青年海外協力隊を終え、ソーシャルワーカーとして働くレズビアンに直接話を聞いてみた|働くLGBTインタビュー

永竹未奈さん1

株式会社LITALICOで働く永竹さんにお話を伺ってきました!

株式会社LITALICOで社会福祉士として働く永竹さん(30代、レズビアン女性)に、ご自身のセクシャリティやソーシャルワーカーという現在の職業につくまでの経緯、そして職場でのカミングアウトなどについて、お話を直接伺ってきました!

セクシャリティについて

セクシャリティを自覚したきっかけは何でしたか?

― 最初に自覚したのは大学1年の時です。東京国際レズビアン&ゲイ映画祭に行ったのがきっかけでした。当時写真部に所属していて、そこの先輩がパンフレットを持ってきてくれて「行ってみたら?」って言われたんです。

実際小さい頃からそうだったとは思うのですが、映画祭に行ってみて、そこで「ああ、いいんだ。」って思ったのが最初だと思います。最初は確か一人で行ったのですが、当時の映画祭はお客さんがスパイラルホールの3階から1階まで並んでいる状態で、そこには手をつないでいるゲイカップルやラブラブなビアンカップル、日本だけではなく世界中から本当に沢山の人が集まっていました。当時まだ私は10代で二丁目にも行ったことがなくて、こういった人たちに会うのが初めてでした。そこが一番大きかったかもしれません。

その後、映画祭にスタッフとして関わるようになり、その活動は今でも続けています。また、学生時代は映画祭にブースを出していたHIV関連のボランティアの活動も続けています。まさにこの映画祭がきっかけですね。

セクシャリティのことで悩んだ経験はありましたか?

― レズビアンに対する社会のイメージがあまりよくないと感じていたので、すごく悩みました。だから当時はフェミニズムから入っていって文献にあたって情報を得たり、勉強をしたりしていました。

家族にひどいことを言われたこともありました。カミングアウトしたいとは思っていなかったのですが、写真部の活動でセクシャリティをテーマに撮っていたこともあり、望まない形で伝わってしまいました。それでも嘘は付きたくなかったのできちんと話はしたのですが、いいことは何一つ言われませんでした。兄2人とは現在でもあまり話しませんが、母親とはそれから何度も話をしました。今は応援してくれているというわけではなくとも、理解はしてくれていると思います。私のパートナーと一緒に食事をすることもできるようになりました。

だから現在は、セクシュアリティのことで悩むことはなく、特に生活をする上で支障もないです。ただ自分のパートナーが女性であるっていうだけだって思うようになったので、自分の中でセクシャリティが占める割合っていうのはそれほど大きくありません。家族も姉とは仲がいいですし、パートナーの両親にもパートナーとして受け入れてもらっています。でもここに行き着くまでは、とても苦しく長い道のりだったと思います。特に学生時代は、自分の中でセクシャリティっていうものはとても大きく、辛い時期だったと思います。

ソーシャルワーカーという職業を選んだ理由

なぜソーシャルワーカーというお仕事に就いたのですか?

― 大学卒業後、20代の頃に中南米のニカラグアとコロンビアに青年海外協力隊として派遣されたのがきっかけです。ソーシャルワーカーという職業は日本ではあまり知られていませんが、アメリカや中南米ではとても権威ある職業なのです。現地で働くソーシャルワーカーたちが本当に素晴らしかったのと、同期の隊員も含めソーシャルワーカーが結構いました。そういった中で、ソーシャルワーカーって素晴らしい仕事だなと魅力を感じて、帰国してから社会福祉士の資格を取得して、そして今に至ります。

でも、協力隊になった経緯を考えてみると、やっぱり自分のセクシャリティが関係しているのだろうなと思います。派遣先でもHIVの予防啓発活動などを行っていましたが、それは学生時代に映画祭を通じて知ったHIVのボランティア活動をしていたからで、それがなかったら協力隊にも参加できていないと思います。

またレズビアンであったとしても、たとえばもし私の家族が「セクシャリティなんて関係なく、あなたのままでいいよ」って言ってくれるような家族だったら、おそらく全然違う人生を歩んでいたと思います。人の痛みが分かるというか、ひどいことを言われて、すごく傷ついたことで、「他の人には同じような気持ちを味わってほしくはない」という思いが、大きな原動力となり活動してきた部分があるのだと思います

帰国後の就職について

永竹未奈さん2

就職活動をする時にカミングアウトはしましたか?

― 前の職場の時も転職の時も、特にする必要がないと思ったので、全くしませんでした。異性愛者の人も「自分の恋人が誰で」とか、「自分と一緒に住んでいる人が誰で」とか、言わないですよね。ただ就職が決まって、書類を出す際の緊急連絡先は自分のパートナーのものを書いたと思います。それがカミングアウトになるかどうかはわかりません。

就職先を考える上で、会社の雰囲気やLGBTフレンドリーかどうかということは意識しましたか?

― 転職する時には、「次の会社ではカミングアウトをしよう」と決めていたので、多少は意識していました。この会社だったら大丈夫だろう、隠す必要もないだろうっていう安心感や確信があっていきました。前の職場は、とても堅いところだったので、カミングアウトできる雰囲気は全くなかったです。

職場でのカミングアウトについて

現在は職場でセクシャリティをオープンにして働いていますか?

― そうですね。3月末のちょうど転職するタイミングで、テレビ番組の『バンキシャ』の取材を受けたんです。まだ働き始めて1,2ヶ月だったらあまり周囲への影響も少ないと思ったので。その時に会社にも取材のカメラが入ったので、もうカミングアウトせざるを得ないという感じでした(笑)。入社して1週間でセンター長やマネージャーに伝えましたね。だから、センターにいる職員は全員知っています。それ以外でも、別に隠す必要もないと思っているので、聞かれたら答えます。またLGBTに関する社内研修も私が行っているので、私のことを知っている人はだいたい知っていると思います。

カミングアウトをして、なにか職場で反応がありましたか?

― 職場のセンター長が本当に応援してくれる方で、職員の会議で「皆さんで全面的に協力していきましょう」と伝えてくれました。本当に嬉しかったです。個々の職員がどう感じたかは分かりませんが、一緒に仕事をしていく中では別に何も関係ないですし、普通に受け止めてくれていると思います。でも、そういったセンター長からのサポートもあったので、今はすごく働きやすいですね。

カミングアウトしていなかった前の職場と、している今の職場で働きやすさは変わりましたか?

― 働きやすさは変わったと思いますが、カミングアウトの問題だけとは限らないですよね。LGBTを受け入れるか受け入れないかというよりは、結局は仕事のスタイルの違いが大きいと思います。現在の職場の方が職員も若いですし。前の職場は堅いところだったので、仲のいい人や大切だなと思う人にはお伝えしていましたが、オープンに出来るような雰囲気ではなかったです。たぶん、LGBTのことを理解してもらっているから働きやすい職場なのかっていうよりは、会社の理念や会社そのもののスタイルが大きく関係しているのだと思います。

カミングアウトしたからこそ起こった職場でのエピソードなどはありますか?

― 他の職員から相談を受けることはありました。全国展開している会社ですから、他のLGBTの職員から直接相談されることもありますし、あるいは家族がLGBTかもしれないということで、どのように接したらいいかなどの相談もあります。また、ソーシャルワークをしていく上でも必要な知識だと思うので、社内研修も含め、そういったところで相談されることもありますね。

会社のLGBTへの取組について

会社ではLGBTについての取り組みはありますか

― それこそLetibeeさんが管理職の全体会議で研修をやったと思うのですが、今後規定などがどう変わっていくのかについては、私はまだ何もわかりません。ぜひ進めていただきたいですね。
あとは、オフィシャルなものではないのですがLGBTの職員同士が集まって時々飲みに行ったりしています。今はレズビアン、ゲイ、バイセクシャルの人たちが中心ですが、いずれトランスジェンダーも入ってくるといいねって話しています。

こんなものができたらいいなっていうのは何かありますか?

― 異性のカップルと同じ待遇にはして欲しいですね。同じにするのが平等だと思います。たとえば、結婚式を挙げるときに休みが取れるだとか、パートナーの親御さんが亡くなった時に忌引きが申請できるだとか。そういったものが会社にあるのであれば、全く同じものは同性カップルにも適応されるべきだとは思います。

インタビューを終えて

写真部の先輩に教えてもらって映画祭に足を運び、そこで知ったHIV関連のボランティア活動の経験を活かして、青年海外協力隊へ。そして派遣先でのソーシャルワーカーや他の隊員たちとの出会いが永竹さんご自身の現在のキャリアにつながっていく、というお話がとても印象的でした。

永竹さん、ありがとうございました!

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