2017年4月6日、新聞朝刊で「大阪在住の男性カップルが養育里親」に認定されたことが報じられました。これはかなり大きな反響を呼び、多面的な報道がなされ、様々な意見がSNSで論じられています。その流れをまとめました。
ニュース配信と大阪市長のツィートが話題に
最初の報道はこちら。
■<養育里親>男性カップルを大阪市が全国初認定(毎日新聞)
<一部抜粋 ※詳細は上記記事タイトルのリンク先をご参照ください>
虐待などにより親元で育てられない子供の養育里親について、大阪市が男性カップルを認定したことが5日、市への取材で分かった。昨年12月、市内在住の30代と40代の男性を養育里親と認定した。
厚労省ガイドラインでは里親希望者の要件について、同性カップルかどうかは定めておらず、同省家庭福祉課は「ガイドライン上、同性カップルでも里親を希望することは可能」とする。実際に認定されたケースは把握していないという。
この報道後の、吉村洋文大阪市長のツイートが話題を集めました。
LGBTは、単なる少数者。活躍の場が制限されるのは社会的にもったいない。色々考え方はあろうが、他の自治体にも広がればいい。<養育里親>男性カップルを大阪市が全国初認定(毎日新聞) – Yahoo!ニュース https://t.co/Av77LYQ4jz #Yahooニュース
— 吉村洋文(大阪市長) (@hiroyoshimura) April 5, 2017
続いて、さらに詳細な報道がNHKによってなされました
■大阪市 同性カップルを里親認定(NHK 関西 NEWS WEB)
<一部抜粋 ※詳細は上記記事タイトルのリンク先をご参照ください>
大阪市によりますと、去年9月、市内に住む30代と40代の男性のカップルから、里親制度のうち、養子縁組を結ばずに一定期間、子どもを預かり育てる「養育里親」になりたいという申し出を受けました。
大阪市は、2人に対し、児童相談所による調査や、制度についての研修を行い、専門家による審議会で審査を行った上で、去年12月、養育里親に認定したということでです。
大阪市の場合は国のガイドラインにそって、事前の研修や児童相談所の面接を受け、専門家で作る審議会で認められる必要がありますが、性別については制限していません。
東京都では、里親になるには、原則として、異性の「配偶者」がいることを条件としています。
このNHKの報道の中で、里親になったゲイ・カップルの下記の発言も注目されています。
「里親制度というのは,『子どもを育む役割を引き受ける』ものです。『子どもがほしい』大人のための制度ではなく,子どものために『育つ家庭』を用意する,子ども中心の制度です。多くの大人が,家庭を必要とする子どものために,『育てる役割』の担い手になることに,関心を持ってもらえたら、と思います」
このNHKの報道後の吉村洋文大阪市長のツイートです。
LGBTのカップルでは子育てができないのか。僕はそうは思わない。里親は子供のための制度。子供の意思確認もした。養育里親制度の趣旨も理解され、経済的にも安定、愛情を持って養育してくれている。児童虐待で回復不能な心身の傷を負う子もいる。https://t.co/flUFVrDNDw
— 吉村洋文(大阪市長) (@hiroyoshimura) April 6, 2017
翌日、4月7日には、塩崎恭久厚生労働相が同性カップル里親を容認と報じられました
<一部抜粋 ※詳細は上記記事タイトルのリンク先をご参照ください>
塩崎恭久厚生労働相は7日の記者会見で「同性カップルでも男女のカップルでも、子供が安定した家庭でしっかり育つことが大事で、それが達成されれば我々としてはありがたい」と述べ、同性カップルを里親として容認する姿勢を示した。
※ニュースサイトで読む: https://mainichi.jp/articles/20170407/dde/041/100/056000c#csidx63b57842f6a7ff0b22286cb86ddd153
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大阪市が門戸を開いたきっかけを作った団体とは?
今回の大阪市が同性カップルに里親制度を認定したのは、一般社団法人レインボーフォスターケアがきっかけを作ったというインタビュー記事がNPO法人ReBit代表理事の薬師実芳氏によって公開されました。
■「全国初、同性カップルが里親認定」その意義を聞いてみた(YAHOO! JAPANニュース)
<一部抜粋 ※詳細は上記記事タイトルのリンク先をご参照ください>
「一般社団法人レインボーフォスターケア」は、LGBTが里親や養親として子どもを養育するための法制度等の課題の解決と、里親家庭や児童養護施設で暮らすLGBTの児童たちが直面する問題の解決を通じて、多様な大人と多様な子どもと多様な家族が生きやすい社会をめざす団体です。
2014年5月、大阪市淀川区の榊区長(当時)がレインボーフォスターケアの活動に関心を抱いてくださり、懇談をしました。淀川区の働きかけで、2015年7月に大阪市にて職員との意見交換会が実現。その後、LGBT支援事業ニュースレター「虹色ニュース!」同年9月号に、大阪市こども相談センターより、「LGBT当事者の方を排除することはないのでぜひ里親登録してください。合うお子さんがいればマッチングします」とのコメントが掲載されました。
そのような大阪市の動きによって、実際のゲイカップルが里親研修を受け、認定されて、お子さんが委託されたということは非常に大きな意味を持ちます。
「みんなで子どもたちを抱きしめ、子育てとともに何でも挑戦でき、いろんな家族の笑顔があふれる社会」を目指す、社会問題解決集団として活動する認定NPO法人フローレンス代表理事・駒崎弘樹氏によるブログに、同性カップルが里親になることのメリットが解説されました。
■日本初、男性カップルの里親誕生の意義と今後の課題(ハフィントンポスト)
駒崎弘樹氏(認定NPO法人フローレンス代表理事、一般財団法人日本病児保育協会理事長、NPO法人全国小規模保育協議会理事長)
<一部抜粋 ※詳細は上記記事タイトルのリンク先をご参照ください>
私は強く同性カップルにも里親になってほしいと思っています。なぜなら、例えば父親から性虐待にあっていた子どもを委託する場合、里親家庭の新しい父親に対して、子どもは非常に強い恐怖感を感じてしまうこともあるでしょう。
そういった場合、女性カップルの家庭への委託という選択肢があれば、よりスムーズな委託が可能になるでしょう。
また、子ども自身がLGBTや性別に違和感を持っているような場合も、同性カップル里親は強力な理解者となってくれるでしょう。
色々な子どもがいるのだから、色々な里親がいることは、むしろ利点があるのです。
SNSでの様々な反応より
ゲイの同性カップルが里親になることに対して、あからさまな誤解や、意図的な曲解によるヘイトと思えるつぶやきもありましたが、多くの方はこの件をポジティブに捉えて冷静に語られているという印象を受けました。
様々な皆様のご意見をご覧ください。
同性カップルの里親のニュース、勘違いしてる人が多いけどあの人らがなったのは子供の親権を譲り受けて完全に親代わりになる里親ではなくて、養親。親が育てるのが難しくて施設に預けられてる子供を、一時的に受け入れて家庭代わりに育てるやつで恒常的なものではないよね。
— せちゅ (@SETUNA) April 7, 2017
同性恋愛認めろよ!ってわけじゃないけど、同性が里親だといじめられるだろ!は変な話だよね。親が同性だといじめていいの?って思う。そうじゃなくても異性の親でもいじめは起こるのにね。いじめが悪い、って何で思わないんだろうね
— 浄化されたシロクマ(眞紅) (@shinkukuma) April 7, 2017
「男性カップルが里親に」のニュースで「子供が可哀想」という意見が散見されるんですが、一見、子供の将来を案じているように見えますが、あれは単に「自分は男性カップルに育てられる子供を可哀想だと思う偏見を持った人間である」という表明でしかないですからね。
— 深爪@重版御礼「深爪式」絶賛発売中 (@fukazume_taro) April 7, 2017
同性カップルの里親が
ダメなんじゃなくて
理解出来てない人間が居る以上
何が起きてもおかしくないって事。— だ*・ω・)ノ@白猫勢 (@RH_daa) April 7, 2017
テレビで以前見た一家は全員血の繋がりがない家族だった。
子供四人が「血の繋がりが家族じゃない。結局は時間なんです。」と言ってたな。家族だって時間の共有が基本だよね。「全国初、同性カップルが里親認定」..その意義とは? https://t.co/CexlPB0MIZ
— 舞 (@urbou) April 7, 2017
手っ取り早いのは、里親、同性の親をガンガン増やして、さっさとみんなが大好きな「普通」にしてしまえはいいんじゃないかな。
— おから (@kawdy) April 7, 2017
たかだか同性カップルが里親になっただけでやれいじめだなんだのという話になる国であることを恥じてくれ
— 貢ぐちゃん (@_mi_tsu_gu_) April 7, 2017
男同士だろうが女同士だろうがちゃんと子供を育てられるならそれでいいじゃん
そもそもどうして里親が必要かって原因を作ってるのが男女のカップルなのに同性カップルを否定する意味がわからん— アサト (@yuikkoasato) April 7, 2017
同性カップルが里親か……いいなあ
ちゃんと愛してくれそう
周りがなんと言おうと、本当の意味で家族として、愛してくれそうていうか『いじめられるから子供可哀想』ってそういう風な偏見をする親を見て子供は育つんだから社会が悪いじゃん
なんだその自分は関係ないって態度は— (お茶漬けの)残飯bot (@ILW175) April 6, 2017
同性の里親の、何がどういけないのだろう。
実の親でさえネグレクトがあったり
虐待が無いわけでは無いのに。
手順を踏んで、収入面や必要事項をクリアしたうえでの
今回の事でしょう。いじめられるだとか、好奇の目にさらされるだとか
そう言ってる人は、自己紹介乙に見えるんですよね。— ネテル (@neteru55) April 6, 2017
https://twitter.com/shinonkoume/status/850109542872395777
そんなに同性カップルに子供引き取ってほしくなけりゃまず子供いない異性夫婦がどんどん養子引き取んなよって思うわ…他の先進国の1/4なんだぞ、里親がいる里子
— UNCO (@unco119) April 6, 2017
ウチの娘達は「同性カップルが里親に」のニュースを見て「別にいいじゃん」「なんてしっかりした考えの方だろう」「『イジメられる』って思う人達が守ればいいじゃん」「子供10代だから自分の意思じゃん」「良かったねぇ」と口々に。母は君達を誇りに思うよ。
— むぽむぽ (@mupomupo1) April 6, 2017
同性カップルが里親になった話聞いてうちの親が「子供がかわいそう」って言っててちょっと失望した
なんかそういう偏見持ってる人ってやだな。— むぎ茶 (@cerisier_1225) April 6, 2017
https://twitter.com/tamagobol/status/850078860720746496
アメリカも良い里親もいれば、公費から出る里親手当が目的で子供受け入れて放置する人もいる。里親が同性か異性かなんて関係ない。 https://t.co/c2hBPPkkLD
— Mayumi Narako (@MayumiNarako) April 6, 2017
どうせ子供同士、下手したら親や教師からも里親ってだけでイジメ差別の対象になるし
里親先が同性とか関係ないでしょ
異性カップルの里親でもどうせイジメだなんだなんて起こるよ、実際いくらでも起きてたでしょ
どうせイジメが起こる前提なら親がそれに立ち向かえるかどうかの方が大事じゃないかね— はさみ (@VSScizor) April 6, 2017
収入が安定しているカップルなら、異性でも同性でも変わりないですよ〜とは言うものの、女性カップルで里親OKと認められるレベルに達している割合ってどれくらいだろう?とは思うよね。 pic.twitter.com/lFHHvuxf9x
— 一宮けい (@kay1miya) April 6, 2017
同性カップルの子育て漫画&映画に言及する人たち
そして、かなり数多く見受けられたのが、ゲイの同性カップルが子育てをすることを描いた漫画と映画に触れたものです。
同性カップルの里親云々は「ニューヨーク・ニューヨーク」を知っているかで絶対に反応が真逆……と思っていたら本当にそうだった。
多感な時期にあの名作を通っておいて本当によかった。— dandon (@dandandon) April 6, 2017
「ニューヨーク・ニューヨーク」(白泉社文庫)
著:羅川真里茂
「花とゆめ」に1995年より連載された漫画。ニューヨークを舞台に、クローゼットな生活に疲れた警官と、コーヒーショップのウェイターの恋が描かれる。いわゆるBL的なアプローチではなく、正面からゲイカップルの抱える問題を描き、大きな話題を集めた。最終的に2人は女の子の父親となることを選択する。
「ニューヨーク・ニューヨーク」配信中
コミックシーモア
Amazon(Kindle版)
2012年のアメリカ映画「チョコレート・ドーナツ」に触れた方も多いです。
同性カップルが里親に、というニュースでこの映画を思い出す
dtvでも観れるからぜひ観てほしい、後悔はさせない pic.twitter.com/Fob37QmNFU
— 春崎@ゆる浮上 (@mutsugo_0118) April 6, 2017
ZEROでチョコレートドーナツみたいに同性カップルが里親してる。
なんか嬉しい。あの映画みたいに頭固いバカの意見がまかり通る世の中じゃないということが嬉しい。— やったぜひよこさん (@fuku25hiyoko) April 6, 2017
同性カップルが里親に認定されたのはいいニュースだった。娘と映画「チョコレートドーナツ」のことが自然と話題になり,嫌なことの多い世の中だけど歴史は前進もしているよねえと。これは70年代のアメリカでの苦闘の物語。感動的な映画です。https://t.co/EE2Mfw5WZa
— こなみひでお (@konamih) April 6, 2017
「チョコレート・ドーナツ」Any Day Now
監督:トラヴィス・ファイン
出演:アラン・カミング、ギャレット・ディラハント
(物語)ニューヨークのショーパブで歌い踊るルディと、検事局に務めるポールのゲイ・カップル。ルディのアパートの隣室に住むジャンキーの母親が逮捕されたことで施設に入れられたダウン症の少年マルコを、2人で育てようと奮闘するのだが……。
(解説)世界各国の映画祭で賞賛されたこの作品。主演のルディを演じたイギリス人俳優アラン・カミングは2007年にバイセクシュアルであることをカミングアウトしている。
「チョコレート・ドーナツ」配信中
Netflix
Hulu
dTV
日本における里親の必要性や、自治体により認定基準の違いがあることなど、今回の報道によって初めて知った方も少なくないと思います。この件をきっかけに、同性カップルの子育てに関しての議論も活発になされ、当事者を含めた多くの国民、そして自治体などの理解が進むことが望まれます。
■TOP画像引用元 http://www.proessay.com/gay-parents-essay/