シンシナティで転向療法が禁止に
米国・オハイオ州の都市シンシナティ(Cincinnati)で同性愛やトランスジェンダーを“治す”ための転向療法(conversion therapy)を禁止することを決定した。これは、昨年自ら命を絶った10代のトランスジェンダーのリーラー・アルコーン(Leelah Alcorn)さんの死を受けての決定であるという。
10代のトランスジェンダーの自殺
当時17歳だったアルコーンは、保守的な両親から全く理解が得られず、トランスジェンダーを「治す」よう強いられた。母親からは友人と連絡を取ることを禁止され、耐え切れなくなってしまったアルコーンは、昨年12月、自ら命を絶ってしまった。
彼女の遺書には、社会が変わっていってほしいという願いが現れており、「私の死が、何かしらの意味を持って欲しい」と書かれていた。
この遺書は世界的な注目を集め、このアルコーンの死をめぐって、両親へ向けられた批判とともに、転向治療を見直すべきだという声が多く寄せられていた。
転向療法が禁止に
アルコーンの事件を受け、シンシナティの市議会では同性愛やトランスジェンダーの転向療法を禁止する方向へ議論が進められた。12月9日にはこの議案に反対する牧師らが市議会に多くつめ寄せたが、7対2で議案が可決された。
これによって未成年者に対して性的指向やジェンダーアイデンティティを矯正する治療を受けさせることが禁止され、違反したものには200ドルの罰金が科されることになる。
オープンリーゲイの市議員からのコメント
オープンリーゲイの市議員であるクリス・シールバッハ(Chris Seelbach)は今まで提案された中でもとても重要な法律だとこれを評価した。
「私たちはリーラー・アルコーンの死を無駄にしたくなかっただけなのだ!そして、未成年者に対しての『転向療法』を禁止した米国で最初の市になることで、歴史を作ったのだ。
資格を持つ医療の専門家であっても、未成年者の性的指向やジェンダーアイデンティティ、性表現を変えようとする“治療”はできない。ついに、オハイオ州シンシナティの地でそれが法制化されたのだ。オハイオ州のジョン・ボッジス平等理事長が言っていたように、『これは公衆安全の問題だ』。私たちの市に住む、若いLGBTの人々の安全をまもるためのものなのだ。」
そうシールバッハ議員はツイッター上で述べた。
米国精神医学会などは、この転向療法には効果が認められないという見解を示している。また、すでにカリフォルニア州やオレゴン州などでは、性的指向やジェンダーアイデンティティを矯正することを目的とした治療は禁止されている。