台湾の婚姻平權(婚姻平等の権利)を巡る動きをご紹介する【台湾:婚姻平權を追う】。憲法解釈の結果、2019年5月末までに同性婚合法化が確定した台湾。アジアの歴史に残る重大発表から1ヶ月あまりが経過していますが、すでにいくつか新しい動きが出てきています。今、台湾ではどのような変化が起こりつつあるのでしょうか。
同性伴侶註記(同性パートナーシップ条例)システムの全国共同運営が開始。
「同性伴侶註記」は、日本の「同性パートナーシップ条例」にあたる制度。登録によって、主に医療機関等でパートナーとして一定の権利が認められるものであり、台湾でもすでに多くの同性カップルに利用されています。
同性婚の合法化完了に先立って、7月3日より同性伴侶註記システムの全国共同運用が実現。台湾に22ある県市のうち18県市が加入し、県境を越えてのデータベースの共用が始まっています。残りの4つの県(花蓮、台東、雲林、澎湖)については、未だ制度への加入が表明されていないものの、これらの地域に住む同性カップルも近隣県での登録が認められることに。実質的には台湾全国すべての同性カップルが利用できる制度となり、日本を上回るスピードでの普及が進んでいます。
同性カップルへの法律適用項目の検討始まる。
台湾の行政を司る行政院でも新たな動きが。5月24日の憲法解釈結果発表から間もなく、行政院では「同性婚姻法制研議專案小組」が発足。すでに立法委員主導にて提案され、立法院での第一段階の審議を通過している「民法改正法案」に加えて、行政院版の同性婚合法化に向けた法案の提出を目指して討論が行われています。
また、同性婚合法化の準備が整うまでの期間においても、同性カップルの権利拡大を進めていくため、現行の法律において直ちに対応可能な項目については、条項内容の加筆等を行った上で随時適用認めていく方針に。第一段階として進められているのが、同性パートナーに対して「家屬」の身分を認めるというもの。「家屬」は法律上の「家庭の構成員」にあたり、血縁関係の有無は関係なく認められるのが特徴です。同性パートナーシップ条例への登録を終えたパートナーには「家屬」としての身分を認める方向で動いており、早ければ7月中にも実現される見通しとなっています。
內政部這次研議讓同志伴侶可以登記互為「家屬」,主要源自於《民法》第4編第6章對「家」的定義。《民法》雖在第1122條規定,「稱家者,謂以永久共同生活為目的而同居之『親屬』團體。」但也在第1123條第3項指出,「雖非親屬,而以『永久共同生活為目的同居一家者』,視為家屬。」
出典:【獨家】修法前內政部依《民法》 同性伴侶最快7月可登記為「家屬」|上報 UP MEDIA
内政部が今回、同性パートナーを互いに「家屬」として登録できると解釈した主要な理由として、《民法》第4編第6章の「家」に関する定義を挙げている。《民法》の第1122条の規定には「家とは、永久的な共同生活を目的として同居する『親屬(血縁関係または婚姻関係にある者等)』の一団をいう。」とあるが、第1123条第3項には「親屬ではなくとも、『永久的に共同生活を目的として同居する者』は、家屬とみなす。」と記されている。
訳:Kazuki Mae
しかし、婚姻関係のパートナーに認められる「配偶(配偶者)」の身分に比べて、「家屬」に認められる権利はあまりに少ないとの意見も。憲法解釈の結果においても「非合理な差別待遇」との指摘が出ているにも関わらず、なぜこのような差が生まれなくてはいけないのかと、行政院の政策に対して疑問を投げかける声も、少なからず上げられている状況です。
国際同性カップルへの台湾居留承認は?
パートナーの一方が台湾国籍ではない「跨國同志伴侶(国際同性カップル)」の問題にも踏み込みつつある今回の討論。日本と同じく、現状の同性パートナーシップ条例の法的効力は非常に限られたものとなっており、外国籍パートナーに台湾居留が認められる段階には至っていません。上記のように、台湾人パートナーの「家屬」として認められることになった場合でも、「配偶者」ではないために居留ビザを申請する権利は認められず、この点において(婚姻関係にある)異性カップルとは大きな隔たりが見られます。近年では、同性婚がすでに認められている国も増えつつありますが、仮にパートナーの国で婚姻手続を済ませていたとしても、まだ同性婚合法化が完了していない台湾においては「配偶者」として認められない状況が続いています(日本も同様)。
また、同性婚合法化が認められた後、日本人の場合は「單身證明(独身証明)」があれば台湾人パートナーと台湾にて結婚することが可能になりますが、現行の規定ではあらゆる国籍のパートナーが自由に婚姻制度を利用できるわけではありません。中国やタイ、ベトナムなど、台湾政府によって定められた21か国出身のパートナーは、台湾にて結婚手続に入る前に、母国にて事前に「結婚証明」を取得することが条件として定められています。母国にて同性婚が認められていないこれらの国々では、この結婚証明が得られない可能性が高く、合法化が完了した後も婚姻制度を利用できないのでは、との議論が巻き起こっています。政治的要因も絡んでくる複雑な問題ではありますが、これからどのように対応されていくのか注視していく必要があるかと思います。
どのような形で同性婚は合法化されるのか?今後の動きに注目。
同性婚が認められない現行の法制度に違憲判決が出て1ヶ月あまり。判決発表をきっかけに、これまで停滞気味だった台湾の同性婚を巡る審議は少しずつ、確実に進み始めています。「婚姻平權(婚姻平等の権利)」に向けてどのような形を採ることになるのか、具体的な内容については未だ発表がありませんが、また新たな動きがあり次第お伝えしてまいります。