シリアから逃れたゲイの難民が、現地の様子を告白
イスラム過激派組織「イスラム国」(IS)の迫害から米国へ逃れてきたゲイのシリア男性が、シリア国内の同性愛者の置かれている状況について発言した。
シリア難民の第三国定住
ISISや「イスラム国」などの名称でも知られるイスラム過激派集団ISは、イラクやシリアにおいて、人々の前でたくさんのゲイ男性を処刑している。これによって、地域のLGBTコミュニティは命を守るためにその土地を離れることを余儀なくされている。
シリア国内の情勢が悪化していくにつれて、すでに難民となっている人を別の国が受け入れる制度である「第三国定住」などを通じて、カナダ・英国・米国など多くの国がLGBTのシリア人難民の受け入れを表明している。しかしこれらの制度が十分に活用されているとは言い難い状況だ。
シリア国内の状況
スービー・ナハス(Subhi Nahas)氏は、そのような迫害から逃れてきたオープンリーゲイのシリア人だ。英国議会について提出された文書の中で、自身の苦しい体験について語った。
「私はスービー・ナハスです。シリアのイドリブ(Idlib)出身で、イドリブは首都ダマスカスの北に位置する人口が1500万人ほどの都市です。
私は難民で、またゲイでもあります。2011年にシリアで暴動が始まりました。その時に政府メディアは、反体制派の全ての人を同性愛者であるとして非難するという運動を始めたのです。
その直後、当局はゲイの人たちに会ったという場所への組織的な襲撃を行いました。多くの人達が逮捕され、苦しめられました。それから二度と連絡が取れなくなった人もいます。
逮捕されたり、処刑されたりした人たちは、その外の世界からずっと見過ごされてきました。そして2014年にISが優勢になると、LGBTだと疑われる人に対しての暴力的な攻撃は悪化し、彼らの暴挙が発信されるようになっていきました。
処刑では、子供を含め数百人の街の人が、まるで結婚式であるかのように歓声を上げています。被害者がビルから投げ落とされても死ななければ、街の人が彼らに石を投げつけ死に追い込みます。私もこうなる運命だったのです。
2ヶ月後、私はレバノンへ逃れるチャンスをつかみました。私はそこに6ヶ月間過ごしました。そしてトルコのハタイへ移動し、ほかのシリア人の通訳として働きました。」
また、彼は以前、
「ISは、社会のモラルが崩していくこれらの“性的倒錯者”からコミュニティを守っているんだと話していました。」
と説明していた。
「彼らは水やサービスなどは提供できないけれど、コミュニティを守る事ができます。そして、それはうまくいっているかのように見えます。
私たちは、もし同性愛者がビルから突き落とされて死ななければ、街の人が石で彼らを殺していくというビデオを見ました。ISは一般市民からの支持を得るためにこれほど残忍であるのです。」
自分と似た境遇にある人の支援を
スービー氏は現在米国で暮らし、ORAMというLGBTの難民や移民を支持する米国に拠点を持つNGOを通じて、彼と似た境遇におかれている人たちのために意見を述べている。彼は昨年には、国連の安全保障理事会でも発言していた。
「難民として、そしてゲイの男性として、私はLGBTやその他の弱い立場にある人たちの手助けができることをとても誇りに思います。」
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