天才詐欺師の凄まじい純愛!ゲイ映画の枠を超えた名作『フィリップ、きみを愛してる!』

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これぞ映画!使い古された「笑って泣ける」を進化させた名作!

これは恋愛映画なのか、犯罪映画なのか。コメディタッチで繰り広げられるとんでもないストーリー。観客は爆笑して、いつの間にか号泣している。「笑って泣ける」というキャッチコピーはすでに使い古された感がありますが、これぞ「笑って泣ける」の真髄!ゲイカップルを主人公にした、そんな珠玉の映画があります。それは…

『フィリップ・きみを愛してる!』(2009年/アメリカ・フランス)

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製作総指揮はあの『レオン』のリュック・ベッソン。主人公は、愛する恋人フィリップのためにありとあらゆる手段を使う天才詐欺師・スティーヴン。彼の人生はまさに壮絶の一言。理由もわからず養子に出されたことを知り、母を探すために警察官に。結婚し妻も子供もいたが、あることをきっかけにゲイとして堂々と生きることを決心。そこからは愛する恋人のため、とにかく嘘に嘘を重ね、物語は思いもよらぬ方向に疾走していく…。ぜひネタバレ無しで観ていただきたいので細かくは書きませんが、スティーヴンの行動はきっとあなたの予想を上回るでしょう。

いくら映画だからってここまでやるか?!

観ていてこんな風に突っ込みたくなりますが、なんとこの映画、実話を元にしているというから驚き。実話から生まれたLGBT映画は数有れど、ここまでぶっ飛んだ愛の物語がかつてあったでしょうか。

監督はメイキングで「ゲイの映画ではない。主人公はゲイだが焦点は別のところにある。二人の愛し合う男達の映画なんだ。」と語っています。まさにゲイ映画の枠を超えた超名作なのです。

主演俳優二人の名演技に注目!

スティーヴンの常識を逸脱したあらゆる行動と、その根本にある情緒の不安定さまで見事に演じきったジム・キャリーはもちろん、相手役ユアン・マクレガーの演技派ぶりにも目を向きます。ユアン演ずるフィリップの可愛らしさには、思わず自分がレズビアンだと忘れそうになるほどのときめきを覚えました。そしてこの二人、ただの可愛らしいラブラブカップルでは終わらないところがまた流石。

スティーヴンはいくら愛のためとはいえ、とにかくやることが破天荒。本作ではコメディタッチで描かれていますが、破滅的な行動に走るさまは撮り方によってはかなり重くなりそう…。フィリップもまた、言動をよく観察してみると甘いマスクから想像出来ないほどの毒っ気を見え隠れさせます。そんな彼の小悪魔な一面も、スティーヴンを夢中にさせたのでしょうね。

こうした深みのある人物像を、主演のジムとユアンは見事に表現しています。だからこそ、普段なら「おいおい…」と引いてしまうような二人の言動がなんだか憎めず、気がついたら拳を握って応援してしまうのです。

現実世界のフィリップとスティーヴン、何を思う?

実話を元にしているということは、当然ながら映画ではない現実世界にフィリップとスティーヴンが存在したということです。

さて、ここでこの記事を読んでくださったあなたに豆知識をひとつプレゼント。
ユアン演じるフィリップの「ご本人」が実は本編にさりげなく出演しています。後半の法廷のシーンでスティーヴンの隣にいる、金髪の素敵なおじさまがその人です。二人の物語の映画化は、フィリップ(本人)の尽力なくしてはありえなかったと言っても過言ではありません。

一方スティーヴンは、映画内、そして現実でも衝撃の結末を迎えます。スティーヴンはこの映画を観て一体何を思うのでしょうか。私は映画の中のスティーヴンしか知りませんが、彼ならきっとこんな感想を口にするんじゃないかと思います。
「俺の人生って傑作だな!」

次に観る映画をお探しの方にぜひおすすめしたい作品です。LGBTもそうでない人も楽しめると思いますよ。

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角 亜維子

平成生まれのレトロ育ち。 女子美術大学卒。 幼少期より抒情画やアングラ演劇に親しむ。 憧れの女性像は山口小夜子、イーディ・セジウィック、大島弓子作品のキャラクター。 レズビアンであり、特定非営利活動法人ReBit のメンバーとしてLGBTに関する出張授業や講演にも参加している。 同法人運営WEBサイト「LGBT就活」編集長兼ライター。 雑誌編集インターン、広告会社ライター等を経て現在はフリーランス。 随筆、評論、インタビューからフィクションまで、執筆お仕事募集中。