LGBT&アライが”なら国際映画祭2016”に注目すべき理由

2010年から2年に一度開催されている「なら国際映画祭」。
2016年は9月17日(土)〜22日(木・祝)にかけて「第4回なら国際映画祭2016」が開催されます。


映画なら、世界がつながる。
一三〇〇年前から、この地で異国の人々が出逢い、それを歓び、文化が生まれました。
その歴史を継承し、そこに「映画」という「もうひとつの人生」が加わり、未来へとつなぐ。
そんな想いを込めて、なら国際映画祭は今年で四回目を迎えます。
映画祭に関わってくださるすべての皆さまに感謝を込めて、ここに特別な時間をお届けいたします。
この六日間で起こる奇跡にお立ち寄りください。
引用元:なら国際映画祭2016公式サイト

というテーマを掲げたこの「第4回なら国際映画祭2016」には、セクシャル・マイノリティ当事者およびアライの皆様にとっても注目すべきプログラムがあるのです。

実行委員の方へのインタビューも交えて、「第4回なら国際映画祭2016」の注目ポイントをご紹介しましょう。

「イート・ウィズ・ミー」上映と、トークセッション「話そう!LGBT」

様々な作品上映プログラムが組まれている「第4回なら国際映画祭2016」の中でも目を惹くのが「話そう!LGBT」というプログラムです。

このプログラムには下記の企画が用意されています。


1)映画「イート・ウィズ・ミー」上映
2)ドラマシリーズ「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」上映
3)トークセッション「話そう!LGBT」
4)「OUT IN JAPAN」写真展

9月19日(月・祝)に上映される映画「イート・ウィズ・ミー」は、2015年の「第24回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭」(現:レインボーリール東京)で上映され、大きな話題を呼んだ作品です。

■物語
オジさんの経営する中華料理店を継いだものの、客も少なくやる気も無く、男関係もうまくいかないゲイの主人公。そこへ、父と喧嘩して家出して来た母がいきなり現れます。ゲイだということを秘密にしている主人公にとって、準備ないままに母との同居は危険がいっぱい。案の定、母にゲイだとバレてしまい……。

クローゼットのゲイにとって一大事である、母へのゲイばれ。
息子がゲイであった衝撃を受け止めきれない母親。
それぞれ人生に行き詰まり感を覚えていた2人にとって、最悪の状況にぶち当たったわけですが、しかしこの一件を通じて、息子もそして母の人生も新たな局面を迎えるのでした。
2人を取り巻く人物(隣人の白人女性や主人公の新たなボーイフレンド)が魅力的。
本人役でカメオ出演するオープンリー・ゲイのジョージ・タケイも実に印象的。
役者達の達者な演技と、どのキャラクターにも過剰に寄り添わないドライな演出が心地よく、衝撃を受け止めた先に希望が見えてくるラストまで楽しませてもらえる作品です。
映画を観た後には「餃子」が食べたくなること確実です。

この「イート・ウィズ・ミー」は、なんと無料で見られます。
ふとっ腹ですねえ「なら国際映画祭」は。

映画上映後にはトークセッション「話そう!LGBT」が開催されます。


これは、奈良の一般市民で、普段LGBTを縁遠いと感じている方々に、LGBTについて考えて頂くことが目標です。セッションの内容は、6ヶ国のLGBTの映画祭関係の業界の方々から、アジアのLGBTの現状や、LGBT映画、映画祭の事例を聞き出す方向になると思います。そこから、LGBTと、LGBT映画の未来を語るトークセッションになる予定です。
(なら国際映画祭ボランティア マーケティングチーム 梶正人氏)

登壇するのは、台湾、フィリピン、インドネシアのLGBT映画祭の主要スタッフを中心とした下記の皆さんです。

画像引用元 http://www.indonesianfilmcenter.com/cc/john-badalu-matulatan.html

画像引用元 http://www.indonesianfilmcenter.com/cc/john-badalu-matulatan.html

ジョン・バダル John Badalu
インドネシアの映画プロデューサー。脅迫や迫害を受けながらも屈せずインドネシアでLGBT映画祭 Q! Film Festivalを立ち上げる。

画像引用元 http://hubad.halukay.com/124637

画像引用元 http://hubad.halukay.com/124637

ニック・デオカンポ Nick Deocampo
フィリピンの映画作家。2015年10月にケソンで開催されたQC国際ピンク映画祭のチェアマン。

画像引用元 http://blog.teddyaward.tv/en/2016/01/14/the-teddy-jury-of-2016/

画像引用元 http://blog.teddyaward.tv/en/2016/01/14/the-teddy-jury-of-2016/

ジェイ・リン Jay Linn
台湾国際クィア映画祭(2016年は台北で10月22日〜30日開催)ディレクター。

ソーイン・ホン 映画研究家・LGBT運動家
レスリー・キー 写真家
菅野優香 同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科 准教授
モデレーター(司会者):松中権 認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ代表

このトークセッションを企画された理由をうかがいました。


なら国際映画祭2014では、NPO法人グッドエイジングエールズさんの持ち込み企画の形で「アゲンスト8」(「ジェンダー・マリアージュ」のタイトルで2016年劇場公開)+トークセッションイベントを開催しました。
また、2年に一度の映画祭の他に毎月行っているミニ上映会『ならシネマテーク』でアメリカ映画「チョコレート・ドーナツ」を2015年に上映し、大変大きな反響がありました。県外からわざわざ来られるお客様や、客席からカミングアウトする光景もみられ、映画の持つ力を感じました。
私たち(なら国際映画祭)には、”映画を使って社会的課題にアプローチをするべき”、というミッションもあり、今年は独自でLGBT映画上映+トークセッションを企画しました。これは初めて自主で行う試みです。
(なら国際映画祭ボランティア マーケティングチーム 梶正人氏)

心に深い余韻が残る映画「イート・ウィズ・ミー」の後に、どのようなトークセッションが行われるのか、とても楽しみです。
また、同日午前中には、Netflixオリジナルの話題の女囚レズビアン・ドラマ「オレンジ・イズ・ニューブラック」の第一話&第二話が上映されます。こちらも入場無料です。

■9月19日(月・祝) 「話そう!LGBT」
10:30 オレンジ・イズ・ニューブラック 会場:ホテルサンルート奈良
13:00 イート・ウィズ・ミー   会場:ならまちセンター・市民ホール
   ※イート・ウィズ・ミー上映後  トークセッション「話そう!LGBT」

OUT IN JAPAN写真展が奈良市内各所で開催

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2016年の東京レインボープライドやレインボーリール東京での展示も話題となった「OUT IN JAPAN」の写真展が、「第4回なら国際映画祭2016」初日から10月2日にかけて、奈良市内6会場で開催されます。


「あなたの輝く姿が、つぎの誰かの勇気となる」
「OUT IN JAPAN」は、市井の人々を含む多彩なポートレートを様々なフォトグラファーが撮影し、5年間で10,000人のギャラリーを目指す、認定NPO法人 グッド・エイジング・エールズ(松中権代表)によるプロジェクト。その存在を自然に表現し可視化することで正しい知識や理解を広げるきっかけとし、カミングアウトしたいと願い選択する人をやさしく受け止め応援できる社会づくりを目指して、2015年にスタートしました。今回は、世界的フォトグラファーのレスリー・キー氏とともに1年間かけて日本全国で撮影した、1,000人あまり約900枚のポートレートのうち約800枚を展示します。千三百年の歴史の中で様々な文化や価値観を受け入れてきた古都・奈良で、セクシャリティや生き方の多様性について参加者と共に考える機会をつくります。
引用元:PR TIMES

「OUT IN JAPAN」写真展は下記6会場で開催されます。開催期間は会場により異なりますのでご注意ください。

■各会場とも入場無料
ホ・スセリ 奈良市東向北町6 2F(東向北商店街内)
9月18日(日)〜9月22日(木・祝) ※期間中無休 
12:00〜20:00 ※最終日は18:00まで

きずなかふぇ 奈良県奈良市東向南町6(ひがしむき商店街内)
9月17日(土)〜9月22日(木・祝) ※9月20日(火)休み 
10:00〜19:00

ギャラリーまつもり 奈良市橋本町3-1 2F(もちいどのセンター街内)
9月17日(土)〜9月22日(木・祝) ※期間中無休 
12:00〜20:00 ※最終日は18:00まで

きらっ都・奈良 奈良市橋本町3-1 2F(もちいどのセンター街内)
9月17日(土)〜9月22日(木・祝) ※期間中無休 
9:00〜21:00 ※最終日は18:00まで

藝育(げいいく)カフェ Sankaku 奈良市下御門町28-1 2F(下御門(しもみかど)商店街内)
9月17日(土)〜10月2日(日) ※9月28日(水)・29日(木)休み 
12:00〜20:00 ※最終日は18:00まで

ホテルサンルート奈良 奈良市高畑町1110
9月17日(土)〜10月2日(日) ※期間中無休 
12:00〜20:00 ※最終日は18:00まで


いずれの会場も、奈良市中心市街地のカフェやギャラリーなどであり、映画祭メイン会場のならまちセンターとも徒歩圏で、一般の人が飲食や買い物をするような環境での展示となります。
(なら国際映画祭マーケティングチーム 梶正人氏)

コンペティション部門には、あのゲイ映画が参加

さらに注目すべきは、映画祭の華・インターナショナルコンペティション部門に、2016年レインボーリール東京でも上映され大きな反響を呼んだ「チェッカーで(毎回)勝つ方法」がノミネートされていることです。

レインボーリール東京で上映時の「チェッカーで(毎回)勝つ方法」ご紹介を含む記事はこちらです。
LGBT映画の祭典、私たちの映画祭「レインボー・リール東京」開幕!

■物語
両親を亡くし叔母の家族と暮らしている11歳のオートと21歳のエイクの兄弟。貧しいながらも平穏な生活を送っていた。ある日、兄のエイクに徴兵のくじ引きの知らせが来る。兄を兵役に取られたくないオートはある行動に出る。現在のタイ社会に潜む問題を提起しながら、その中で生きる兄弟の愛情を描く。タイのベストセラー『SIGHTSEEING』を原作に製作された力作。

徴兵くじ引き会というユニークな制度を物語の柱に据え、同性愛、トランスジェンダー、そしてタイ特有の性的な闇の部分までをも描き、深い印象を残す素晴らしい作品です。力作ぞろいのノミネート作品の中で、どのような評価を受けるのかとても気になります。


「チェッカーで(毎回)勝つ方法」は、プログラマーであるジェイコブ・ウォン、ルチアーノ・バリソネ氏から強い推薦があり、選考委員会でも好評であったことからコンペティションに選ばれました。レインボーリール東京での上映があったのですが、基本的にはコンペティションの作品は日本未公開のものに限定しているものの、この作品がとてもクオリティが高く、また配給が決まっておらず一般公開が未定だったこともあり、特別に選出されました。
また、2014年のコンペティションで最優秀賞を受賞した「THE NIGHT」は主人公がゲイの作品。
特にLGBTだから取り上げているわけではないですが、結果的に素晴らしいLGBT映画を上映するご縁があるように思います。
「チェッカーで(毎回)勝つ方法」も、観客や審査員にどう評価されるのか、実行委員の私たちも注目をしています。
(なら国際映画祭ボランティア マーケティングチーム 梶正人氏)

■チェッカーで(毎回)勝つ方法
9月18日(日) 15:30〜 会場:奈良県文化会館・小ホール
9月20日(火) 19:00〜 会場:ならまちセンター・市民ホール

「第4回なら国際映画祭2016」に、セクシャル・マイノリティ当事者およびアライの皆様が注目すべき理由をお分かりいただけましたでしょうか。
古都・奈良で文化の秋を堪能されては如何ですか?

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ABOUTこの記事をかいた人

いたる

LGBTに関する様々な情報、トピック、人を、深く掘り下げたり、体験したり、直接会って話を聞いたりしてきちんと理解し、それを誰もが分かる平易な言葉で広く伝えることが自分の使命と自認している51歳、大分県別府市出身。LGBT関連のバー/飲食店情報を網羅する「jgcm/agcm」プロデューサー。ゲイ雑誌「月刊G-men」元編集長。現在、毎週火曜日に新宿2丁目の「A Day In The Life」(新宿区新宿2-13-16 藤井ビル 203 )にてセクシャリティ・フリーのゲイバー「いたるの部屋」を営業中。 Twitterアカウント @itaru1964