ハワイなら同性婚ウェディングはできる!
アメリカでは現在50ある州のうち30の州で同性婚が認められており、ハワイはアメリカ国籍を持たない外国人同士での同性婚が可能な州の一つ。日本人同士によるアメリカでの同性婚は、日本国内においては法的な効力は無いものの、アメリカ国内(および同性婚が認められている国・地域)においては異性間カップルと同様の法的な権利が約束される。
今回はハワイで挙式をしたあるゲイカップルのお宅にお邪魔し、その決断に至った経緯をお聞きした。
「離ればなれになる選択肢は考えられなかった」
――そもそも、なぜ同性婚手続きによるMarrige Certificateの取得や、フォトブライダルをしようと思われたのですか?
Mさん: 彼と一緒にアメリカに行くためですね。去年、僕が勤めている会社から、僕にアメリカ転勤の話が出たんです。それは長期に渡って向こうで働くというものだったんですけど、魅力的なポジションで働けるし、可能ならばぜひ行きたいと思ったんです。ただ、その頃には僕たちはもう2年お付き合いしていて、一緒に住んでもいたんです。離れ離れになる選択肢は考えられなかったので、彼も連れて行けるならば、ぜひお受けしますと。そのことを、カミングアウトしているアメリカ人の上司に話してみたら、アメリカ本社の人事に話を通してくれて、「外国のどこでもいい。二人の婚姻関係を証明する書類を何かしら取得してもらえれば、彼のビザも会社がスポンサーになれる」と言われたんですね。
――では、以前から結婚をしたいと考えられていたというわけではないんですね。
Mさん: 全くなかったですね。全ては彼をアメリカに連れて行くためだったので。そのことがあって初めて同性婚のことを考え始めました。ネットで調べていくうちに、アメリカで同性婚をすることも可能ではないかと考え始めました。ただ、片方がアメリカ人でもう片方が日本人といった事例はあったんですが、どちらも外国人である場合の同性婚については、確実に参考にできるような事例を見つけることはできませんでした。それらしき情報もいろいろあるけれど、何が正しい答えなのかもわからない。そこで、たまたま見つけたLetibeeさんであれば、海外での同性婚についても何かご存知かと思い、コンタクトを取ってみたんです。
――式を巡って衝突などはありましたか?
Mさん: 特になかったですね。着るスーツについて意見が合わなかったことはあったけど、他はあまり。フォトウェディングについては、撮影場所なども含めてプランナーさんにほぼお任せだったので。
――式を挙げてみて、良かったと感じることは他にありますか?
Mさん : 特にこれが変わったというのは正直ないですけど、二人でスーツを含めた衣装周りの準備をしていったことは楽しかったですね。あと、指輪を作ったことを含めて、二人でお揃いのものを作ることがこれまでは少なかったので、今後の思い出となるものを残せたことは、すごく良かったなと思います。
Sさん : 周りからの反響があったんです。みんな祝福してくれて、それは嬉しかったですね。
――ご両親にはカミングアウトされてますか?
Mさん : していないですね。ただ、薄々気づいていると思います。
Sさん : 僕もちゃんとは伝えていませんが、気づいていると思います。
Mさん: 相手のご両親にはお会いしたこともないんです。いつか挙式のことも言えたらな、とは思いますが、焦ることはないかと。
――Sさんにとって、アメリカに付いて行かれることはかなり大きな出来事だと思うのですが、やはり迷われたのでしょうか?
Sさん : あまり迷わなかったですね。早く決めなきゃいけなかったですし、彼がすごく行きたそうだったから。それに、彼の両親はもう若くないし、行くなら今しかない、と。
Mさん : 彼の日本でのキャリアは中断してしまうわけですが、資格があること、また職種的にも、日本に戻ってきてからの再就職もそれほど困難ではないだろうという点は、彼に決断をしてもらうにあたっては大きかったと思います。アメリカでその資格を使って仕事することはできないものの、(彼は英語が話せないので)英語を勉強してもらうには非常に良い機会なのかと思ってます。まだ若い20代後半の今のうちなら、こういった経験をしてもらうのもありかと。
――ご友人にはオープンなのでしょうか?
Mさん : ゲイの友人はたくさんいて、そこでは当然オープンですね。
Sさん : 僕たちはよく自分たちの家でパーティを開いて、友達を呼ぶんですよ。だから共通の友人もたくさんいます。
――職場でもオープンですか?
Mさん : 僕はつい最近になって伝え始めました。
Sさん : 僕はしていません。
――Sさんは、アメリカに行く理由を職場の方々にどう説明されているのでしょうか?
Sさん : 本当のことは言ってないですね。自分のスキルアップのため、と伝えています。
――Mさんの会社ではパートナー措置を取ってくれたと思うのですが、やはり外資系企業というのは日系企業よりもダイバーシティ制度が進んでいるものなのでしょうか。
Mさん :アメリカの本社では進んでますね。LGBTのネットワークもあるようです。ただ、日本支社は社員の9割9分が日本人ですし、周りにLGBTがいるってことすら知らない人が大多数なのではないかと思います。外資系と言っても様々で、友人の勤める銀行や証券会社などは日本でも進んでいるようですが、僕のところは残念ながらあまりありませんね。
――ぜひ制度の整備が進んで欲しいですね。
Mさん : そうですね。ゲイであることって仕事の上じゃ二の次ですものね。ちゃんと仕事が出来るなら関係ないですし。
――今後LGBTの活動をしていくことは考えていますか?
Mさん : 啓蒙活動的なことは必要だとは思うんですが、僕自身が周りを巻き込んだ何かを起こして行きたい、とは正直なところ特に考えていません。ただ、今回の我々の同性婚手続きについては、海外での同性婚という選択肢もあることを知ってもらうために重要だと考えたので、インタビューをお引き受けした次第です。
――今後、もし日本で同性婚が認められたとしたら、いかがなさいますか?
Mさん : 今回行ったアメリカでの同性婚手続きおよびフォトブライダルと、日本で結婚するというのは、また別の話ですね。日本で結婚するとなったら彼も職場に報告しなくちゃいけない。僕自身は、働いている会社が非常に日本的な外資とは言いつつも、やはり外資なので、典型的な日本の職場よりはカミングアウトしやすい環境だったんですね。だから時間をかけてカミングアウトすることができました。でも彼の職場はそうではない。なので、結婚をきっかけに職場でのカミングアウトを強制するようなことはしたくないと思ってます。カミングアウトは本人の準備ができた状態で、本人がしたいと思った時にすべきで、強制されるべきではないと思っているので。そういった点からも、今回のようにアメリカで同性婚の手続きをすることは、日本でのステータスが変わらないままであるから、僕らにはちょうどよかったんです。
――数年間アメリカに渡った後、日本には戻って来られるのでしょうか?
Mさん : 帰って来ようと考えてます。僕たちは食べるのがすごく好きなんですね。世界を周ってみて、日本のものが一番美味しいと思いました。まあ、アメリカでの生活がすごく良かったら考えが変わるかもしれませんが。
Sさん : 僕も戻って来たいと思ってます。持っている資格を活かして、将来開業したいと考えているので。
――最後に、何かメッセージや感想などをお願いします。
Sさん : 僕は周りに祝福してもらえたことが嬉しかったです。Twitterでフォトブライダルの写真をアップしたら、自分のフォロワーは少なかったんですけど、リツイートで拡散されていくなかで「おめでとう!」とか「感動して泣いた!」とか、知らない人からも返信が来たりして。彼に言われてツイートは消してしまいましたが、挙式に興味ある人って多いんだなと思いましたし、とても嬉しかったです。
Mさん : アメリカでの婚姻手続きは、州によって双方が独身であることを証明する書類を出身国で取得し、提出を求められることもあるみたいです。日本では、海外で同性婚をすることを目的として独身を証明する書類を入手するのは容易ではないと聞いてますが、僕たちが行ったハワイではそういう書類を求められることもなく、本当に手続きが簡単でした。日本では認められない婚姻関係ではあるものの、僕と同じようにアメリカでの婚姻関係が必要な人や、何かしたいと思われている方にはお勧めかもしれませんね。あと、ハワイで歩いている時、「おめでとう!」と現地の方が声をかけてくれたんですね。受け入れる風土がハワイにはあるようです。
インタビューを終えて
『日本でのステータスが変わらないままであるから、僕たちにはちょうどよかった』
「結婚」というと、やはり周りに向けて正式に宣言する場というイメージが強い。だが、お二人のお話から、「婚姻」とは本来は二人のためのものであっていいし、同性婚だからといって何かを変えたり、社会に対して声を上げなければと意気込んだりせずに済む選択肢もあるのだと学ばせていただいた。
お二人のご自宅には、フォトブライダルで撮影された写真が多く飾られている。「あんなに引き伸ばしたやつも飾ってあるんですよ(笑)」と、ベッドの脇には1メートルほどのフレームに収められたサンセットの写真。
広く周りにカミングアウトしているわけではないものの、お二人は穏やかに、自分たちのペースで、幸せな生活を築いておられた。