親友の夫が女装して一緒に女子会!?「彼は秘密の女ともだち」が熱い

kareha_main

セクシャリティの多様さを実感できる作品

セクシャリティはグラデーションだと言われています。それは、LGBTという4文字では括りきれないほど多様なので、LGBTQとかLGBTsという表記を使用することも増えています(詳しくはこちらの説明をご参照ください)。
ゲイである事をカミングアウトしているフランスの映画監督フランソワ・オゾンの新作「彼は秘密の女ともだち」は、そのセクシャリティのグラデーションを実感させられる映画であります。kareha_postar

予想もできない突飛な展開を見せる物語

kareha_sub002

少女時代から大親友の2人の女性クレールとローラ。結婚してからも近所に暮し、変わらない交流が続いていたのだが、ローラは夫のダヴィッドと幼い娘のリュシーを遺して亡くなってしまう。深い哀しみに囚われるクレールは、リュシーにローラの姿を重ねてしまい、葬儀の後の数週間、ダヴィッドとリュシーに会いに行くことができなかった。仕事にも集中出来ないクレールは1週間の休みをとることにする。そして思いきって2人を訪ねてみると、そこでは見知らぬ女性がリュシーをあやしていた。振り向いた彼女を見てクレールは驚愕する。そこにはローラの服を着て女装をしているダヴィッドがいたのだった……。

自分のセクシャリティのゆらぎと向き合う107分

kareha_sub003このダヴィッド君、妻の死を哀しむ陰鬱で神経質そうなイメージなのに、クレールに“ヴィルジニア”と名付けられた女装姿になると途端に快活で前向きな存在に変わります。クレールに髪をセットしてもらい、2人でショッピングモールに買い物に行き洋服や化粧品を買い、郊外の田舎道を2人で散策。クレールと言う良き「女ともだち」を得て、ヴィルジニアである自分にウットリしっ放し。映画館で隣に座った男に腿を触られてモーションかけられてもウットリしている様を見ると、トランスヴェスタイト(TV)なのかクロスドレッサー(CD)なのか、はたまたトランスジェンダー(TG)なのかトランスセクシャル(TS)なのか、どうカテゴライズすればいいのか分からなくなってきます(詳しくはこちらの説明をご参照ください)。と言うよりも、何らかのカテゴライズすること自体に意味がないのでは? と思えて来るのです。
たった一度の短い人生、カテゴリーに囚われること無く、自分の生きたい道を正直に進む事が何よりの幸せ。女装する己にウットリしながらポジティブな暴走を繰り広げるヴィルジニア(ダヴィット)の姿を見ると、そう実感せずにはいられません。
そんなヴィルジニアに触発されたのか、クレールも心の底にひた隠しにしていたセクシャリティのゆらぎと直面していくことになります。そして、この作品をご覧になる方もまた、セクシャリティのゆらぎを自覚するきっかけになるかもしれません。kareha_sub001

細部まで神経が行き届いた映像美にも注目

kareha_sub004かなり変わった設定の物語ですが、描き方はいたってシンプル。フランスの普通の中流家庭が立ち並ぶ晩秋の住宅街を舞台に、物語は一見、淡々と描かれて行きます。それだからこそ、セクシャリティのゆらぎは一部の人が抱える特別なことではなく、誰もが抱えうるものだと感じることができました。ごく普通の秋の光景を収めた映像は、よく見ると細部までの神経の配り方が見事で実にキレイです。ヴィルジニアとクレールの掛け合い(主にヴィルジニアの勝手な言い分)にさんざん笑わされながらも、自分の内面と向き合う機会を与えられる107分。はっきりとは言葉では説明されず、受け取り方によって如何様にも解釈できるラストシーンまで、フランソワ・オゾンの世界に浸りきることができます。

彼は秘密の女ともだち


監督・脚本:フランソワ・オゾン『しあわせの雨傘』『8人の女たち』
原案:短編『女ともだち』ルース・レンデル著(小学館文庫)
出演: アナイス・ドゥムースティエ『キリマンジャロの雪』、ロマン・デュリス『タイピスト!』、ラファエル・ペルソナ『黒いスーツを着た男』
2014/フランス/フランス語/107分/ビスタ/カラー/配給:キノフィルムズ
8月8日(土)より、シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国順次公開!
公式サイト http://girlfriend-cinema.com/

© 2014 MANDARIN CINEMA – MARS FILM – FRANCE 2 CINEMA – FOZ

※画像は宣伝担当の方よりご提供いただきました。

READ  「たかが世界の終わり」ゲイ息子の帰還で綻びる家族の均衡

kareha_main

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

ABOUTこの記事をかいた人

いたる

LGBTに関する様々な情報、トピック、人を、深く掘り下げたり、体験したり、直接会って話を聞いたりしてきちんと理解し、それを誰もが分かる平易な言葉で広く伝えることが自分の使命と自認している51歳、大分県別府市出身。LGBT関連のバー/飲食店情報を網羅する「jgcm/agcm」プロデューサー。ゲイ雑誌「月刊G-men」元編集長。現在、毎週火曜日に新宿2丁目の「A Day In The Life」(新宿区新宿2-13-16 藤井ビル 203 )にてセクシャリティ・フリーのゲイバー「いたるの部屋」を営業中。 Twitterアカウント @itaru1964