「LGBTって都合のいい言葉」トランスジェンダー女優の本音直撃

2016年のレインボーリール東京 第25回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭でプレミア上映され、その後劇場公開された映画「ハイヒール革命!」
7月26日にいよいよDVDがリリースされるこの作品は、MtFの新人タレント・真境名ナツキの人生を、ドラマとドキュメンタリーを混在させて描く、ちょっと珍しい構成の映画です。
昨年の劇場公開に合わせてかなり辛辣なレビュー記事(改めて読み返してみたら冷や汗もののキツイ書き方をしていました)を公開したのですが、それを読んだ真境名ナツキさんから「一度、話を聞いてほしい」と直々にご連絡をいただきました。
その後、紆余曲折あり、古波津陽監督とご一緒にインタビューをさせていただくことになりました。
映画製作のバックボーンを率直に語っていただけて、さらにこの映画と真境名ナツキさんに興味を持つようになりました。
色々なお話が出てくるロング・インタビューをお楽しみください。

まずは映画の予告編から、どうぞ。

 

最初は全編劇映画(ドラマ)になる予定でした

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(左)真境名ナツキさん(右)古波津陽監督

いたる(以下”I”):「ハイヒール革命!」というタイトルで映画と本(書籍名は「ハイヒール革命」)があるわけですが、この作品は、どういう流れで製作されていったのでしょうか。

古波津監督(以下”K”):一番最初は、プロデューサーが
「こんな面白い子がいて、この子の映画作りたいんだけど」
と、ナツキさんを僕に紹介してくださったっていうところからこのプロジェクトはスタートしました。
お話聞いたときに一番興味を持ったのは、中学時代にスカートを穿いて登校したっていうところ。そこが一番ドラマになるんだろうなと思って。
最初は全編劇映画として作るという話だったんですよ。
そのために、ナツキさんに繰り返しインタビューをさせてもらいました。
インタビューの過程でご本人の言葉の強さっていうのがすごく気になってきたんです。
その「強さ」を、役者が、しかも過去のもの中学時代を演じていくことに違和感を覚えたんですね。
まだアイデンティティが確立されてない時代を描くのに、そんなにがっちりした言葉がでてくるとリアリティーなくなっちゃうし、描けることが意外と少ないんじゃないのかなと思って。
(ドラマとして)盛り上がるのは盛り上がるんでしょうけど、この人の面白さを伝えるには不十分ではないのかなってだんだん思うようになってきたので、ちょっと作戦を変えようかな、と。
ドキュメンタリーっていうことでやれなくもないから、そのドキュメンタリーの線とドラマの線との2択だな、と思いながらずっとインタビューしていました。
ところが途中でそれを混ぜるっていう方法もありだなと思うようになりました。
以前、ある企業向けの作品作ってたときに実験でドキュメンタリーとドラマを混ぜてみたら面白くなったということがあって。
商業映画の中でもこのスタイルをやってみる価値はありかなと考えました。

真境名ナツキ(以下”M”):この映画を作るときに、誰が伝えることが一番分かってもらえるのかな、と考えたときに、私が出てしゃべったほうがいいんじゃないかみたいなことをお話しさせてもらって(笑)。
その言葉が響いたのか分からないんですけど。

K:響いたよ。

M:あっ、よかった。
それでこういう感じになったって私は勝手に思ってたりするんですけど(笑)。

I:ということは、ドラマがあり、インタビューがあり、ドキュメント的に撮っている部分がありということですね。例えば中学時代の担任の先生と電話でお話した場面は、本当にリアルなものなんですか。

K:僕らは「映画で使いますよ」ということを先生と交渉する必要があるから、もちろん事前に話はしてるけど、ナツキさんと先生が会話するところはあの場面が初めて。

M:完全に台本がない感じ。

I:では、映画の制作を通して本を書かれたっていうことになるんですか?

M:そうですね、この映画にはパンフレットがないので、その代りになるし、本を読んでいただくことでより分かってもらいやすいんじゃないか、というプロデューサーさんの判断もあり、本を書かせていただくことになりました。
いたるさんの記事を読ませていただいたときに、先生との話に触れていただいてたじゃないですか。わりと見る人によってここまで違うんだっていう不思議さを感じたりして。
監督の狙いとして私が聞いてたのは、
『私がひとりで怒ってたけどそれはひとり相撲だった、先生はそうやって忘れちゃったって一番ずるいことで逃げてった』
っていうふうに描いているつもりだって。
でも、いたるさんの感想は違った感じだったから、見る人が見るとこうも違うんだなっていうのが、すごい不思議な感じでした。

I:自分の中で、子供の頃から、または成長してからも、ずっと理不尽だなとか釈然としないなと引っかかり続けるものがあるんですけど、後から考えてみると、
『それは自分を被害者モードにしすぎてるのでは?』
『相手の考えを曲解して悪く取りすぎてるのでは?』
と思えてくることが結構あり、反省することもすごくあったんですよ。
成長すると見えてくるっていう部分なんだろうなと思ったから、ああいう書き方をしました。
で、ちょっとごめんなさい、
ご本人を前に言いづらい話なんですけど、この映画見て僕一番最初に感じたのは、
『主役のナツキさんじゃなく、周りの人がみんな素晴らしい』
というところを描きたかったのかなと思って。
古波津監督の意地の悪さが僕は好きだなぁって思いながら見てたんですけど(笑)。

M:そうなんです。私ちっとも魅力的に描かれてないですもんね(笑)。
すごい掻い摘んで言っちゃうと、
『恵まれすぎると腐るよ』
っていうのも、私の体験からくる考えなのかなって思ったりもしたんですよ。
この映画をご覧になったり本を読んでくださった方に、
『ナツキちゃん、大変だったね』
って本当に言われなくて(笑)。
ほとんどの人は、
『お母さんすごかったね』
『いいお母さんだね』
そう言われると、まあ、うん、そうね、みたいな感じで(笑)。
トランスジェンダー、トランスセクシュアル当事者の話ってすごくありふれてるじゃないですか。
『私はこれだけ大変でした』
『初恋はかなわなかったです』
『いじめられてきました』
とか、すごい聞きなれて手垢が付きすぎてる話だったりしますよね。
だけど、母とか父とかが出てくる話ってほぼないなって。
私はこの映画や本を当事者の親に見てもらうことによって、違うってことが分かってもらえるっていうのが一番理想だなって思ったんですよ。
私なんて、恵まれた環境なのにすごい被害者妄想が強いって書かれてましたけど(笑)今更、劇的に変わることは不可能だと思うんです。
でも、私は色々言われても「何よ」みたいなこと思わないで、「そう思ってるんだ、へ~~」って受け取ることができる。
「私はオカマよ」って強く生きることができるのも母がいたからだったりするので、そういうのが伝われば私は今回この映画に出た意味ってすごくあったりするのかなって。

どうして「オカマ」にこだわるのですか?

サブ のコピー

I:そういう意味では作戦は大成功ですね。
映画でも、本でも気になったことなのですが、どうして「オカマ」という自称にこだわるのでしょうか?
トランスジェンダー、トランスセクシュアルの人は、当然ながら女性(男性)として生きているわけだし「埋没」を望む人も少なくない中、私はオカマですって表に出ちゃうことへの反発がものすごく大きいのではないかと思うのです。

M:それって、私が夜の仕事してたときに思ってたことです。
絶対オカマとか男だとか言われたくないって思ってた、すごい高い声で一生懸命女っぽく生きようって頑張ってたんですけど、地声がこんなだから無理じゃないですか(笑)。
MTFとかの人にしたら、そういうオカマバー、ニューハーフの人たちと一緒にされたくないみたいな心の壁が結構あったりするじゃないですか。
私も、「一緒にしないで、私は違うから」みたいに思ってたんです。
でも、会えば会うほど、話を聞けば聞くほど、みんないろんな悩みがあるんだって分かってきて。
本当はすごく女でいたいけどこれは仕事だし、お金を稼ぐ唯一の手段だから頑張ってるみたいな人ももちろんいるし、開き直って強さを見せてやってる人もいるし。
映画に出てくるメリンダさんなんて、心は一番女の人だと思います。
本当は体も変えたかったし、一番女として生きていきたかったタイプの人なんですよ。
だけど、ああいうふうに開き直って強さを見せてやってて、今は西麻布でママになっています。
本当の強さってそういうところにあるのかも、って思ったりしたんですよね。
女ですって言って生きてても女になりきれないと自分の弱点になっちゃうじゃないですか。
自分の弱点をずっと隠してる人って、どこかちょっと人に対して卑屈な部分ってあったりするし。
私は卑屈には生きたくないんです。
人から言われたら「そうよオカマよ」って言い返せるぐらいの強さがあったほうが、人生って生きやすいんじゃないかなって。
だって絶対に、ホモだとかオカマだとかっていう言葉や差別って、私たちが生きてる間にはなくならないと思うんです。
だったら、「あっ、何っ、オカマって言った?」って、いちいち上げ足とったりするよりは、「そうよオカマよ、だから何?」って言い返せるほうが、自分は人生を前向きに生きられるんじゃないかなって思った結果、自分のことを『オカマ』って言ってます。

I:なるほど、お考えは分かりました。
でも『オカマ』って難しい言葉ではあるんですよね。

M:確かにね、難しいです本当に。差別的な言葉ですからね。

I:だから、なんでオカマにこだわるのかな? とか。
レッテル貼りしないってわりにはレッテル貼ってんじゃん? とか、映画を見ながら思ってました。

M:そうなんですよ、だからパラドックスがすごいあるんですけど(笑)。

K:映画作ってるときかなり悩みましたよ、これ使うべき言葉なのか、それとも出ている人たちはすごい嫌な思いしちゃう言葉なのか、お客さんが嫌な思いする言葉なのかとか。
編集の段階でいろんな論争が起きるんですよ。
僕らがよくても、使う言葉によってすごい傷つく人とか嫌な思いする人がいる、じゃあどこで線引くのみたいなとこで。

M:私は「オカマだよって、それでいいじゃん」っていうのは強く思ってたいことで。
「MTFです」とか言うのってあんまり好きじゃなくて。
トランスジェンダーって言葉も違うし、どこに当てはまるかなっていったらトランスセクシャルなんだけど。
本当はトランスジェンダーって私たちを指す言葉じゃないんだけど、言葉が一人歩きしちゃってるし。
私は「オカマがいい」って、自分で選んだって感じがしますよね。

K:僕がすごくラッキーだったのは、ナツキさんが分かっていない人間の誤解みたいなことを気にしない人だったことです。
「オカマとトランスジェンダー、何が違うんだって」って、かなり長い間ナツキさんやお友達に質問してた。
僕が知りたいことであり、お客さんも絶対に知りたいと思うことだから。
でも、その言葉自体に意味がないし、そのカテゴリーに意味がないっていう答えばっかもらって。
「そこってこだわる必要なくない?」みたいな。

M:監督のほしい答えになってなかったですよね。

K:でも、そんなやり取りを繰り返してる間に、それが答えなのかなっていうふうにだんだんと思えてきたし。
同じ質問してる間に、ナツキさんが、
「いや、そもそもそんなボーダーラインってどうやって線引くの?」
って聞いてるようなことだから、
「聞くことって意味あるの?」
っていう返しなわけじゃないですか。
僕はそれを聞いてる間に「ああそっか」っていう気持ちになれてきたっていうのが、この映画を通しての体験だった。
僕自身、やっぱり知りたいっていう欲求はあって、ナツキさんにもそういう意味では話したくないこととかも聞かせてもらって、自分では「なるほどな」って思えた。
その「なるほどな」を、お客さんに渡すというよりも、偏見というか、違いばっかりを気にしてるお客さんがなんとなくでも、そういう状態にいる自分にハッとするっていうような作り方ができないかなって、途中でだんだん課題が変わってきたんですよね。

さっきの質問に戻ると、僕の最初の目論見は、やっぱり中学時代を描くことで、感動の話っていうのを企画書で書いてたわけですよ。
でも、それってよくある感動ポルノだし
「それで感動したから何?」って話で終わる。
感動したことで逆に忘れちゃったり、感動したことで「ああそうなんだ」って納得しちゃうような答えめいたことをお客さんに渡してしまうことで、結局誤解したまま終わる可能性だって大いにあるわけですよね。
答えっていうものが、別になくてもいいんだって思えたんです
だって、ナツキさんの人生まだ終わってないし、むしろ今スタートラインにいるんだし。

彼女のインタビューの中で、今回あえてこの映画から落としちゃった中に、すごく面白い言葉があるんです。
ナツキさんに、「人生で何%ぐらい自分の理想を実現できたの?」って聞いたんです。
性別適合手術もして、パッと見たらみんなが女の子だと思ってくれる、扱ってくれる今の状態。
そしたら「50%ぐらいかな」って答えが返ってきたんです。
予想してたより「すげー低い」って思って、なんでそんな低いんだろうって聞いたら、
「だって私は、ゼロからの出発じゃなくてマイナスからスタートしてるんだから、50%ってすごくいい数字です」
って言うわけですよ。

M:あら、いいこと言ってた、私(笑)。

K:すごいそれが面白いなと思って、僕には響いて、なるほどなって。
なぜ映画から落としたかっていったら、映画全部を通してそのことを伝えたいと思ったから、言葉にしたくなかったんです。

M:説明しすぎちゃうってことですよね。

K:そう。
全編を通してそういうことを感じてもらえればいいなと思って、あえて今回は一番僕が大事にしてた言葉を落とした。そのかわり映画にどうやってそれを埋め込んでいけるかなっていうのが僕にとってチャレンジだったんですよ。
彼女自身が持ってるものはすごく少ない。
周りの人たち、お母さんだったり彼氏が持ってるもののほうが経験値も、すごい強い哲学もあるし、そういうものに支えられてて、彼女は何もできないっていうところもすごく素直に伝わるし、そこに逆に共感させてくことって映画としてはできないことじゃないなって思ったんですよ。
でも、この映画どう持ってけばお客さんって納得するんだろうっていうのは全く途中で分かんなくなって。
しばらくその状態の中でナツキさんの話をいろいろ聞きながら、密着っていいながらわりと視点は遠くにあって、遠くから観察するような気持ちで見ている中で、何もできないその気持ちっていうのは実はいろんな人に刺さる共感ポイントなのかもしれないなっていうのが、だんだん思えてきたことだったんですよ。

それは僕自身の体験の中にもあることだったんです。
やりたいことは何となくぼやけて見えてるんだけど、そこへの一歩をどう踏み出したらいいのか分かんなかったりとか。
人にうまく伝えられない気持ちがずっと溜まってる状態の中で、体がどっち向いたらいいのかも分からなくて、そのループの中で自問自答してるような状態。
身近にいろんな人がいるにもかかわらず、自分ひとりだけって感じる状態っていうのは、実は誰しも体験することなのかもしれないなって。
ただ、さっき自分で言ってたけど、甘やかされると身の置き場っていうものにすごく揺らぐ現象っていうのが起こるんだなって、僕はそういう状態の人と初めて会ったし。
僕は映画を作るのには行き詰っているけど、観察する対象としてはすごく面白い対象を見てるんじゃないのかなっていう気に途中でなっていったんですよ。

後半をこのテーマで展開していくと、ひとつ映画としては出口があり得るのかなって。
ナツキさん自身が本当に答えを持ってない、持ってないからこそみんなが、どうなるんだろうって思いながら映画が一緒の方向向いて終われるみたいな。
そもそも「オカマって何?」「トランスジェンダーって何?」っていう、それこそ色物を見るような目で見てた人たちが、最終的には「ナツキさんってどうなっちゃうの?」っていう、同じ方向向けてスッて終われたら、映画としてはすごく上等なのかなって思ったんですよね。
それが僕にできるかどうかっていうチャレンジだったんですよ。
編集がものすごい時間がかかって、5カ月ぐらいかかりました。

後半のドキュメンタリーは一切やらせなし

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I:後半のドキュメンタリー部分が、なんであんなにしんどくなっちゃうのかなっていうことが見えてきたし、逆にあそこまでの部分をさらけ出すことに対して抵抗はなかったですか?

M:部屋の中に四六時中カメラがずっと置いてあるんですよ。
もう何していいか分かんないし、で、ちょっと変わったことでもと思って、
「どっか遊び行ったりとかしてるの撮ります?」
とか提案するんですけど、
「いや、非日常だったらやらないで」
って言うので。
何が撮りたいのか意図がなんか分からなくて。
一応私ってわりと先回りしてこの人が求めてるものをしてあげたいっていうか、そんなこと言うとおこがましいんですけど、そういうのちょっと思っちゃうタイプなんですよ。
だから、
「この人は何を求めてるんだろう」
「何が撮りたいんだろう」
と考えるんですけど教えてくれないから、
「この密着はすごい長くなるわ、どうしよう(汗)」
って思って。
でも、密着されてるときは嫌だったけど映画としてひとつの作品になったときには、大丈夫かもみたいに思えたんです。
2016年のレインボー・リール東京で上映していただいたとき、ドキュメント部分ちょっと笑いが起こってましたよね。
最初は抵抗ありましたけど、ひとつのスパイスになったなら私はそれでもいいのかって、今ちょっと思ったりもしてます。

K:生活にずっと密着されていたら、絶対フラストレーション溜まるに決まってますからね。
でも、ケンカするかどうかっていうところではなくて、この人がどんどんカメラを気にしなくなっていって、きれいなとこばっかりを見せようとしてたところから、全然そうじゃないものを見せ始めたらどうなるのかなっていう、それを狙ってましたね。
もう嫌になるだろうなって絶対に思ってたし、僕らも嫌になってたんですよ、撮影が(笑)

I:ナツキさんと彼氏さんがケンカし始めた瞬間に、「よしっ!」て思いませんでした?

K:いや逆で。
うわー、撮っちゃいけないもの始まったと思って。
リアルに引いちゃう感じだったんですよ。
途中で「あっ! いいかも」と思い始めたんですけど、最初は本当に「うわー、引く」と思って。
一回、台所にナツキさん入ってっちゃって、そこにカメラ持って突っ込んでいく気がしなかったです。
だから、声だけしか聞こえてこないのをずっと最初のうち撮っていて。
それぐらい引いてる。
僕ドキュメンタリーのカメラマンじゃないから、そういう状況に慣れてなくて、本当にそうなっちゃうと、なんかもうこっから動く気がしないんですよね、視点変えてどうこうみたいな。
しばらくしてから、これまだまだ続くんだったらナツキさん撮んなきゃと思って途中で席立ったけど。
やっぱ、あの状況でドキュメンタリーのカメラマンってすごいなって思うけど、うわーって行って一番いいところから撮るっていう、ああいう気持ちには僕はならなかったですね。

M:監督、根がきっと優しいんでしょうね。
「あれ? 大丈夫かなこれ?」
みたいな、そういう顔してました。
そういう監督の優しさがあるからこそ撮れたシーンでもあるのかもしれないです。

I:ナツキさんは、これからはどういうことをやられていくご予定なんですか?

M:そうですね。今オネエタレントさんってたくさんいるじゃないですか。
そういう中でも、私はいろんなことにチャレンジできたらいいなって思ってるんですよ。
そもそも人前に立つことがわりと好きだったりはしたんですけど、美しさでいうと私はちょっと赤点なタイプだったので昔から。
水商売してたときもあまり人気のあるほうじゃなかったので。
どこまで自分ができるかっていうのは分からないですけど、でも求められたことはなんでもやっていきたいなっていうのが常にあったりして。
どういうニーズが今あるか分からないんですけど、求められたことは100%、全力でできたらいいなっていうふうに思ってます。

K:ちなみに今、夢っていうのはどういう。

M:夢ですか?
私、まだ性別適合手術してないので、その過程をドキュメンタリーで撮っていただけるならタレントになった意味があったかなって思いますけどね(笑)
それが私の今のところの目標。
それにはもっと有名になんなきゃいけないので、なんでも選り好みしないでやろうみたいな。

私、LGBTってすごい都合のいい言葉だなって思っちゃうんですよ。
LとGの方の悩みってすごく違うのかもしれないけど、同性愛っていう意味では似てるかもしれない。
でも、バイの方って同じじゃないじゃないですか。
だって、私からしてもうらやましいって思いますもん。
かっこいい男の人にも、きれいな女の人にもときめけるって、人生二倍楽しくない? って。
その人たちとT、トランスジェンダーとかトランスセクシャルの私たちが同じ悩みなわけがないじゃんって思うので、セクシャルマイノリティーっていう言葉自体も私自身あんまり肯定的に捉えてないんですよ。
自分がマイノリティーであるって、少数派だって言って生きていきたい人なんていないんじゃないかって思うんですよね。
みんな同じじゃないじゃないですか、みんなバラバラ、それぞれ悩むことも違う。
なんとなくこの『ハイヒール革命!』を通して、「そうだよね」っていうのが伝わっていけばいいな、っていうのは撮っていただいる側としては思ってたことでもありました。

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古波津監督、ナツキさん、長い時間に渡り率直にお話いただきまして、ありがとうございました。
事実をベースにしたドラマであり、ナツキさんを取り巻く色々な人のインタビューがあり、飾らない日常を見せるドキュメンタリーがありと、様々なアプローチで真境名ナツキという人物の輪郭がくっきりしてくるこの映画「ハイヒール革命!」。いよいよDVDがリリースされます。ぜひ書籍「ハイヒール革命」と共に、ご覧になってください。

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★2017年7月26日 DVD発売

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ハイヒール革命!

監督:古波津陽
脚本:福島敏朗
出演:真境名ナツキ、濱田龍臣、藤田朋子、西尾まり 他
主題歌:ミヤモリ「Everything」(IVY Records)
制作プロダクション:AOI Pro.
製作:映画「ハイヒール革命! 」製作委員会(平成プロジェクト 山栄 AOI Pro. TBSサービス テアトルアカデミー)
発売元:映画「ハイヒール革命! 」製作委員会
販売元:TCエンタテインメント
©2016映画「ハイヒール革命! 」製作委員会

■DVD仕様
2016年/日本/カラー/本編73分+特典約24分/16:9LBビスタサイズ/片面1層/
音声:ドルビーデジタル5.1chサラウンド&2.0chステレオ/字幕:日本語・英語/1枚組

公式サイト
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★書籍も発売中

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ハイヒール革命  性を変える。体を変える。アタシは変わる。

真境名ナツキ・著
四六版
廣済堂出版
本体1300円+税

ABOUTこの記事をかいた人

いたる

LGBTに関する様々な情報、トピック、人を、深く掘り下げたり、体験したり、直接会って話を聞いたりしてきちんと理解し、それを誰もが分かる平易な言葉で広く伝えることが自分の使命と自認している51歳、大分県別府市出身。LGBT関連のバー/飲食店情報を網羅する「jgcm/agcm」プロデューサー。ゲイ雑誌「月刊G-men」元編集長。現在、毎週火曜日に新宿2丁目の「A Day In The Life」(新宿区新宿2-13-16 藤井ビル 203 )にてセクシャリティ・フリーのゲイバー「いたるの部屋」を営業中。 Twitterアカウント @itaru1964