“They”が2015年のワード・オブ・ザ・イヤーに選ばれる
英語ではジェンダーを特定しない人を指す代名詞として、単数形の“They”が用いられることがある。その“They”が、300人以上の言語学者、辞書編集者、文法学者らによって、2015年のワード・オブ・ザ・イヤーに選ばれたという。
性別に中立な単数代名詞としての“They”
“They”や“Their”はこれまでも数百年にわたって、ジェンダーを特定しない場合に人を説明する代名詞として用いられてきた。例えば“Everyone does their best.(みんなベストをつくしている。)”という文章では、Everyone(みんな)に対応する代名詞としてTheirが用いられている。
しかし、最近になって“They”の使用が急増した背景には、自分を男女の二元論のジェンダーに分類しないという立場や、そのように分類されたくないと感じる人たちにより、単数形の性別に中立な代名詞として使用する機会の増加したことが考えられるという。
「伝統的な“he”や“she”の二元論を乗り越えてきている」
Business Insiderに、アメリカ方言学会・新語委員会会長のベン・ジマー(Ben Zimmer)氏へのインタビューが掲載されている。
「最近になって、代名詞について、個別の代名詞を選択する人たちについて、それが個人の選択の問題だとした上で、たくさんの議論がなされるようになってきた。」
「単数形の“They”がその中心にあるというのは、興味深い変化だ。」
「それは人々がジェンダーアイデンティティやセクシャリティを考える方法についての何かを表現しており、ひょっとしたら、言語を通じてアイデンティティを表現する新しい方法を受け入れるような、さらなる寛容性がそこに現れている。」
ジマー氏は、メディアが“he”や“she”では違和感を覚える人たちを表すものとしてTheyを使用してきたことも指摘しているとした上で、
「伝統的な“he”や“she”の二元論を乗り越えてきている。」
と話した。
性別に中立な敬称“Mx(ミクス)”
言語という文脈で、男女の二元論にとらわれない表現はほかにも見られる。
例えば、“Mr”や“Ms”、“Mrs”ではなく、性別に中立な英語の敬称として“Mx(ミクス)”が、昨年『オックスフォード英語辞典(Oxford English Dictionary)』に掲載されている。
“Mx”はこの辞典で以下のように定義されている。
名詞:ジェンダーを特定されたくないと感じる人物の姓の前に用いられる敬称。
(n: a title used before a person’s surname by those who wish to avoid specifying their gender.)
日本語には三人称代名詞の「彼」「彼女」や敬称だけではなく、一人称でも性別に基づいた代名詞が数多く存在する。日本語で「彼」「彼女」と並ぶような、性別に中立な代名詞や敬称ができるとしたらどのようになるのだろうか。