“やらせろ”と言われ殴られたXジェンダーが警察に相談してみた

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「もしかして、犯罪にあった・・・?」と思ったら。

皆さんには「犯罪にあった?」と思いつつ、長い間人に言えなかったことはありますか?
今回は筆者がセクシュアリティを理由に警察へ届け出なかった出来事と、最近やっと向き合う事が出来たのでお話しいたします。

私も警察に行ってみた

皆さん、当サイトの「ゲイアプリで、ゲイに金を盗まれた。」という記事をお読みになったでしょうか。執筆したじょんてぃさんは、ゲイアプリで出会った方との出来事を警察で話し、被害届を出しました。記事を読んだ翌日、私は交番に行きました。警察に話したかったけれど、これまでどうしても足を運べなかった出来事があったのです。

日常的に受けていたセクハラ。「子どもを作らないか?」

私は女性に生まれたXジェンダーです。大学1年次は「性同一性障害」の証明書を取ろうと通院していました。胸が目立ち、男性装に不都合であったため手術をしたかったのです。胸を潰して目立たなくさせる「ナベシャツ」を購入したこともありましたが、両親ゆずりでガタイが良いためか、胸だけでなく、どうしても苦しい。一生着るのは無理だと思いました。Xジェンダーでは性別適合治療などができないことなどから、「FTM」と思い込むようにしていましたが、悩んだ末、Xジェンダーとしての自分を認めました。現在は、金銭面などの理由もあり、通院を中断しています。

話は元に戻ります。大学入学当時、1人暮らしをしていた近所の方々に可愛がってもらい、ほぼ毎晩皆で食事をしていました。その1人であるおじさん(以下Aさん)は、「(筆者)、子供を作らないか?」と言いながら太ももを撫でるなど、明らかなセクハラをしてきます。しかし「いざとなったら、周りの人々が守ってもらえるだろう」と考え、軽く怒る程度にとどめていました。今となっては後悔していますが、「女性らしさをサービスすることは、ある程度のマナーなのだろう」という考えがありました。ある日セクシュアル・マイノリティを(当時は「FTM」を)カミングアウトして、男性装を始めました。近所の人々は、カミングアウトを全く信じないですが、それでも交流は続きました。

ついに訪れてしまった「その日」

ある日の宴会の帰り、Aさんとその奥さんの3人でタクシーに乗っていたときのことです。
おじさんAは、これまでにないほど酔っていました。「(筆者)、お前は馬鹿だ!やらせろ!」と叫び、拳を振り下ろしてきます。私は(肩のあたりだったように記憶していますが)殴られました。届いたのは1〜3発ほどだったと思います。Aさんは、静かになったり「馬鹿!」「やらせろ!」と暴れたりを繰り返しました。奥さんが壁になって、必死に守ってくれました。私がタクシーから降りるとき奥さんは確か、「この人(Aさん)は人を見下したいのよ。馬鹿にすることで自分を保っているのよ」と言いました。

周りになんと思われるか、怖くて警察に話せなかった

当時、セクシュアル・マイノリティとして生活を始めたばかりの出来事でした。「男に襲われて傷つくなんて。セクシュアリティの話は嘘だったり思い込みであって、ただ精神が不安定な女の子だ」と警察や大学、家族から、言われたら・・・。そう思った私は、この出来事を家族にも友人にも大学にも、そして警察にも話さなかったのです。Aさんとは、また翌日だったか「もう、ああいうことはしないでね」と近所の人々のいる中ではっきり言いました。その後も顔を合わせれば普通に挨拶をしました。私は自分が傷ついていると、全然自覚していませんでしたが、どんどん精神的に不安定になり、この時期トラブルが多かったのです(いわゆる「中二病」的言動が増え、周囲から相手にしてもらえなくなったり)。1ヶ月後に引っ越し、近所の人々とは関係を断ちました。(その秋だったか、私はなんと「もう来ません」という挨拶回りをしました。Aさんはその放課後、どういうわけか大学の校門の外に来ていて、笑顔でこちらを見ていました。私は無視して自転車で走り去り、それきり会っていません。)

やっぱり、私にも警察は優しかった

3年経った現在、“ゲイアプリで、ゲイに金を盗まれた。”の記事に背中を押され、交番に向かいました。
担当してくださったのは30歳くらいに見える男性の警察官でした。話しているうちに、涙が出てきてしまいました。「Xジェンダー」というセクシュアリティを誰かに説明しても、多くの方は「Xジェンダー」という単語を知りません。そのためか「誰でも色んな面を持っているのです。それはセクシュアリティではないですよ。考え過ぎですよ」と言われることもありますから、「性同一性障害のようなもので、将来的には手術を考えています」と切り出し、「Xジェンダー」の単語は言えませんでした・・・。
一通り話をすると、「(筆者)さん、どうしますか?3年前ということですが…」と聞かれました。「あれが、犯罪にあたるのかということを伺いたいです。」と伝えたところ、「明らかに、暴行です。」と言われました。私は、被害届を出すことはしませんでした。

勇気を出して「警察に相談する」ことの大切さ

3年も前のことですし、カミングアウトの相手を選ぶことで、そういったセクハラ的な出来事は今は防げるようになりました。「セクシュアリティを理由に被害届を出す勇気がない」ということもあると思いますが、「実際に罪にあたるのか」ということは、家族や友達と話しているだけでは分かりませんから、放置しておくと私のように、ストレスになってしまいます。自分だけで苦しむのではなく、勇気を出して、毅然と警察に打ち明けてみてください。自分は悪くない、自分のは間違ってない。そう思えるようになるだけでも、警察に相談する意味があります。

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