自民党、LGBTのプロジェクトチーム発足
産経ニュースによると、自民党は1月14日、レズビアンやゲイなどのLGBTに関する課題を検討するプロジェクトチームを近く党内に設置する方針を決定した。稲田朋美政調会長は同日の政調幹部会で「人権侵害や差別はなくさなければならない」とプロジェクトチームの設置を提案、了承された。プロジェクトチームでは、LGBTへの差別をなくす法制度のあり方についても検討する方針だ。
渋谷区や世田谷区の同性パートナーシップを皮切りに、様々な自治体がLGBTに関して動き始めている。ここでは、自民党はLGBTに関してどのような意見を持っていて、どのような動きが予測されるのか?という問いに関して解説する。
自民党:党の意見が変化している?
以前の選挙時点では固まっていなかったLGBTや同性婚に関する意見
衆議院選挙などで毎回各党にLGBTに関して政策調査をしているレインボープライド愛媛によると、2014年の衆議院選挙にて自民党は以下のような回答をしている。
Q. 人権問題として同性愛者や性同一性障害者らの性的少数者について取り組んでいくことをどう思われますか?
A. 人権問題として取り組まなくてよい。
Q. 性的少数者の人権を守る施策の必要性についてはどう思われますか?
A. 性同一性障害者への施策は必要だが、同性愛者へは必要がない。
Q. アメリカでは最高裁で同性婚を支持する判決が出されました。(中略)性的少数者も愛するもの同士で人生を共に歩んでいきたいと考えますが、日本ではどのようにしていくべきだと考えますか?
A. こうした制度は異性間のものであるべきで特に必要ない。
その他、”無回答”や”答えられない/わからない”といった回答が多く、”LGBTや同性愛に関しては党内で議論をしたことがないのでわからないが、平成15年に自民党主導で「性同一性障害者の性別の取り扱いの特例に関する法律」を成立させた経緯もあり、これからも性同一性障害者の人権を守っていきたいと考えています。”と話している。
2014年の衆議院選挙のときには、LGBTに関して党内議論がなされておらず、あまり党内意見が固まっていなかったため当時の法律がどうなっているかをもとに回答し、法律で決められていないことに関しては “わからない”と回答した、と見ることができるのではないだろうか。
幹事長や首相からは渋谷区同性パートナーシップや同性婚に対して慎重な意見
2015年に渋谷区同性パートナーシップが施行された際に、自民党の幹事長及び首相は以下のように語っている。
自民党の谷垣幹事長は記者会見で、「自分は、伝統的な価値観の中で育っており、自分の価値観に従って述べてよいかどうか、非常に迷うところだ」と断わりつつ、「家族関係がどうあるかというのは、社会の制度や秩序の根幹に触れてくるものだ」と指摘しました。
そのうえで谷垣氏は「仮に法律ができているならともかく、法律ができていないときに条例だけで対応していくことは、社会生活を送る制度の根幹であるだけに、いろいろな問題を生むのではないか」と述べ、懸念を示しました。
Huffington Post – 同性婚、谷垣禎一氏の「条例だけでは問題」との発言に 「国が議論しないから」という意見も
(安倍)首相は「同性婚を認めるために憲法改正を検討すべきか否かは、我が国の家庭のあり方の根幹に関わる問題で、極めて慎重な検討を要する」とも述べた。
自民党のトップ層である安倍首相や谷垣幹事長は同性婚に対して完全に反対というわけでもなく、かといって全面賛成でもないという曖昧な回答をしている。党内でも同性婚などLGBTに関する意見がまとまっていない状態で同性婚に対する意見を質問されたために、本人たちは明確に回答できなかったのだと筆者は推測する。
同時に党内行われていた、草の根的な「性的マイノリティの課題を考える会」
トップ層がLGBTに関して曖昧な回答をしている中で、自民党内ではLGBTに関する草の根的な運動が高まってきているようだ。自民党内には2013年4月1日から続く、「性的マイノリティの課題を考える会」がある。馳浩議員が会長で、牧島かれん議員、福田峰之議員、橋本岳議員などが所属。明智カイト氏のインタビューでは、牧島かれん議員は以下のように答えている。
「アメリカ在住中から多くのゲイと身近に接してきました。特にアメリカで経験した9.11のときには、たくさんのLGBTの人たちが同性パートナーや家族を失って苦しんでいました。その姿を見て、家族を失う悲しみはみんな同じだと感じました。
日本に帰国した後もLGBTの人たちに関わる機会が多くありました。日本でもLGBTの人たちがいろいろな課題をたくさん抱えていることを知り、解決したいと思いました。政治家としてLGBTの施策に関して「課題放置」したくないと考えています。国会の中では勉強会の事務局として頑張りたいです。」
SYNODOS – 「LGBT当事者の声をもっと聞きたい」――国会議員へのLGBT施策インタビュー
牧島かれん衆院議員(自民党)×明智カイト
また今回の自民党内で発足したLGBTプロジェクトチームの設置を提案した稲田朋美政調会長だが、GQ JAPAN が2014年10月に公開した記事によると、稲田政調会長が保守派の組織や在特会との関係性を持っていたことを指摘されている。
稲田朋美政調会長は、ネオナチを標榜する団体代表とこれまた記念写真に収まっていたことがスクープされ、在特会系の団体から政治献金を受けていたことも報道されている。
しかし、米のシンクタンクにて講演した際にLGBTに関して以下のように語っており、保守派政治家という立場を変えないながらもLGBTヘの偏見をなくすべきだ、と主張している。LGBTへの偏見をなくす政策, というとリベラルな思想を持つ政治家から意見があがる印象があるが、保守派ではあるがLGBTヘの偏見をなくす政策はとるべきだ、という意見のようである。
「すべての人を平等に尊重し、自分の生き方を決めることができる社会をつくることに取り組みます。個人は生まれつきさまざまな特徴を備えています。そのことを理由としてその人が社会的不利益や差別を受けることがあってはなりません。保守政治家と位置付けられる私ですが、LGBT(性的少数者)への偏見をなくす政策をとるべきと考えています」
今後、自民党内でのLGBTに関する議論が本格的に始まる可能性
これらのことから言えることは、以下の通りである。
・自民党はLGBTに関して党としての意見を決めていなかった。そのため、同性婚などに関する意見を聞かれてもうまく答えられないか、その時の法律に基づいた回答しかできなかった。
・セクシュアルマイノリティに関する草の根的な勉強会が任意で行われているなど、党内ではLGBTを認めるべきだ、という意見があがっていた。
・今回、自民党として任意の勉強会ではなく、正式にLGBTに関するプロジェクトチームが発足することを党として合意した。LGBTに関して自民党としての意見を決めるため、今後LGBTに関する議論が自民党内で行われることが予想される。