アメリカで生殖医療サービスを提供する「J baby」代表インタビュー 後編

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この記事はJ babyの提供でお送りしています。

前編では、J babyをスタートさせた斉藤さんに、設立に至った思いや、J babyのサービス、アメリカでの生殖医療の現状についてお聞きしました。
前編はこちらから
アメリカで生殖医療サービスを提供する「J baby」代表インタビュー 前編

後編では、賛否評論あったその批判の方にフォーカスを当てて、J babyがそれぞれの課題に対してどのような価値観を持っているのか、どのようにそれぞれの課題に対して対応しているのか、そもそもできているのか、詳しくお聞きしていきたいと思います。

主に以下の内容についてお聞きしています。

・お金の話-母体にはいくら払われている?
・母体の安全について
・子供のアイデンティティについて
・日本の法制度の下では、どのように対応されるのか?
・生理的、宗教的な抵抗感について

お金の話-代理母にはいくら払われている?

letibee_editer例えば、代理母の方が経済的に弱者である場合、断れないような状況の中で不当な搾取が存在する可能性についての批判を見かけたことがありました。何か代理母の方の選定に基準などはあるのでしょうか?
 
saito代理母の方が、金銭を目的として申請するということはもちろんあるかと思うんですけれども、まず母体の健康はお子さんにとっても重要ですから、国からの補助をもらって生活している方は代理母になれません。
独身の代理母さんや離婚してる代理母さんもいらっしゃいますけれども、家庭訪問を丁寧に行い生活が安定しているかどうか、経済的に安定しているかどうか、周りにサポートがあるかどうか、ということは確認しています。
サポートとは、例えば結婚していればご主人からのサポートがしっかりあるのか、独身の女性であればパートナーであったりご家族のサポートがあるかどうか。どうしても一人では負担が重すぎますから。
また、代理母さんというのは必ず過去に子供を産んだことのある女性なんですね。ということは代理母自身に子供が居るということなので、子育てがみんなあるんですね。それに加えて他の人の妊娠と出産ってなるとそれだけのサポートがないと、精神的にも身体的にも困難になってしまいます。
 
saitoまた、代理母さんはだいたい40人から50人登録申し込みがあって、その中でおよそ1人が正式に登録され、マッチングに至るまでも工程があり、非常に審査が厳しくなっています。
 

代理母に支払われる金額は

letibee_editer家庭の経済状況についてのお話がでましたが、差し支えなければ、代理母の方に支払われる金額はどういった内訳になるのでしょう?

J babyのHP内で公開されている代理母出産にかかる費用とその内容
代理出産プログラム費用: $150,000~/1,650万円~($1=110円計算)
【支払い項目の例】
・ 体外受精・胚移植医療費・検査費・技術料、薬剤代金
・ 心理鑑定、心理カウンセリング
・ 代理母謝礼・経費・障害保険掛金・医療保険掛金・生命保険掛金
・ 代理母周産期検診・出産費用、新生児検診・入院費用、新生児用医療保険掛金
・ 代理母登録機関手数料
・ 弁護士費用、親権申請費用、出生証明書費用、米国パスポート取得代行
・ コーディネート手数料
・ ロサンゼル滞在中の空港やホテル、クリニックへの送迎
・ 治療に必要な通訳と書類の翻訳
・ 代理母との面会の付き添いと通訳

saitoエージェントごとにも異なりますが、初めての代理母の方に支払われる謝礼金は、3万5千ドル~、日本円で385万円~です。妊娠をしてから出産まで10ヶ月に分けて毎月支払われます。
それ以外にも別途必要経費や代理母の方につく弁護士の依頼費もカップルから支払われた金額から支払いを行う形になっています。
必要経費とは、妊娠・出産に係る必要なものに対して全て支払われます。病院の診察費用やマタニティ用品や洋服、診察時に預けた子供のベビーシッターや施設費、郵送が必要になった時に切手代や、コピー代もカップル側が支払います。
 

代理母の安全に対するケアはされているのか

letibee_editer子供を産む母体になる方には命の危険性も伴いかと思います。そうした安全面に関してはどのようなケアをされていますか?
 
saito出産に関しての安全性は、男女のご夫婦の妊娠と出産と同じように何千人に一人の割合で亡くなられていると聞いているので、リスクがゼロというわけではありませんが、代理出産だからと言って出産による死亡率が上がることはありません。過去の妊娠と出産に何かしらの問題があった場合や少しでも気になる点がある場合は代理母にはなることが出来ず、妊娠期間も多くの検査を受けながらとても慎重に進められていくので、代理出産による出産の場合の方が危険のリスクは少ないと思われます。
体外受精による安全性に関しては、受精卵が作られる前に卵の提供者と精子の提供者には、アメリカのFDA(food and drug administration ※)が指定している検査項目があるんですね。主に感染症なんですけれども、HIVとか肝炎とかあとは性感染症などの検査を全て行なって、そういった安全性の確認をしてから受精卵は作られてますので、代理母が受精卵から何か感染するということは心配ありません。

※FDA(food and drug administration)とは…
アメリカ食品医薬品局
医療品や食の安全を管理する政府機関。FDAの審査基準を通った食品や医療品のみが流通する。

saitoFDAが卵子を提供する場合はこういうテストをしなければいけない、精子を提供する場合はこういうテストをしなければいけない、代理出産の場合はこういうテストをしなければいけないっていうガイドラインを作っているんですね。なので医師たちはそれに従って検査に通ったものでないと使うことはできません。
私自身が逆に心配なのは、医療機関を介さず、個人間で行う人工授精です。例えば、日本のレズビアンやゲイのカップルは不妊治療クリニックで治療が受けれないということがあるので、それ以外にやり方がないのが問題でもあるのですが、ある意味危険な行為だと思います。友達のゲイのカップルからもらった精子をそのまま女性へ自己人工授精するというのを聞きますが、そうした場合は一切の検査が行われていないので、仮に性感染症に罹患していた場合、母体や子供に性感染症等が感染する可能性が大いにあり得ます。そういった意味では、アメリカでは検査の義務がありますので、代理母の方や子供への感染リスクの心配はないと言えます。

訴訟問題に発展したケースはあるのか?

letibee_editerこれまでカップルと代理母間で訴訟問題に発展したことなどはないのでしょうか?
 
saito弊社を通してではありません。カップル側と代理母側に、それぞれ生殖医療に精通した弁護士さんが付きますので、お互いが安心して過程を進めることが出来ます。
 
letibee_editerカップルが代理母の方を訴えることはできないということですか?
 
saito契約書で定められていることであれば訴えることはできません。代理母さんは出産後、生まれた子を渡さないということも出来ないですし、子の親権を得ることも出来なくなっています。
 

子供のアイデンティティについて

letibee_editer次は子供のアイデンティティについてです。子供はどうしても生まれた後に知るわけで、出自の選択はできません。このサービスの関係者は医療サイドとカップルと代理母の方だけではないですよね。もちろんそこから生まれる子供も含まれます。そうした場合、アイデンティティクライシスに陥ってしまったり、しわ寄せが子供にいってしまうこともあるかと思います。子供の対応についてはどういったものがあるのでしょうか?
 
saito子供の出自に関するアイデンティティの話としては、①代理母、②卵子・精子ドナー、③カップルの3つをそれぞれ見ていくことになります。

代理母について

saito代理母の方に関して言うと、カップルと代理母の方はそれぞれ最初の段階で情報を交換します。移植前から出産までSkypeや電話、Eメールなどでコミュニケーションを取っていただいて、生まれた後の交流を続けるかはお互いの希望次第です。毎月連絡を取るケースもあれば、一年に一回ぐらいクリスマスやお正月に連絡を取るとか産んだ後全く連絡を取らないケースもあります。それは自由ですね。
この時、代理母と卵子ドナーは必ず違う人でなければいけないんですね。じゃないと、卵子提供者と母体の女性が同じ人だと自分の子を妊娠してしまうので、愛情が湧いてきて子供を渡したくなくなるという可能性が大いにあります。昔はアメリカでもありましたが、今は卵子提供者と代理母というのは別々なのが基本ですね。
例えばカリフォルニアであれば、実際代理母の方に結んでもらう契約書の中に、妊娠中に子供の親権自体を渡しますという書類にサインをして裁判所の許可も得てるので、産まれた後に子供を渡したくないという申し立てはできなくなっています。

 

卵子・精子ドナーについて

saito代理母さんに関しては、名前も住所もわかって連絡も自由に取れるんですが、精子ドナーと卵子ドナーは基本的には匿名です。例えば、子供が大きくなって、自分の産まれてきた経緯を知りドナーさんに会いたいと言っても、会うことはできません。同じように、卵子を提供したドナーさんも産まれてくる子供には会うことはないです。もし子供が二十歳になった時にドナーさんに会えるようにしておきたければ、オープンドナーと言って連絡を取れるようにすることはもちろん可能ですが、ほとんどは匿名のドナーです。そういう意味では子供は選べずに、最終的には親の判断ということです。卵子提供だけではなくて、養子もそうですよね。養子も産みの親に会えるケースと会えないケースがありますが、それと同じです。
 
letibee_editerということは、提供する側も自分はオープンにするかしないかを選べて、提供される側もオープンかそうでない提供者を選ぶは自由ということですか?
 
saitoそうですね。卵子提供は選ぶ時に決めることができるので、ご夫婦とそのドナーさんがマッチしてから実際に卵子を摘出し提供することになります。その時点でお互いが匿名にするかオープンにするかを選ぶことができます。ですが、精子ドナーの場合はもう凍結してある精子を授かるので、凍結して登録する際には、提供側がオープンにするかどうか決まっていることになります。匿名の場合でも、将来的に、例えば10年後20年後両者が弁護士さんを通して同意すれば会うことはできます。
あとは例外として、精子ドナーもしくは子供が生死に関わる病気にかかった場合は、弁護士さんを通して同じように連絡を取ることが可能ですね。例えば、骨髄をもらって移植すれば助かるケースや、臓器を移植すれば助かるケースの場合は連絡が取れるようになっています。

カップルについて

saitoあとはアイデンティティクライシスというよりは、いじめの問題です。お子さんがゲイカップル、レズビアンカップルのお子さんとして育っていく中で起こりうる問題です。
これは日本でも起こりうると思いますが、マイノリティ、要するに何か違うところを見つけてそこを攻撃しますよね。これに関しては社会が変わらなければ解決は難しいですね。

日本の法律ではどのように処理されるのか

letibee_editer実際にアメリカで子供が産まれた時に、国籍や申請などの法律的な対応はどのようになっているのでしょうか?
 
saitoまずアメリカで産まれた子供は両親の国籍がなんであろうと、産まれたアメリカ国籍が与えられるので、確実にアメリカの市民権をまず得ることができます。ですので無国籍の子供ができることはないです。手順としては、出産後アメリカの市民権が得られますので、アメリカのパスポートを取ってから日本に帰国して、それぞれ皆さん戸籍に入れる手続きをされます。
 
letibee_editerカリフォルニアでは、生まれる前に、代理母から親権の受け渡し手続きを完了できるとお聞きしました。
 
saitoはい、裁判所の手続きを通して、出生前に全て完了することができます。
 
letibee_editerその後は、日本のレズビアン、ゲイカップルだとどういう手続きになるのでしょうか?
 
saitoレズビアンカップルはご自身で日本で出産を行うことになるので、日本で出生届を出すことになります。
 
saitoゲイカップルに関しては、代理母の協力を得ながら、精子提供者が父親として戸籍へ登録されるということになりますが、代理母は既に親権を放棄しているので、どのようなことがあっても親権を持ちません。
 
letibee_editerレズビアンカップル、ゲイカップルが気を付けるべきことはありますか?
 
saito戸籍上では卵子、精子提供者でない方は子の母親、父親にはなれませんので、卵子、精子提供者が亡くなったことを考え、日本で弁護士に相談して遺言状を作るとか、養子として迎え入れる等の申請をしなければいけません。そうしないと非提供者側の方と子の関係が絶たれてしまいます。
 
saito男女のカップル、男性同士のカップル、それぞれの手続きはケースバイケースになります。法務局の人にも問い合わせましたが、海外での卵子提供や代理出産で産むことは違法ではないという回答を頂いてます。日本で認めていない治療法だからといって拒否されるのではなく、どうやったら戸籍に入れられるか一緒に考えて対応してくれているので、協力的です。
 

生理的、宗教的な抵抗感について

letibee_editer最後の質問になりますが、生理的もしくは宗教的な抵抗感のある方って居ると思います。実際に日本でもそうした意見が散見されました。それに関してはどのように考えていらっしゃいますか?
 
saito代理出産だけでなく、アメリカでは同性婚に対しても反対している人がまだ多くいるのが現状です。なので、卵子提供や代理出産だからダメという考え方をみんなが持っているわけではありませんが、全員に理解してもらうのは難しい課題だと思います。
 
letibee_editer実際にそういった形で産まれてきてるお子さんがいる以上、やり方の是非の議論があるとして、その子たちが割りを食ってしまう状況、というか、そうした批判に晒されて嫌な思いをしたり、居場所がなくなってしまう、という状況は避けなければいけないですよね。
 
saitoそうですね。やっぱり全てを解決するには愛だと思います。それは、ゲイの差別とか代理出産や卵子提供に対する偏見だけでなく、全てにおいてそう思います。人間ですから、好き嫌いはもちろんあるとは思うんですけれども、壁を作るのではなくて、みんなで仲良く生きていける世界を、協力して作っていかなければいけないんだと思います。

終わりに


今回はアメリカで生殖医療サービスを提供する「J baby」の代表、斉藤さんにお話を伺いました。
まだまだ代理母出産や卵子提供、精子提供などを含む生殖医療に関しての議論はされ尽くしていないように思います。

ですが、社会は日々移り変わっています。
家族観は変容し、技術革新は進みます。
「脳死」は人の死か、本人の望まない延命措置と尊厳死、受精卵の染色体異常検査など、日々新たな倫理観に関わるジレンマが次々と生まれています。
かつ、こうした生殖医療には、本人たち当事者以外に新たに生まれ来る生命が関わってくるため、技術を利用する当事者の「幸福追求権」だけでその是非を判断することはできません。
望む人がいれば、日本でも、誰が批判しようが、実際に生殖医療技術を駆使し、子供が生まれます。
どのような価値観をもっていようが、生まれてくる彼らが嫌悪感によって社会に殺されないような環境を用意しなければいけないと強く思います。

前編の冒頭にも記したように、私たちはそうした事実に対して、自分たちの生きる未来、もしくは現実として、向き合っていかなければならない時代になっているはずです。

その一つの判断材料として、J babyのイベントに参加し、実際に話を聞いてみるのも、一つの手段かもしれません。
レズビアンやゲイカップルだけではなく、すべての方が参加可能だとのこと。
ぜひ10月8日足を運んでみてはいかがでしょうか。

聞き手:外山トム

<イベント紹介>
同性カップルの家族構築を考えよう(ゲスト:リングラー医師)

私達と一緒に、日本の同性カップルがどのようにして家族構築を行えるのか一緒に考えてみませんか?
本イベントの目的は、アメリカでの家族構築の体験談を交え、同性同士のカップルが子供を授かるにはどのような選択があるのかを知っていただく事です。

イベントの前半は、J babyの代表でもあるアメリカ在住の斉藤が、男性同士のカップルでどうのように子供を授かったのかお話をさせていただきます。また、参加者の方からの質問にもお答えします。

後半は、ゲストであるガイ・リングラー医師より、アメリカから世界最高水準の生殖医療により卵子提供と代理出産で子どもを持つためのセミナーが2回目の開催。

<イベントの概要>
・タイトル: 同性カップルの家族構築を考えよう(ゲスト:リングラー医師)
・日時:2017年10月8日(日)15:00〜17:00
・場所:Nagatacho GRID 6F Attic(東京都千代田区平河町2-5-3)

<イベントの内容>
1部: 男性同士で子供を授かった体験談
2部: リングラー医師によるアメリカ生殖医療における卵子提供と代理出産

<お申し込み>
予約制です。
https://ssl.kokucheese.com/event/entry/488704/

主催者のJ babyは日本語で不妊治療および生殖医療プログラムのコーディネートを行う会社です。
ゲストのガイ・リングラー医師はCalifornia Fertility Partnersの代表で、アメリカ・カリフォルニア州で30年以上実績のある生殖医療クリニックです。

J baby
http://jbaby.jp/

前編はこちらから
アメリカで生殖医療サービスを提供する「J baby」代表インタビュー 前編

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