■あなたは実際に「遺言」を作ってみたことがありますか?
「私に何かあった時、家族ではなくパートナーに財産を遺したい」というご希望を、多くのカップルの方が持っていますが、実際に「何かあった時」を想定して、パートナーへ財産を遺すために、「遺言」を作っておくなどの法的対処をされているカップルさんはそう多くはありません。何故でしょうか?
それは、実際にそうなるということは、一番大事な人とのこの世の別れを意味しますから、多くの方は「そんなことはもっと未来の話だから、今は大丈夫。」「もっと年を取ってからで遅くない」と考えるからでしょう。せっかく楽しく幸せに過ごしているのに、そんな暗い話は後回しにしたいという気持ちが先にきて当然ですよね。
■男女の「婚姻」では当然に得られている法的立場だが・・・
男女の「婚姻」という制度の中で、「配偶者」は当然に、お互いの財産について法的立場を得ることができます。この立場のことを「法定相続人」と言いますが、LGBTカップルは、自分たちで「遺言」という制度を使わない限りは、パートナーが死亡した場合、お互いの財産に対して法的な立場を得ることができません。
万が一の時には、パートナーの親族が「法定相続人」ですから、パートナー名義だったの預貯金や家などは、全て「法定相続人」のものとなります。つまり、「何もしていない」=「何かあってもパートナーに全く財産を遺すことはできない状態にある」ということなのです。「ご結婚」を考えるみなさんにとって、この「リスク」がある状態は決して良い状態ではないと言えます。
■どんなものが「相続財産」になるのか?
では、実際にどんなものが相続財産になるのか見ていきましょう。
家計を一緒にしている方、一緒にマンションや家を買った方、一緒に事業をやっている方などは、遺されたパートナーは生活に大きな影響が出ることになるので、あらかじめ対処できるようにしておきましょう。
■「遺言」は財産のこと以外も指定できます!
遺言では、前述の財産の処分方法に関するもののほかにも次のことが指定できます。
遺言執行者とは、相続財産の管理など「遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務」を持つため、相続人は相続財産の処分や遺言の執行を妨げる行為はできません。親族との争いを避けるためにも、LGBTカップルが作る遺言には、弁護士や行政書士などの専門家を「遺言執行者」に指定しておくことが望ましいと言えるでしょう。
■「遺言」を作っておけば「全財産」をパートナーに遺せるのか?
相続には「遺留分」という問題があります。前述の「法定相続人」のうちの「親、配偶者、子」には不法な遺言から親族を保護するために、申立てによって「遺留分=全財産のうち2~3分の1」を与えられるという規定です。パートナーに親や子がおらず、兄弟姉妹しかいない場合は「遺留分」がないので問題ありませんが、親や子がいる場合は、カミングアウトしているしていないにかかわらず、この「遺留分」に注意が必要です。
■大切なのは「実効性のある遺言」「法的に有効な遺言」をつくること
「遺言」は法的拘束力のある文書ですので、書式や形式を守らないと「無効」となります。また、「遺留分」に配慮したものを作成することで、争いを起こさないようにすることが大切です。LGBTカップルが養子縁組をしないという選択をする場合、きちんと遺言をつくることを検討してみてくださいね!