【NHK サキどり↑独占取材】「あなたはあなたのままで素晴らしい」ジョン・カビラ氏がLGBT当事者に贈る言葉

NHK総合の経済番組「サキどり↑」がLGBT特集

11月15日(日)の午前8時25分、NHK総合で「サキどり↑ーLGBTと切り拓く未来ー」が放送されました。ゲストには5年間で1万人のLGBTのポートレートを撮影するプロジェクト『OUT IN JAPAN』にて撮影を行った写真家のレスリー・キーさんと、女装家のブルボンヌさんが出演。キャスターのジョンカビラさん、片山千恵子アナウンサーとともにLGBTについて語ります。いったい、どのような内容だったのでしょうか?

NHK総合「サキどり↑-LGBT市場最前線-」 11月15日(日)午前8時25分 ゲスト:レスリー・キー氏(カメラマン)ブルボンヌ氏(女装家) MC:ジョン・カビラ氏、片山千恵子アナウンサー

NHK総合「サキどり↑-LGBTと切り拓く未来-」
11月15日(日)午前8時25分
ゲスト:レスリー・キー氏(写真家)、ブルボンヌ氏(女装家)
MC:ジョン・カビラ氏、片山千恵子アナウンサー

そこで、キャスターのジョン・カビラさん、そして制作を担当されたNHKの竜山典子プロデューサー、木村和穂ディレクターに直接インタビューをさせて頂きました。

Q. 「サキどり」は、どういった番組なのでしょうか?

(ジョン・カビラ氏)
「番組のタイトルが体を成すように、色々な経済的な側面から、日本が抱えている課題、また世界が抱えている問題を解決するような術をサキどって、皆さんと共有するというのが大きなテーマだと思います」

NHK「サキどり↑」スタジオにて (右)片山千恵子アナウンサー (左)ジョン・カビラさん

NHK「サキどり↑」スタジオにて
(左)片山千恵子アナウンサー
(右)ジョン・カビラさん

Q. なぜサキどりは、今回LGBT特集をすることになったのでしょうか?

(木村和穂氏)
渋谷区と世田谷区のパートナーシップ証明書の話題から、それに関連する記事がたくさんでてきたことがありまして、我々も何かできないかなと関心を持ったことが今回の番組のきっかけです。
番組の性格上、経済の観点で掘り下げれば企画として成立するなということで取材を始めていったところ、すでに色々な企業がLGBTをマーケットとして捉えていることが分かりました。それぞれの企業で何ができるだろうかと取り組みを始めていらっしゃったりとか、海外では既にマーケットとして成立していて色々なサービスや商品があるという実績も分かったので、それを深めて行こうと考えました。

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「サキどり↑」制作担当 木村和穂さん

Q.日本の企業の取り組み具合はどのように感じましたか?

(木村和穂氏)
日本の企業の状況としては2つの面があると思うんです。
最近は経済用語じゃないかと思うくらい「LGBT、LGBT」とよく聞きますが、そういう観点からその市場に対して何か取り組めるのではないか? とスタートしてみたものの、実際何をしたらいいのか分からない。また現場レベルで「ぜひやるべきだ」と思って動き始めてもそれが組織の上にあがっていくと「ウチはそこまでやらなくていいんじゃないか」とか「時期尚早なんじゃないか」ということでストップしてしまっている。こうした例には、取材の中でいくつも出会いました
もうひとつは、現在LGBTに関する商品やサービスを提供しようと動いている企業の多くは、おそらく現場レベルではLGBT当事者や、アライと呼ばれるLGBTコミュニティに近い方が関わっていることによって動いているのが実態なのではないかという点です。企業が動く際には、やはりそうした内部の当事者の声が大きな力になるのだと実感しました。かといって当事者が当事者のためにという形ではなくて、企業が企業活動の一環としてサービス提供しようと動いていることは面白いと思いました。

「サキどり↑-LGBT市場最前線-」より

「サキどり↑-LGBTと切り拓く未来-」より

Q.今回取材されて最も印象に残ったものはなんでしたか?

(木村和穂氏)
実際にニーズの大きさを感じたのは、不動産関係の企業です。賃貸仲介の会社でLGBT専用窓口を設けて対応に当たっているのですが、この4月からサービスを始められて半年で既に100組以上契約に繋がっているそうなんです。しかも積極的なPRはせずに、口コミで広まっているんです。

この会社は、ある種の正面突破の作戦を図っています。部屋を借りたい人はLGBT当事者である事を大家さんに伝える、たとえば同性カップルであることをオープンにして大家さんと交渉するそうです。そこがユニークなのは大家さんと当事者を直接面談させるんです。
(竜山典子氏)
多分、今の日本の社会ではみんなそうなんじゃないかなって思うんですが、大家さんにしても、「知らないことだから」「理解出来ない事だから」触らずにおこうっていう、という面はあると思うんです。でも、実際に会ってみたら「いい人じゃない」「何が違うんだろう」っていうことであって(笑)
この番組もそういう番組になるといいなと思ってるんです。何が自分と違うんだろうってことを考えるきっかけになってくれるといいなと。

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「サキどり↑」竜山典子プロデューサー

Q. LGBTをマーケットとして捉えると、コミュニティの中からは「私達を財布と考えて欲しくない」という批判も現れます。取材をされた企業の中にはそのように考えているところはありましたか?

(木村和穂氏)
現在動き始めている企業は、当事者またはアライの方が中心となっている面があるので、当事者を食い物にしようという発想は今の所は感じられませんでした。むしろ、その発想で取り組んだら痛い目に遭うということを分かっていらっしゃるように感じました。さらに現時点では、そこまで大きいマーケットだとも見ていなくて、それよりも一生懸命マーケットを育てている時期なのではないかと思いました。
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Q. ここからはジョン・カビラさんにお伺いします。いつ頃からLGBTという存在を意識し始めましたか?

高校時代に同級生で「あれ? 僕らとはちょっと違う男の子がいるな」と感じたのが最初ですかね。アメリカンスクールに通っていたのですが、彼に対して「おかしいよね」「変だよね」「気持ち悪いよね」という感情は抱いていなかったです。「He is different」という感じでみんなが普通につきあっていたので、別段、彼が虐められるということもなかったです。
大学に入って、1979年にUCバークレー(カリフォルニア大学バークレー校)に一年留学した時に、サンフランシスコのゲイタウン(カストロ&ポーク・ストリート)にクラスメートと度胸試しに行ってみたことがあるんです。まあ、若気の至りなんですけどね。
ストリートにわっと男性が並んでいて、建物の壁にもたれて見ている訳ですよ。僕らが「よしっ!」と意を決してサイドウォークを歩いていくと、そのお兄さん方が上から下まで僕らの全身を舐めるように見るんです。(男性から性の)対象として見られる場にいるのは初めてだから、もう「WOW!」と思いました。

でもそのときに感じたのは、怖いとか気持ち悪いとかじゃなくて、「女の人ってこういう経験をするんだって」、異性からそういう心持ちで見られるってこういうことなんだって、すごい気づきがあって。ゲイの人たちに囲まれながら、女の人って大変だなって思っちゃったんです(笑)。
それに加えて、なぜカストロ&ポークに彼らが集まっているんだろうということも考えました。僕らのようなヘテロの場合は、周囲に気になる女の子がいれば声をかけてもいいし、目配せしてもいいし、どこでもメッセージを伝えることができるけども、ゲイの彼らにはhub(ハブ=中心)となる場所がなければ出会いもできないんだと。これってどういうことだって思ったんです。
そうか、普段の生活の中では出会うチャンスないよね。じゃあ集まった方がいいよね。でも逆に集まると目立つし、目立つと軋轢(あつれき)が生まれる可能性があるし、それを快く思ってない無理解な人たちにとっては標的になるよね、そういう風に色々考えて行くと、LGBTであることをオープンにするのは本当に勇気がいることだし、それがないと自分自身に向き合うのも難しいよねっていうのを、なんとなくそこにいるだけで感じられたっていうか。

Q. そのご経験の後に、LGBTの当事者との関わりはありましたか?

「GQ Japan」の鈴木正文さんが編集長をなさっていた時です。90年代に、自動車雑誌の「NAVI」でコラムを書かせていただくことになったんです。興味のある人にインタビューをしていいという企画だったので、「府中青年の家」裁判Occur(アカー)の主宰の方にお話をうかがいました。
その裁判に関してもコミュニティの中では賛否両論があるとおっしゃってましたね。かなり単刀直入な質問もさせてもらったんです。たとえば芸能界を見ても、その当時はオネエ・キャラとは言ってませんでしたが、オカマ・キャラや女装してテレビに出る人も少なくないし、日本では結構オープンなのではないですか?
すると、彼は「それは職業的なゲイだよね」と。ゲイを売り物している人たちだからそれはそれでいいけれど、みんなが売り物にしなくてもいいでしょ、と。別にゲイで銀行員、ゲイで商社マン、なんだっていいわけですよね、まったくその通り。だからゲイを売り物にしなきゃオープンに生きられない日本の社会ってどうなんだって、真っ直ぐにおっしゃってましたね。ああそうか、なるほどと、それはすごく勉強になりました。僕が思うのはfair(フェア=公明正大に)でいこうよってことなんです、基本的に。頸城(くびき)から解き放たれて、みんな生きたいように、自分のままに生きるのが普通だよねってことって言いたいわけですよ。
そういう思考の裏には、僕が混血だからってのがあるのかもしれないです。あえて「混血」って言葉を使いました、今はもうほぼ死語ですけどね。その言葉を差別的だと思う人もいるので、あえて使うんですけど。僕は沖縄生まれで、母親がアメリカ人で父が沖縄の人間。当時の沖縄では、ちょっとアメリカっぽい奴はみんな「アメリカー」って呼ばれるんです。ハーフとか混血ではなく「アメリカー」と言われて指差されたりもする。そういう出自に関わる事って変えられないじゃないですか。自分の責任で変えられない事に言われなき圧を感じる事は、元からおかしいと思っているんですよね。
「Sexual Orientation」という言葉を「性的指向」と訳すのも、本当に正しいのかなと思ったりもするんです。だってそれはchoice(チョイス=選択)ではないでしょう。もし異性が好きだとして、貴方はそれを選んだのですかって? 選んでないでしょって、貴方そのものでしょって。

Q. 今回の特集はどういう方向性なのでしょうか?

どういう人たちなのか、どういうテーマを抱えているのか、どういう生きにくさがあるのか、逆にどういう強みを感じているのか、ということをベースでおさえたうえで、経済番組なのでビジネス的な観点からそこにはどういうニーズがあるのだろうと。それを掘り起こす事によってLGBTの人たちが少しでも生きやすくなり、なおかつ同時に経済的な意味が生まれてくればいい、それをどうやって日本で作って行くのかということを模索する番組です。
企業が提供するのは基本的にはサービスですよね。セレモニー系など冠婚葬祭は当然でしょうし、旅行もそうでしょうし、ファッションもそうでしょうし。そのすべてに共通するのは徹底的なリサーチが必要だということだと思います。「何を欲してますか? 何が足りないんですか? 既存のものをこう変えればもっと訴求しますか?」と。

Q. 企業の側にそういうことを取り入れて行こうとする発芽は感じられましたか?

 ある、と思いますね。
特に例えば旅行業。宿泊を提供するサービス、セレモニーを提供するサービス、もしくは保険を提供するサービスなどは、そのニーズが分かっていると思いますし、そういうニーズに対応しています。
LGBTのニーズに対応するというのは、その企業が如何にfairにお客様のことを考えているのか、というアピールにもなると思います。それを見れば投資家も「お、この企業分かっているね」「fairだね」と感じると思うんです。
LGBTにfairであるなら、きっと他のマイノリティにもfairに対応しているに違いないと判断される材料になるでしょう。女性だってworkforce(ワークフォース=労働人口)的にはマイノリティだし、障碍(しょうがい)を持っている方も、高齢の方もマイノリティですよ。
そういう人たちのニーズを汲み取って、お客様にも社内的にもfairに接する会社がもっと増えてほしいですね。fairなサービスを標榜(ひょうぼう)しているのに、社内に対してfairでないのは矛盾してますからね。
そういうfairな企業が増えれば、みんなが生きやすい国になりますよね。プラス、多分いずれは移民のみなさんに来てもらわないと維持出来ない国になっていくので、受け入れの体制としてもできるだけfairにするという思考が広まれば、軋轢の度合いも低くなりますよね。だからLGBTから見えてくる日本の可能性って、色々あると思うんですよね。

Q. お話をうかがっていると、その観点が多分、当事者に欠けているのだなと思いました。私達を財布と見ているのではないかという意見はどうしてもでてきてしまうのですが、そういうレベルの話ではなくLGBTというフィルターで物事(社会)を変えて行くっていう観点で、僕ら当事者が主張して行くべきだと思いました。そうするときに必要なものって何だと思いますか?

できる、できないを冷徹(れいてつ)に見極める能力が必要だと思います。実利的に厳しく見極める。それは相当ハードル高いことですけどね。
そして見極めたら、fairでない会社をボイコットするよりも、fairにやっている会社を育てた方がいいですね。

Q. 最後に、LGBTの人たちへ一言お願いします。

もし苦しいと感じている事があるなら解放したほうがいいと思います。でもそれは、隠すのが苦しい、公表するのが苦しい、両方ありますよね。どういう場にいるのか、周りがどうなのかで大きく変わりますしね。Sympathy(シンパシー=同情)よりempathy(エンパシー=共感)なのか、頑張って下さいというのもおかしいし……、だから、あなたはあなたのままで素晴らしいし、よりよく生きやすい道をみつけること、それしかないですね。
道を既に見付けられた方はそのまま人生を楽しむために頑張りましょうだし、それを模索している方は一日も早く自分の中で腑(ふ)に落ちる状況になることをお祈りしています。

Q. ちなみに、ジョン・カビらさんがご自分の人生で腑に落ちる状況になったのはいつでしたか?

まだ探していることはあるんでしょうけども、極めて僕は幸運な男だと思います。周りの皆さんに恵まれて、家族にも恵まれて、生きにくいという状況はあまり経験していないですね、ありがたいことに。
後はもう自分の能力の限界が問題ですよ。本当はもっとできるだろうってのはいつも感じていますけどね(笑)

ジョン・カビラさん、そして制作をご担当された皆様がLGBTに関して真剣に考えていただいている事がうかがえるインタビューでした。この皆様がどのような番組を作られたのか、ご興味のある方は、ぜひ11月15日(日)午前8時25分、NHK総合で放送される「サキどり↑-LGBTと切り拓く未来-」をご覧下さい。
ご協力頂いたジョンカビラさん、NHKのみなさま、ありがとうございました!

NHK総合「サキどり↑」公式サイト
http://www.nhk.or.jp/sakidori/
sakidori_LGBT

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いたる

LGBTに関する様々な情報、トピック、人を、深く掘り下げたり、体験したり、直接会って話を聞いたりしてきちんと理解し、それを誰もが分かる平易な言葉で広く伝えることが自分の使命と自認している51歳、大分県別府市出身。LGBT関連のバー/飲食店情報を網羅する「jgcm/agcm」プロデューサー。ゲイ雑誌「月刊G-men」元編集長。現在、毎週火曜日に新宿2丁目の「A Day In The Life」(新宿区新宿2-13-16 藤井ビル 203 )にてセクシャリティ・フリーのゲイバー「いたるの部屋」を営業中。 Twitterアカウント @itaru1964