“LGBT” という単語すら知らなかった私がアセクシュアルを自認するまで
アセクシュアルです、と言うと「いつ気付いたの? どうしてそう思うようになったの?」と聞かれます。確かにアセクシュアルというのはLGBTの中でも比較的名前を聞かないセクシュアリティで、筆者もアセクシュアルという単語に出会うまで時間がかかりました。今回はその経緯についてお話しします。
1.「レンアイ」ってなんやねん
別の記事でも度々触れているのですが、小さな頃から「恋愛感情」というものがよく分かりませんでした。というと「じゃあ『あの人カッコいい!』とかも思わないの?」と聞かれるのですが、「あの人イケメンだなあ」とか「美人だなあ」「素敵だな」という感情はあります。が、テレビの中の芸能人に関しても、学校の友達に関しても、それ以上の想いを抱くことはありませんでした。
2.交際してみる
とはいえ、そんな筆者にも恋人がいた時期があります。異性同性ともに付き合いました。いずれも元々それなりに仲の良かった友人たちで、「付き合って!」と言われて、頼まれごとを引き受けるような気持ちで気軽にオーケーしたのがきっかけでした。自分の中で、もしかしたら付き合ううちにレンアイが分かるようになるかも……? という期待もありました。
しかし、たとえば「指先を絡めて手を繋ぐ」「キスをする」「セックスをする」……そんなことの意味が理解できず、結局破局してしまいました。仲の良い友達の頼みなのに叶えてあげられなくて申し訳ないなあ、という気持ちでした。
3.もしかして:病気……?
そんなことが続いたので、「もしかして私、病気なのかも……」と疑いを抱き始めました。たとえばうつ病のセルフチェック項目には「性欲の有無」という欄があります。自分がうつ病であるとは思えませんでしたが、もしかしたら何かの病気の症状のひとつなのかもしれない……と不安でした。
ところがどれだけ探してみても、自分に当てはまるような症例は見つけられませんでした。
インターネットで単語を見つけるも…
「アセクシュアル」という単語を見つけたのはインターネット上でした。それまでモヤモヤと重くのしかかっていた不安がスッと軽くなる言葉でした。ところが、よくよく調べてみると不思議な記事がたくさんあります。「アセクシュアルが最近増えている」「自己判断しないで医者に相談しましょう」「アセクシュアルになってしまう原因は?」などなど……。セクシュアリティのひとつの筈なのに、まるで病気のような扱いで書かれていることもあります。「えっ、やっぱり病気なの?」と不安な気持ちに逆戻りしそうになったこともあります。
そんな不安を拭ってくれたのもやはりインターネット、正確に言えば同じようにアセクシュアルを自認する人たちとの交流です。「アセクシュアル」という言葉を知識として知っていても、やはり実際に同じような感覚を持った人たちに会ってみるまでは「ひとりじゃないんだ」ということが信じられなかったのです。
一度そうした人たちと出会って自信がつくと行動的になり、LGBT関係の集まりに顔を出すことも多くなりました。そこでできた新たな知り合いや友人も、かけがえのない存在になりました。こうしてどんどん仲間が増えていくにつれて、ようやく不安から完全に解放されたのです。
インターネットは筆者を救ってくれましたが、同時に更なる悩みのタネにもなりました。きっと今でもどこかに名前のないモヤモヤした焦りや「アセクシュアルって病気なのかな……」という不安を抱えている人がいると思います。そうした人たちが1人でも多く、正しい情報を得て悩みから解放されることを願ってやみません。
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