公正証書等の書類がなくても、受け取り人を変更することは可能
埼玉県に在住のゲイカップルのお二人が、生命保険の受取人を同性のパートナーに変更できたとのことで、そのきっかけや手順をインタビューして直接聞いてみました。
– 今回どうして保険の受取人変更に挑戦してみたのですか?
きっかけは2年前にあげた結婚式、家族として残せるものは残しておきたかった。10年前に現在の生命保険を大手生命保険会社で契約し、今回の変更までは受取人を父親にしていました。パートナーである彼と一緒に暮らし始めてから7年以上、挙式もあげたことで家族としての意識もより一層高まり、今回受取人変更に挑戦しました。私たちが変更したのは、生命保険の受取人と指定代理請求人の変更です。
※指定代理請求人とは、本人が存命であっても何らかの理由で意思表示ができなくなってしまった場合に指定代理請求人が高度障害保険金や給付金を請求できる人のことを言います。
– まず最初に何をしましたか?
はじめに担当の外交員の方に、カミングアウトをし受取人変更の申し出をしました。万が一断られた場合は、他の保険会社で挑戦することも考えました。しかし、その方のクライアントにも他のLGBTの方がいた為、自然に受け入れてもらえ、「前例はあまりないのですが、できる限りやってみます。」と言ってもらえたことが心強かったです。
– どうして新規ではなく受取人変更にしたのですか?
断られた場合、他の保険会社も考えはしましたが、新規契約で親族関係、婚姻関係にない相手を受取人に指定することは極めて難しいと思います。数十年前であれば比較的簡単にできたとの話もあるのですが、それを逆手にとった保険金詐欺事件が相次いだことが大きく影響し、金融庁からのお達しが出ているほどなので、今はまず無理といっても過言ではありません。今回の変更がうまくいったのも「既存契約の内容変更」であったからというのが大きいです。逆に言えば、既存契約の内容変更であればみなさんにチャンスがあるということは知っておいていただきたいですね。
– どうやってやったのですか?
事実婚の場合などにも使われるのですが、受取人を変更していいかどうかの判断に「6年以上同棲しているか」というものがあります。内規(保険会社内のルール)で決まっているそうです。そうはいっても、あくまで最後は会社判断であり、6年以上であっても断られるケースもあるそうです。私たちは6年以上同棲していたので、判断の足しになればと思いお互いの住民票を提出しました。公正証書等があれば万全かと思うのですが、公正証書はとてもネガティブな部分の取り決めもしないといけない為、私たちはまだ取らないでいます。
変更の審査のために何度か面談をしました。元々の担当の外交員の方の他にその方の上司との面談があり、さらに生保リサーチセンターのリサーチャーの方との面談がありました。ちなみに、リサーチャーの方との面談は自宅もしくは職場限定で行われます。これも虚偽報告がないか等のチェックのためです。(同性カップルだからというわけではなく、手順として実施されます。)この際に、元々受取人であった親族には今回の件を伝えていて了承を得ているかと質問されました。必ず了承を得ている必要はないと思われますが、いざ請求をするとなった際に「聞いていない」などとトラブルにならないようにご自分から説明されておくことをお勧めいたします。
今回変更までにかかったのは2ヶ月ほどで、思ったよりもすんなり行きました。こういった自分の人生に関わるサービスをパートナーと共有できたことはとても嬉しいです。現在同じような境遇にいる方、今後考えていらっしゃる方の参考になればと思います。
画像引用先:lifepartner