渋谷区の同性パートナー証明書は、本当に必要なのか?

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渋谷区で日本初、同性パートナーシップ証明書の議論

今朝よりメディア、SNS上でともに”大騒ぎ”となっているニュースがあります。

日経新聞:渋谷区、同性カップルに証明書 条例案「結婚に相当」

中日新聞:同性パートナー証明書を発行 渋谷区が全国初の条例案

東京新聞:同性カップルに結婚並み証明書 渋谷区、来月に条例案

また、Twitter上でも話題騒然で、Twitter のトレンドに「同性カップル」、「渋谷区」、「条例案」、「証明書」などがあがっています。

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Letibee は、設立当初から現在に至るまで一貫して「婚姻関係を結べない同性カップルには、様々な問題が生じる」ということを最重要事項として様々なことに取り組んできました。
そこで、今まで弊社が集めてきた、今回の同性パートナーシップが生まれることで、どのような効果が起きるのかについて、体系的に説明したいと思います。

「赤の他人」から「パートナー」になる?

結論からいいますと、法的には、同性のパートナーを法的にパートナーにすることはできません。

まず今回の条例案についてご説明します。
以下は、日本経済新聞からの抜粋です。

同性カップルが、アパート入居や病院での面会を家族ではないとして断られるケースが問題になっていることを踏まえ、区は区民や事業者に、証明書を持つ同性カップルを夫婦と同等に扱うよう協力を求める方針だ。法律上の効力はない。

条例案は、男女平等や多様性の尊重をうたった上で、「パートナーシップ証明」を定めた条項を明記。区内に住む20歳以上の同性カップルが対象で、必要が生じれば双方が互いの後見人となる契約を交わしていることなどを条件とする。カップルを解消した場合は取り消す仕組みもつくる。

日本経済新聞: 渋谷区、同性カップルに証明書 条例案「結婚に相当」

ここからわかることとして、今回の同性パートナー証明書は「法律上の効力はない」のであって、「この二人は渋谷区が認めた正式なカップルですから、異性カップルと同等に扱ってくださいね」と渋谷区が区民や事業者に「協力を求め」ものであるということです。ただし、以下の通りこの協力に反した場合、渋谷区によって事業者を公表されます。

条例の趣旨に反する行為があった場合は事業者名を公表する規定も盛り込むという。

中日新聞: 同性パートナー証明書を発行 渋谷区が全国初の条例案

実際には法的にはパートナーではないので、事業主も区民も、同性カップルに対して何かしらのサービス提供を拒否すること自体は可能です。これは、英国やフランスなど欧州国に存在しているパートナーシップ制度とは明らかに法的効力が違っています。

世界に存在するパートナーシップ制度の効力

同性カップルにも異性カップルと同等の権利を保障するパートナーシップ制度は、世界中に存在します。
(以下は、2010年2月時点における欧州諸国に存在していたパートナーシップ関係の制度。現在は、当時はパートナーシップ制度しかなかった国の中に、同性婚が認められている国が増えています)

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参照元: 鳥澤 孝之 「諸外国の同性パートナーシップ制度」

この通り、相続や、税制上の優遇措置などがパートナーシップ制度の効力として存在しています。
これは法的効力のない渋谷区の同性パートナー証明書とは明らかに異なる点だと言えます。

同性カップルには、なぜパートナーシップ制度が必要なのか?

その答えは、同性カップルは法的に、「完全な赤の他人」状態だからと言えます。

異性カップルの場合、たとえ婚姻をしていなかったとしても、「内縁状態」という、LGBTの人々にとっては羨ましくなるような制度があります。たとえ婚姻届を出していないカップルだとしても、「内縁」という状態が認められることで、相続や夫婦としての権利がある程度認められます。

しかし、同性カップルには内縁が全く認められておらず、もしパートナーが突然の事故や病気に陥り、面会謝絶に陥った際に、公正証書や養子縁組、医療現場における事前意思表示などといった書類を事前に準備していないと、パートナーに会わせてもらえないのです。数十年付き添ったパートナーなのに、最期を看取ることもできません。
さらに相続権も全く認められないので、すべての遺産を親族に持っていかれます。実際に、なんら準備をせずにパートナーがなくなった結果、パートナーだけでなく自分たちで購入した家すらも失ってしまったというケースが存在します。

他にも、様々な要所要所で問題が発生します。

不動産

不動産を購入したいと考えているLGBTは存在しますが、実際には賃貸を利用している方が多いようです。
以下は、弊社が300名のLGBTに対して行った不動産に関する調査結果です。

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これには「将来の人生設計が見えづらいので、身軽な賃貸の方が良い」と考える人が多いからだとも考えられます。
しかし最も重要なポイントは、「住宅ローンを2人の共同名義で利用できない」ことなのです。法的に赤の他人の状態である同性パートナーは、住宅ローンを利用したくても、1人分の収入でしかローンを利用することができません。その結果、本当は2人で合算すればより高い住宅を購入できるはずなのに、1人分の収入で計算させられるしかないのです。
しかも、1人が住宅ローンを利用して住宅を購入した場合、もう片方のパートナーもそのお金を払うとしても、「贈与」という形になるため、贈与税が発生してしまいます。そしてさらにひどいことは、公正証書遺言などをしっかり残しておかないと、もし住宅所有者の方のパートナーがなくなった場合、どんなに残されたパートナーが住宅の費用にお金を払っていたとしても、その住宅はパートナーのものにならず親族のものになってしまいます。(ただしこれらは養子縁組をしたカップルを除く)

生命保険

同性カップルは、基本的に同性パートナーを生命保険の受取人に指定することができません。
なぜなら、生命保険の受取人に親等が条件として絡んでくるため、養子縁組をしていないかぎり「赤の他人」状態のパートナーを受取人指定することはできないのです。

※ただし、かんぽ生命など、実際には受取人指定できてしまう生命保険も存在しますが、大半の保険商品は指定できません。

自分が亡くなった時に、パートナーは生活できるのか心配なLGBTの方は、保険という選択肢がなく、自分で貯金をするという選択肢に狭まられています。

その他様々な場面で…

・ワタミブライダル管轄の式場などで挙式を行う場合、婚姻届が挙式に必要なのでLGBTカップルには利用不可能です。
・Softbankを除き、auやdocomoなどの携帯キャリアで家族割引を利用することができません。
・税金の扶養控除を受けることができません。
・一部を除き、夫婦であることが条件の公営住宅を利用することができません。
・2人で養子をとることができません。

法的効力はなくても、社会的インパクトは大きい

様々な実情をお伝えしてきましたが、渋谷区の同性パートナー証明書はLGBTにとってとても大きな第一歩です。
たとえ法的効力はなくても、渋谷区が全面的にLGBTを応援し、日本初のパートナー証明書を議論されるということは、社会にとって大きなインパクトのあることだからです。
(だからこそ、メディアやSNSでも注目されていると言えます。)

タイトルの「渋谷区の同性パートナー証明書は、本当に必要なのか?」に対する回答としては、「法的効力はないため効果は限定的ではあるが、日本社会に影響を与えるために、必要なものである」と言えるのではないでしょうか。

最後に、以下は先日ともに行政書士の事務所に訪問し、公正証書を作成したカップルが仰っていた一言です。

「こんなにいろんなことを、異性カップルは婚姻届1枚で終わらせられるなんて、羨ましい。税金も優遇されるし。わたしたちも同じ税金を払ってるのになぁ。」

READ  【連続アンケート企画】LGBTと家族 その8〜私と家族の関係〜

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2 件のコメント

  • KDDIやNTTと違い、ソフトバンクは同性愛者の家族割を適用できるようにしていたのは驚きだ。
    孫社長の意向なのだろうか。

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