お店のキャッチフレーズは、「心と体に寄りそい屋」
現役美大生Xジェンダーの筆者が、床屋「idoya」に行ってきました。先代の頃から地元で親しまれてきたお店では、2代目店長である関本愛子さんが、3年ほど前からLGBT向けの様々なメニューを始めました。店長さんの人柄を感じさせる語りを交えてご紹介します。
店長はXジェンダー!
idoya(イドヤ)では、関本さん、お母様、女性スタッフの方の3人が働いています。女子向けメニューも始まったそうです(LGBT向けのメニューは関本さんのみの担当)。子供連れの方も、ご老齢の方も、アライの皆さんにもオススメ!
店長:「その人それぞれの、いろんな色があるじゃない?私はそれに寄り添えればなって。骨格などからバランスを考えて、男性らしさや女性らしさといった色んなニュアンスを出してあげられれば。
私は色んなグラデーションを生きていて、お客さんのグラデーションを見つけてあげられるから、来てください。探すの好きだから」
男性ホルモン投与をしてもひげが生えてこない、というFTMトランスジェンダーの悩みに対し、「このように、自然なひげメイクもできますよ」という発信をしたいそうです。店長さん自身、Xジェンダーとして、自分を表現するために付けひげをするそう。
斬新すぎる!LGBT向け「あなただけの貸切コース」
美容院の貸切って、経験ありますか?ふだん美容院で時間がかかるとき、「手間かけさせてしまっている・・・」と思ってしまうのですが、最初から時間が設定されていることで、不思議とのびのびできました。お店で店長と2人きりになれます(チワワのいくらちゃんは、気がつくと足元を闊歩していますが)
店長:「昼間に他のお客さんがいる中で、お客さん自身がセクシュアリティをオープンに言えるのならば、私も色んな情報をシェアできる。どういうイメージを持っているのか、突っ込んで質問もできる。それができないのならば、2時間の貸切メニューを、一度は通過してほしい。追加で1万円かかるけどね。
皆が自分らしさを表現できるというのが幸せで、それが根本にある。貸切コースでなら、セットの仕方もたくさん教えてあげられる。人に聞いてもらう経験って大事だから。他のお店でも切ってもらえるようになるでしょう。細かく聞いてあげられるために、2時間とったから。本当に、貸切コースは皆さんに通過してほしいと思っている。そうすれば周りから見てもらいたかった自分になることで、世界がバンと変わるし、すごいのそれは。お客さんは、どんどん変化するというか」
その人の世界観を見せてあげる幸せ
店長:「その人の持ってる世界観をなるたけ見えるようにして表現してあげるというのが、私の役割だから。例えば、ガッツ石松みたいな人が、松田聖子ちゃんになりたいと言う。華奢でお人形さんみたいにかわいい女の子が、ボブ・サップみたいにハードな黒人男性になりたいと言う。あまりにもかけ離れたことを求めているのを聞くとすごく悲しくなる。でもとっても大切な世界観じゃん。それを仕組んだり仕込んだりしてあげる」
筆者:「その人の個性にも気づいてもらって、っていう」
店長:「そう。求めているものを見せてあげられたとき、ウキウキしている皆を見ていて最高に幸せだから。近づけるために最大限できることをやる。ようは自分の中にあるものを髪型で表現していけたら、幸せなんだよ。私もそうしたくて生きてきたから、すごく深く寄り添えると思うよ。寄り添うの大好きなんだ」
このお店を「卒業」してほしい。
店長:「私の手は一つだし、お客さんのスタイルのパターンを切り出してあげるのは役割だと思ってるけど、卒業してほしい。別のお店にも、おのずと広がっていってほしい。こうしてほしい、ああしてほしいというのが自分で言えるようになって、理解者が増えて仲良くなっていけばいい。切ってもらうのが楽しいと思ってもらえるようになってほしい。
うちに限定することはないけれど、悩んでいる人はうちを一回通過してほしいと思う。恋愛のためにこういう髪型をして、でも親元に帰るときはこうで・・・全部言ってくれればいいと思う。それで人生本当に変わると思う。そのために貸切コースを用意しているからね?」
筆者の髪問題も解決!
女性の体に生まれたけれど、実は「男性らしい髪の毛、骨格」の筆者。店長に言わせると「毛量が多くて元気で頑固。角刈りなど男らしい髪型に合うタイプ」だそうです。Xジェンダーとして女湯に入り、女子トイレを使用し、大きな体のためナベシャツを諦めて生活していますから「完全に男性らしい髪型」を作ると支障があります。ベリーショートにしたい。しかし髪質のせいで爆発します。ハードワックスで形を作っても、自転車で大学に着けば、台風のような頭になってしまう。正直言って、諦めていました(どうせ解決しないだろうと気持ちが腐っていたのですが、行ってみて本当に正解でした)。
すると店長は「ジェルで固める」という方法を提示してくれました。「私もワックスは弱くて効かない。整髪料は無理です。接着剤に例えてみるとね、ワックスは水のり。そしてジェルは、アロンアルファ」
この後、自転車で帰宅しましたが髪型は無事でした。ジェルは¥1700で購入しましたが、頑固な髪質に悩むゲイの方にも人気だそうですよ。また、ナベシャツに関する情報もいただきました!セクマイ当事者ならでは!
LGBTに超オススメ!
「貸切コース」を受け、細かく色々お話ししたことで、床屋・美容院において「もっと美容師さんや理容師さんの対応を引き出してワクワクできる」と感じました。すでに伝わっているかと思いますが、とてもアットホームなお店でした。しかし、私の自宅から離れていることから、毎月idoyaに通うのが正直難しいです(交通費も考えると、学生的には厳しい)。毎月は無理でも、年1度くらい定期健診的に通うのも一つの方法ですよね。お近くの方、金銭的にOKだという方は、ぜひ今すぐ予約してみてくださいね。
お店の情報
〒116-0014 東京都荒川区東日暮里6-28-5 サカイリグリーンパーク1F
最寄り駅/日暮里、西日暮里
定休日/毎週月曜日、火曜日連休
事前予約制(初回はインターネットからのみ)
idoya
ゲイ・FTMカット
HPは2つあります。idoyaの一般向けメニュー、そして「LGBT向けメニュー」のもの。LGBT向けの様々なメニューが詳しく書いてあります。検索で見つけてもらうため「Gay FTMカット」という名前になっていますが、どちらも同じ店舗ですよ。