アメリカで生殖医療サービスを提供する「J baby」代表インタビュー 前編


この記事はJ babyの提供でお送りしています。

7月1日、フランス政府は独身女性や女性同士のカップルに対して、生殖医療の提供を認める方向で検討を進めているという報道がなされました。

参照:生殖医療、全女性に解禁へ=同性カップル出産可能に-フランスhttp://www.afpbb.com/articles/-/3134160?act=all

答申では「家族の在り方は変化している。独身女性や女性カップルに生殖医療を禁じることは問題だ」として締めくくっています。男性同士のカップルが利用する「代理母」の出産に関しては、代理母になる女性にとって心身への悪影響を懸念し、容認されませんでした。
しかし、「家族の在り方が変化している」と政府が結論づける程度には家族観の変化が実際にあり、生殖医療の技術は日々進んでおり、2年前の記事ではありますが、男性の皮膚細胞から卵子を生成することに成功したと発表しました。要するに、ゲイカップルが二人の間でこどもを持てる可能性を示唆したということになります。

参照:Cell breakthrough to bring two-dad babies
http://www.thesundaytimes.co.uk/sto/news/uk_news/Science/article1522406.ece?shareToken=5754e61bc815db859745094a64bf36ac

賛否両論のある代理母出産ですが、変わる家族観、まったなしの技術革新、私たちはそうした事実に対して、自分たちの生きる未来、もしくは現実として、向き合っていかなければならない時代になっているように思います。

日本では現在、人工授精や代理母出産といった、生殖医療は夫婦間のみに提供され、同性のカップルでは医療サービスを享受することはできません。

Letibee lifeでは、ゲイカップルやレズビアンカップルが受けられる生殖医療サービスや、いろいろな家族のかたちについて、今後もできうる限り多方面から取り上げていきたいと思います。

今回は、1年半にも日本で「ゲイカップルの代理母出産」に関するセミナーを行われたJ babyが10月に日本で第2回目となるイベントを行うということで、ご連絡をいただきました。Letibee Lifeでは、賛否両論様々な意見を掬い上げることを前提に、インタビューを実施させていただくことにしました。

前編ではJ babyをスタートさせた斉藤さんに、設立に至った思いや、J babyのサービス、アメリカでの生殖医療の現状についてお聞きしていきたいと思います。
後編では、賛否評論のあった批判の方にフォーカスを当てて、J babyがそれぞれの課題に対してどのような価値観を持っているのか、どのようにそれぞれの課題に対応しているのか、そもそもできているのか等、詳しくお聞きしていきたいと思います。

聞き手:外山トム

なぜJ babyを立ち上げたのか

letibee_editer:『J baby』を立ち上げたきっかけを教えてください。

saito:もともと男性同士のカップルで子供が持てるというのを知らなかったんですが、ある日とある記事で、エルトンジョンとかリッキー・マーティンの話を読んで、卵子提供と代理出産で子供が持てるんだっていうことを知りました。
それをきっかけに、私とパートナーのマイケルで子供を育てたい、という気持ちが湧き上がってきたんです。

そして、まず何をしたらいいかということで、卵子提供とか代理出産のエージェントに話を聞きに行ったんですが、なかなか日本人のドナーがなかなか見つからなかったんですよね。そうやって何件かエージェントに話を聞いたあと、クリニックと弁護士事務所にも話を聞いたんですけども、そうやって自分たちのことを調べているうちに、大変なことも多かったんです。日本で子供をもちたいと思ったゲイカップルやレズビアンカップルが安全に、サポートを受けながらできるようにするために、同じ思いを抱えている人たちの力になれるかもしれないというところから始まったんです。

saito:もともと、CFP(California Fertility Partners※)にも日本からの問い合わせがあったようで、そこから、私たちがサポートを提供するようになりました。同時に、その方たちは日本人の卵子ドナーも必要だと知り、そこから卵子ドナーの紹介も始めました。

※CFP(California Fertility Partners)とは…
J babyが提携する、リングラー医師の生殖医療クリニック。

クリニック自体はもう30年以上されていて、一緒に活動するようになって、J babyは今6年目になりました。

letibee_editer:J babyではどのようなサービスを提供されているのでしょうか?

saito:J babyはカリフォルニア州ロサンゼルスを拠点に、日本では行えない生殖医療のサポートや情報提供を行っています。主に第三者が関わる生殖医療で、卵子提供、精子提供、代理出産を提供しています。

アメリカでの代理出産の現状

saito:まずアメリカは国の法律ではなくてそれぞれ州の法律によって決められているんですね。卵子提供はほぼ全州大丈夫なんですけれども、代理出産はまず全州合法ではなくて、例えばニューヨーク州では禁止なんですね。例えばニューヨーク州に住まれているゲイのカップルが子供を持ちたい場合は、代理出産が合法な州に住んでいる代理母さんにお願いして産んでもらって、その生まれてきた子供をニューヨーク州に連れて帰るという形をとることになります。

saito:アメリカでは、1世帯ではなく、ソーシャルセキュリティナンバーというものが各個人に与えられます。その出生証明書は州によってそれぞれ違っていて、カリフォルニア州とネバダ州のみは子供が生まれる前に、子供の親権を全てご夫婦側に渡すことができるんです。

letibee_editer:その条件は不妊治療や代理母出産に影響はあるのでしょうか?

saito:そうですね。他の州だと手続きが手間になる、時間もかかるしお金もかかることになります。生まれた時点ではまだ代理母さんの名前が残ってて、それを養子にするという形で手続きを進めていくんですね。ですので、カリフォルニア州とネバダ州が一番代理出産には優しい州になります。

saito:カリフォルニア州は既婚、未婚、男性、女性、関係なく、医師が認めさえすれば代理出産を行うことができるんですね。代理出産が難しい場合としては、女性の方が仕事が忙しいので代理母に産んでほしいとか、出産が痛いので自分で産みたくないから代理母に産んでほしいという場合ですね。なにかしらの理由があってそれが医師によって認められないと代理出産はできないことになっています。
例えば、ゲイカップルはまず子宮がないので自分たちで妊娠することができないので、その時点で認めてもらえます。

斉藤さんのライフストーリー

letibee_editer:斉藤さん自身のお子さんがいらっしゃるということですが、今おいくつになられるんですか?

saito:今9ヶ月です。去年の3月に移植して12月に生まれました。

letibee_editer:斉藤さんは子育てをしてみて、それまでの生活から考え方が変わったり、周囲との関係性が変化しましたか?

saito:なんて言うんでしょう、自分も子育てについて勉強しながらというか習いながら進めているので、難しいんですけれども…。自分が思っていたよりも、まずその男性同士で子供を持つことに対して周りの目が気になったりとかそういったのは、意外にも友達も問題ないというか歓迎して一緒に喜んでくれてるし、マイケルの両親はもう亡くなって居ないんですけれども、私の両親家族は自分が思っていたほど心配していたほどではなく、受け入れて一緒に喜んでくれました。

letibee_editer:では、カミングアウトもされていて、お子さんがいらっしゃるということも既にお伝えされているんでしょうか?

saito:そうですね。去年の4月に京都で両親と会ったんですけれども、その時にマイケルを紹介して、パートナーであり結婚している主人であり、今から子供を持つ、家族を一緒に築こうということもその時、去年の4月に伝えました。

その時はまあちょっとびっくりしながら、嬉しいのかちょっと悲しいのか微妙なところだったと思うんですけれども。

letibee_editer:カミングアウトはいつ頃にされたんですか?

saito:その時ですね、去年の4月です。私の母は私が幸せならそれでいいよと言ってくれたので。その分楽にはなりました。もちろん、家に帰ってお母さんたち母と父はちょっと悩むというか、色々と考えたとは思うんですけれども、そういうことはあまり言わずに優しい言葉をかけてもらえたのでありがたいですね。

今度10月のそのイベントの後に息子のイライジャを連れて、山口に行く予定です。その時に、両親も兄弟にも紹介しようと思っています。

letibee_editer:ご兄弟にも既にカミングアウトされているのですか?

saito:そうですね、2人とも知ってます兄と姉と。姉は以前ロスに来た時に、3年くらい前に話しました。全然全く疑いもしなかったって言ってました。一緒にマイケルにも会って、マイケルのお母さんにも会ってみんなで食事をしたりして。
両親もストレートであってほしいとは思ってたかもしれないですけれども。私がゲイであることとか、すでに結婚してマイケルのことも子供のことも受け入れてもらえたので、本当にありがたいですね。

letibee_editer:当時渡米されるきっかけはなんだったんですか?

saito:大学の時にロサンゼルスにホームステイで来たことがあって、夏休みを利用して。その時に、何が好きっていうわけじゃないですけども、アメリカの生活やのんびりしている雰囲気というか、そういうものが単純に気に入って、いつかメリカに住みたいと思いました。
当時は子供を持つことは全く考えていませんでした。

かつて、「結婚防衛法(DOMA)」という連邦法がありました。男女間の婚姻のみを認める、という法律で、州法に基づいて同性のパートナー同士が婚姻関係を結んでいても、連邦補助、いわゆる福利厚生が適用されない、という法律です。
それが2013年に撤廃され、「提案8号(Proposition 8)」というカリフォルニア州の同性同士の結婚を禁止する法律も同時に撤廃されました。そのときに、私たちも結婚したんですね。

ただ、それまでも婚姻関係を結んでいなくとも、子供を持っている同性カップルはいました。アメリカでは、男女のカップルを含め、結婚と子供を持つことは切り離して考えている方が多いと思います。

アメリカ、カリフォルニア州での結婚観とLGカップルが子供をもつことについて

letibee_editer:日本では、「できちゃった婚」という言葉が使用され、それに対する世間の反応から、子供は結婚してから授かることが普通である、という考え根付いていると感じてます。そうした中で、同性婚が認められていない日本で、レズビアンカップルやゲイカップルが子供をもつということに対して、飛躍してしまっているような印象を受けて、こうした医療サービスへの批判があった側面もあったように思いますが、アメリカ、特にカルフォルニア州ではいかがでしょうか?

saito:そうですね、結婚イコール子供を持つというわけではないです。子供を持つためには結婚しなきゃいけないとか、結婚したから子供を持たなきゃいけないとは限らないと考えている人が多いように感じます。結婚と子供を持つっていうのは別々で考えている人が多いと思います。

letibee_editer:選択肢として子供を持つということがレズビアンカップルやゲイカップルにとって、当たり前になってると捉えて良いんでしょうか?

saito:そうですね。ただ実際には自分の周りにゲイのカップルで子供を持っている人がいっぱいいるかと言われるとそんなにはいないですね。

letibee_editer:それは何故だと思われますか?

saito:まずそのゲイやレズビアンのカップルは、今は結婚っていうものがあるんですけれども、ずっと長い目で付き合う、なんていうんでしょうね…一生最後まで暮らす考えがなかったのもあるんじゃないでしょうか。

あとは予算の面もあると思います。保険が使えないので。その費用を全額払わなければいけないので、欲しいけど経済的に難しいっていう人もいると思うんですよ。

letibee_editer:なるほど。では、日本ではたまに耳にすることでもありますが、ゲイカップルとレズビアンカップルが友人同士等で直接、契約書等を作成して、個人間で一緒に子供を作る、という家庭はあるのでしょうか?

saito:個人間はあまり聞かないですね。やっぱり後々、将来的にトラブルになることを避ける傾向にあります。例えばエッグドナーとか精子提供、精子ドナーっていうのは友達に頼むわけではなくて、匿名のドナーバンクから提供してもらっているので。友達となると、友達関係も一生続く保証はないですし、あと親権の問題も、契約書では親権について明記されていても、友達だとなかなか強くは言えないこともあります。だから初めから知らない人からの提供された精子だとか卵子であれば、そういった問題は軽減される傾向にあると思います。友達同士でするケースは私の周りでも少ないですね。

saito:ただ、私は子供はどういった家族構成であっても、愛情をいっぱい注いで育てれば幸せになると信じて子育てをしてます。どういった形態がダメでどういった形態が良いというのは全くありません。責任を持って子供を愛せる環境があればいいとは思います。


前編では、J babyをスタートさせた斉藤さんに、設立に至った思いや、J babyのサービス、アメリカでの生殖医療の現状についてお聞きしました。
後編では、賛否評論あったその批判の方にフォーカスを当てて、J babyがそれぞれの課題に対してどのような価値観を持っているのか、どのようにそれぞれの課題に対して対応しているのか、そもそもできているのか、詳しくお聞きしていきたいと思います。
主に以下の内容についてお聞きしています。
・生理的、宗教的な抵抗感について
・母体の安全について
・ぶっちゃけ聞きたいお金の話-母体にはいくら払われている?
・子供のアイデンティティクライシスについて
・日本の法制度の下では、どのように対応されるのか?

後編はこちらから

聞き手:外山トム

<イベント紹介>
同性カップルの家族構築を考えよう(ゲスト:リングラー医師)

私達と一緒に、日本の同性カップルがどのようにして家族構築を行えるのか一緒に考えてみませんか?
本イベントの目的は、アメリカでの家族構築の体験談を交え、同性同士のカップルが子供を授かるにはどのような選択があるのかを知っていただく事です。

イベントの前半は、J babyの代表でもあるアメリカ在住の斉藤が、男性同士のカップルでどうのように子供を授かったのかお話をさせていただきます。また、参加者の方からの質問にもお答えします。

後半は、ゲストであるガイ・リングラー医師より、アメリカから世界最高水準の生殖医療により卵子提供と代理出産で子どもを持つためのセミナーが2回目の開催。

<イベントの概要>
・タイトル: 同性カップルの家族構築を考えよう(ゲスト:リングラー医師)
・日時:2017年10月8日(日)15:00〜17:00
・場所:Nagatacho GRID 6F Attic(東京都千代田区平河町2-5-3)

<イベントの内容>
1部: 男性同士で子供を授かった体験談
2部: リングラー医師によるアメリカ生殖医療における卵子提供と代理出産

<お申し込み>
予約制です。
https://ssl.kokucheese.com/event/entry/488704/

主催者のJ babyは日本語で不妊治療および生殖医療プログラムのコーディネートを行う会社です。
ゲストのガイ・リングラー医師はCalifornia Fertility Partnersの代表で、アメリカ・カリフォルニア州で30年以上実績のある生殖医療クリニックです。

J baby
http://jbaby.jp/

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