脱北して初めて同性愛とは何かを知った男性
Guardianに北朝鮮から逃れたある男性のインタビューが掲載されている。彼は、北朝鮮を出て初めて“同性愛”とは何かということを知り、また自分がゲイであることに気付いたのだという。
北朝鮮におけるLGBTの権利
北朝鮮では、金一族への個人崇拝と絶対服従による支配体制が敷かれており、現在は金正恩(キム・ジョンウン)氏が3代目の最高指導者に就任している。
北朝鮮における人権侵害の実態を取り上げてみても、LGBTの権利に光が当たることはまずない。しかし、国の役人たちはホモフォビアに対して全く認知していないわけではないという。
脱北して初めて同性愛という言葉を知った男性
北朝鮮出身のチャン・ヨンジンさんは、同性愛という言葉は耳にしたことがなく、自身の妻に対して性的な欲求を感じたことがなかったため、混乱していたという。彼は北朝鮮を出て韓国へ逃げこんではじめて、ゲイという言葉に出会い、自分がゲイであることが分かったという。
チャンさんは現在、自身の体験記を執筆しているという。
「北朝鮮は共産主義のシステムが敷かれています。閉ざされた社会です。周りの世界がどのようになっているのかを知ることができません。」
「私は自分が同性に魅力を感じることを、異常なことだと思っていました。しかし悲しいことに、自分がゲイであることを知ることなく生きてきたのです。」
「(北朝鮮には)同性愛という概念はありません。そのことへの関心が全くないのです。」
「開かれた社会では、人々は少なくとも、異なるセクシャリティに対しての意識はあると思いますが、北朝鮮に希望はないのです。」
軍隊での男性同士のつながり
その一方で、チャンさんは、北朝鮮の男性の間には何か特別のつながりがあるのではないかと指摘している。
「しかし、北朝鮮の男性は軍隊で長い時間を過ごし、同性間での体の接触も頻繁にあります。そのため、彼らは特別な精神的つながりを経験しています。」
「これは、すべての男性がゲイだと言っているわけではなくて、むしろ、特別な仲間関係で結びついているのです。」
脱北後の活動と彼の希望
チャンさんは、自分自身の言葉ではっきりと意見を伝えたいと話すが、韓国内でのLGBT運動に参加するのは、「きわめて政治的なものだった」ため、避けてきたという。
彼は、新しい土地でもまた、完全たるLGBTの平等からは程遠いと話した。
「北朝鮮は、人間の自由を制限し、服従させています。(でも、)韓国でも同じです。民主主義社会であるといえども、LGBTの人々は差別され、迫害されています。」
彼は、いつの日か北朝鮮がLGBTの権利を受け入れてくれることを願っているという。
「北朝鮮はLGBTの権利について、しっかりと認識しようとしていません。しかし、状況は変わるかもしれません。」
「例えば、北朝鮮はかつて、女性がレスリング競技に参加していないことで米国に批判されていました。」
「現在では、北朝鮮の女性もレスリングをします。その意味では、北朝鮮社会でも、ゆっくりと歴史が流れているのです。」
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