「境界のないセカイ」連載打ち切りはLGBTへの配慮なのか?

manga scene saying about lgbt

講談社、異例の連載漫画打ち切り

3月9日発売予定、ネット通販サイト上では予約も始まっていた、「境界のないセカイ」が書籍化の白紙、連載打ち切りになった。また、それを受けて、DeNAの配信するマンガボックスでも連載が打ち切りになりました。

幾夜大黒堂(いくや・だいこくどう)氏のブログによると、発売元の講談社が「作品中の男女の性的役割の描き方に関して、性的マイノリティの個人や団体によるクレームを回避したい」とのことでした。

しかし、幾夜大黒堂氏はこれに対し、自身のブログで、以下のように発言しています。

この作品は男女の性別の行き来が可能になった世界を描いています。
その世界ではセクシュアリティに特に疑問を持たない、無関心な人たちは「男(女)が好きなら女(男)になれば良いのでは?」と考える人が比較的多いのではないか、と考えていました。
そして物語が進む中で主人公はヒロインをはじめとして性の越境を行った人に触れる中で、こうした無関心から来る考え方にすこしづつ疑問を抱いていき、最終的には多様な生き方に寛容な考えを持たせていくつもりでおりました。
ここの描写は背景世界の説明の一部であり、主人公の変化を描く過程の一部でした。

幾夜さんがブログに掲載した第5話のシーン

幾夜さんがブログに掲載した第5話のシーン

実際にマンガボックスに現在も掲載されている1〜15話までにも目を通したが、当事者個人や団体が憤慨するようなシーンは見当たりませんでした。過去に講談社が紙面にて掲載・発刊した作品の中に、大今良時氏のいじめをテーマにした「聲の形」というものがあります。単行本の1巻の内容はほぼ、ある男子が、クラスに転校してきた耳の聴こえない女の子をいじめるというもの。

「聲の形」は、「このマンガがすごい!2015」オトコ編で1位にも選ばれています。

ではなぜ「聲の形」を連載、発刊した講談社が、今回「境界のないセカイ」では打ち切り、単行本の発売中止という、必要以上配慮をした判断を下したのでしょうか。

メディアの報道と当事者のニーズ不可視性のギャップ

それは、「LGBTというワードが急速に広まったにもかかわらず、当事者のニーズ可視化がされておらず、企業や団体が右往左往してしまっている」ことが原因であるのではないのでしょうか。

渋谷区のパートナーシップ証明書や、同性カップルの結婚式、LUSHのLGBT支援宣言など、昨今のメディアにおけるLGBTに関する話題はたえず報道されています。しかし、現実にはLGBT当事者がカミングアウトできる環境では到底ありません。

渋谷区のパートナーシップ証明書に関する条例を作成する際に実際にヒアリングをした当事者はこの条例案の構想時からの半年以上もの間でたった2人であったと、渋谷区の議会の傍聴で耳にしました。
それだけ当事者のニーズの掘り下げが足りていないのです。

先日のテレビ東京ワールドビジネスサテライトでのLGBT特集でも、ヘテロセクシュアルの男性が化粧をしてワークショップをしている様子を放映し、同性愛者の正しい理解がなされていないと批判を浴びました。

ニーズを掘り出し、適切な対応を

世田谷区議員の上川あや氏も、自身のツイッター上でこのように発言しています。

公共の諸制度で〈完無視〉の日本の同性カップルの現状を変えるべくトランスの私も奮闘中。昨年8月、区長室に事前プレゼンに入り、9月の本会議で区独自で同性カップルを承認する手立て構築を求めた。区長答弁は前向き!課題は当事者ニーズの不可視性!

当事者ニーズが可視化されていないのに、 LGBTというワードに感化され、実在するLGBTを怪物化してしまっているのではないでしょうか。

今後、企業や地方自治体には、少しずつ正しい知識をつけ、ニーズを掘り出し、特別視するのではなく、適切な対応をしてもらえることを望んでいます。

昨日、3月18日のブログにて幾夜大黒堂氏は追記にて以下のように発言しています。

 

【3/18追記】おかげさまでたくさんの出版社さまや他のイラスト関係の会社さまからお声をかけていただきました。本当にありがとうございます。
思ったいた以上に多くのご連絡をいただけたものですから現在私の方が対応しきれなくなりそうでして、後から見に来てくださった方には申し訳ないのですが一旦募集を止めさせていただきます。
情報拡散に協力してくださった皆様、ありがとうございました。

こうした作品や話題が、当たり前に話される社会になることを望んで、自分のできることをやろうと思います。

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