は職場の隅に追いやられており、同性カップルを愛しい人を愛することで仲間外れにされています。
LGBTの人々は、医療、住まい、社会サービスにおいて差別や人権侵害を受けています。
幸いにもここ10年、私たちが手本にしている勇敢な活動家のコミットメントの結果、人権侵害に対する当事者の脆弱性への理解が深まってまいりました。一般の人々はLGBTを取り巻く問題について知見を広めてきました。
しかし重要なのは人々が個人的に当事者を知り合いになったことで、異なるものとして見られていた人々の痛みや不安を理解したことだと思います。
社会、そして国会の人々はLGBTの人々に心を開き始めています。性的指向、性自認、性表現、性的特徴にまつわる不平等への理解の向上は重要であり、支援をしていかなければなりません。
しかし、平等の文化に向けた法的議論を支援するだけでは不十分です。なぜなら、政府は全ての国民を差別から守らなければならないという倫理義務と法的義務を持っているからです。
明確な差別禁止法の立法は、全ての国民の生活において実用的な価値があるだけでなく、特に日常的に差別を受けている人々や、地域社会の隅に追いやられている人々にとって重要であると言えるでしょう。
政府には国民を差別から守る義務があります。言葉だけではなく、明確な法律を制定し、施策や措置を講じなくてはなりません。法律に基づいた平等に対する政府の明確、かつ明瞭な立場表明は、象徴的価値があり、社会的規範と国民の福利に大きな影響を与えます。
例えば、最近アメリカで実施された学術調査では、同性婚が合法化された州に置いて、若者の自殺率が急激に減少したと示されました。
LGBTにまつわる課題の理解増進を図るためには、差別禁止法の立法が相伴わなければなりません。なぜなら、立法には実用的かつ象徴的価値があり、国家が国民全員を案じているということを示すからです。
日本のLGBT当事者の勇気ある発言と、活動家のたゆまぬ努力は日本の人々の意見に前向きな変化をもたらせています。性的指向、性自認、性表現、性的特徴を理由とする差別禁止法の立法はさらに社会的包摂を促すことでしょう。
※COCの公式サイト

大谷 美紀子氏(国連子どもの権利委員会・弁護士)

大谷 美紀子氏(国連子どもの権利委員会・弁護士)

加治慶光氏(アクセンチュア株式会社チーフ・マーケティング・イノベーター)

加治慶光氏(アクセンチュア株式会社チーフ・マーケティング・イノベーター)

三枝成彰氏(作曲家)

三枝成彰氏(作曲家)

10月に上演される新作オペラ「狂おしき真夏の一日の主人公がLGBTであることから始めて、かつては同性愛者を公表しているとNHKでは出演させないという内規があったのに、今は大きく変わってきたという話。日本には明治維新までは同性愛がタブーではなかったこと。音楽の世界では有名な作曲家には同性愛者が多いということなどを話しました。

 

⑥法学者からの解説⑴

鈴木秀洋氏(日本大学准教授/元文京区男女協働課長・子ども家庭支援センター所長)

鈴木秀洋氏(日本大学准教授/元文京区男女協働課長・子ども家庭支援センター所長)

鈴木秀洋氏は、自民党が法案提出を目指している「理解増進法」と、野党4党が法案提出した「差別解消法」に関して、特定政党に軸足を置かず、学問の自由と表現の自由の行使としての分析を解説しました。
「理解増進法と差別解消法という形で出されております。私の立ち位置としては、どちらが良くてといういうように分断を進めてしまう形ではなくて、両方とも見ていい方向に進んでいくように話ができればと思っています」
フラットな立場で2つの法案の内容を分かりやすく紹介してくれたのですが、時間が大幅に押していたせいで、当初30分の予定が15分に短縮されてしまい、消化不足な感じは否めませんでした。

鈴木氏の分析は非常に興味深いので、改めてきちんとご紹介いたします。

⑦法学者からの解説⑵

内藤忍氏(独立行政法人労働政策研修・研究機構 副主任研究員)

内藤忍氏(独立行政法人労働政策研修・研究機構 副主任研究員)

最初に「はっきり申し上げて「理解増進法」の啓発の責務を課すというのは(セクシュアル・ハラスメントに関する)現場を見てきて、効果はないであろうと思います。そう言った観点から、海外の法規制をご説明いたします」と立場を表明した内藤氏。
よりそいホットライン「セクマイライン」に寄せられた電話相談の実例から、イギリスの2010年平等法の内容を紹介、欧州の差別(・ハラスメント)禁止の趣旨は、社会的包摂にあると語りました。
最終的には「理解増進でいいとは私は思わない、差別禁止が必須です」と強い口調で締めました。
※内藤忍(ないとうしの)氏のプロフィール

 

⑩閉会挨拶

閉会にあたり、実行委員より「SOGIハラ(ソジハラ)」についてのアピール。

(左から)池田氏(LGBT法連合会共同代表)山口かおり氏、松中権氏(グッド・エージング・エールズ代表)土井香苗氏(国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ 日本代表)

(左から)池田宏氏(特別配偶者法全国ネットワーク・パートナー法ネット)山口薫氏(アムネスティ・インターナショナル日本)松中権氏(グッド・エージング・エールズ代表)土井香苗氏(国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ 日本代表)

予定の2時間を少し上回った「レインボー国会」。
熱のこもったスピーチが多く、その分、時間が大幅に押してしまい、法学者からの解説の時間が極端に短くなったり、その後の質疑応答が無くなってしまったのは残念でした。
次回は5月の開催を予定しているとのこと、是非実りある議論ができる場となることを期待します。

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いたる

LGBTに関する様々な情報、トピック、人を、深く掘り下げたり、体験したり、直接会って話を聞いたりしてきちんと理解し、それを誰もが分かる平易な言葉で広く伝えることが自分の使命と自認している51歳、大分県別府市出身。LGBT関連のバー/飲食店情報を網羅する「jgcm/agcm」プロデューサー。ゲイ雑誌「月刊G-men」元編集長。現在、毎週火曜日に新宿2丁目の「A Day In The Life」(新宿区新宿2-13-16 藤井ビル 203 )にてセクシャリティ・フリーのゲイバー「いたるの部屋」を営業中。 Twitterアカウント @itaru1964