台湾の婚姻平權(婚姻平等の権利)を巡る動きをご紹介する【台湾:婚姻平權を追う】。来る3月24日( 金)、台湾では同性同士の婚姻が「合憲」か「違憲」かを審査する憲法法庭が開庭されます。「合憲」と判断されれば、現在政治の場にて討論が行われている関連法案の実現がさらに現実味を帯びることになります。
憲法法庭では何が討論されるのか?
憲法法庭は、台湾(中華民國)にて施行されている「中華民國憲法」に基づいて、憲法を司る15人の大法官が審議を行うもの。今回の法庭では「同性同士の婚姻を憲法ではどのように解釈すべきか?」がテーマとなります。
同性婚姻議題備受國人矚目,司法院大法官會議已訂三月廿四日上午九時召開憲法法庭,破天荒就同志婚姻邀請學者、專家說明,進行言詞辯論,並開庭直播。
「同性同士の婚姻」は今や国民の注目を集めるテーマとなっていますが、司法院大法官会議にて3月24日午前9時より憲法法庭の開庭が決定。同性婚に詳しい学者や専門家を招いての説明・討論が行われ、史上初となる法庭の様子はリアルタイムでの放送が行われます。
訳:Kazuki Mae
2015年6月、連邦最高裁にて「同性同士の婚姻は合憲」と判断され、アメリカが同性婚合法化へ大きな一歩を踏み出したニュースが世界中を駆け巡ったことは記憶に新しいかと思います。今回台湾で行われる憲法法庭でも同様の審議が行われることになり、アジア各国に先駆けて同性婚合法化を実現できるか否かの、大きなターニングポイントとなりそうです。
「同性同士の婚姻」を巡る憲法法庭は台湾史上初。
台湾でLGBTの権利をめぐる動きが起こってから現在で約30年。これまでにも「同性同士の婚姻」をめぐる憲法法庭開庭を要求する声はあったものの実現には至らず、今回が台湾の歴史上初の開庭となります。
開庭を要求したのは、台湾での同性婚合法化に向けた運動の先駆者である祁家威氏と台北市政府。それぞれが提出した要求に応じる形で、「同性同士の婚姻」に対する憲法上での解釈(憲法解釈)について審議が行われます。
祁家威氏が開庭を要求したのは今回で2度目。1986年に初めて同性婚の法制化を求める声を上げて以来、現在までの約30年間を台湾におけるLGBTの権利向上を目指す運動に捧げてきた人物でもあります。
祁家威2000年在與同性伴侶公證結婚遭拒後提起訴願,提行政訴訟亦敗訴,於是聲請釋憲,在隔年1月被司法院大法官會議「係以其個人見解對現行婚姻制度有所指摘」議決不受理;
2014年祁家威再次釋憲,他找了台灣伴侶權益推動聯盟(伴侶盟)協助法律相關事宜,有了律師團的協助,2015年8月大法官會議受理。
出典:聯合新聞網『獨家/憲法法庭3月24日為同婚釋憲 直播開庭』
祁家威氏は2000年に同性パートナーとの婚姻申請が拒否されたことを受け訴訟を起こす考えを表明。行政訴訟では敗訴が確定したため憲法解釈を要請したものの、翌年1月に「現行の婚姻制度に対しての個人的見解による指摘にすぎない」として、司法院大法官会議にて受理しないという議決を下されていました。
2014年に祁家威氏は再度憲法解釈を要求。台灣伴侶權益推動聯盟(伴侶盟)に法律関連処理のサポートを依頼し、弁護士団の協力のもと、2015年8月の大法官会議では受理が決定されました。
訳:Kazuki Mae
一方、台北市政府の開庭要求は、LGBT活動家の呂欣潔氏をはじめとする同性カップル3組が婚姻申請の受理を市政府側に拒否されたとして起こした訴訟問題を受けて提案されたもの。憲法の上の解釈ではどのような答えを出すべきなのかが、大法官の手によって審議されることになります。
另一案是台北市政府聲請的釋憲案。因近年有越來越多同性伴侶透過登記結婚來衝撞現行體制,如伴侶盟便曾號召30對同性伴侶前往戶政機關登記結婚遭拒,其中呂欣潔等3對同性伴侶隨後更依法提起行政訴訟;作為登記主管機關的台北市民政局於2015年提出釋憲聲請,大法官會議亦已受理。
出典:聯合新聞網『獨家/憲法法庭3月24日為同婚釋憲 直播開庭』
もう一案は、近年同性カップルの婚姻申請において現行体制との衝突が増加している状況を受けて提案された台北市政府による憲法解釈要求。台灣伴侶權益推動聯盟(伴侶盟)の呼びかけによって30組の同性カップルが政府機関へ出向き、婚姻申請を行ったものの全て却下。このうち呂欣潔氏など3組の同性カップルが行政訴訟を起こしたため、(婚姻)登録主要機関である台北市民政局は2015年に憲法解釈を要求、すでに大法官会議での受理が決定されています。
訳:Kazuki Mae
また、今回の憲法法庭開庭を受け、台湾の国会にあたる立法院で第一政党となっている民進党の立法院党団代表は、15名の大法官による審議結果の推測について次のように述べています。
立法院民進黨團總召柯建銘昨表示,憲法法庭開完最快約一個月就會做出相關的釋憲,合憲的可能性很高。如果大法官會議認定合憲,就是立法院要立專法或修「民法」的問題。
立法院民進党団代表の柯建銘氏は、憲法法庭開庭後早ければ約1ヶ月で関連の憲法解釈の結果が公表され、「合憲」である可能性は高いとした上で、「大法官会議で(同性同士の婚姻は)合憲と認定されれば、立法院も法案(同性伴侶法案)の制定あるいは民法改正への対応をしなくてはならない。」と述べました。
訳:Kazuki Mae
「合憲」になれば何が変わる?
今回の憲法法庭において、同性同士の婚姻が「合憲」であるという判断が下された場合、現在政治の場にて討論がなされている「婚姻平權(婚姻平等の権利)」に関する審議がさらに早まることが期待されています。
立法院で審議されている「民法改正法案」は、「民法」の婚姻に関する記述を改め、セクシャリティにかかわらずあらゆる人の婚姻の権利を認めることを目指す案。すでに一次審査を通過し、早ければ本会期中にも二次審査に入るとされていますが、今会期中に成立を優先すべき法案にリストアップされないなど先行き不透明な状態が続いています。
行政院今(23)日下午召開行政立法協調會(中略)討論新會期優先法案,包括年金改革相關法案等至少40項優先法案,至於同婚修法,行政院發言人徐國勇表示,該法案要等挺同、反同團體溝通好,暫時還沒有列入。
出典:自由時報『行政立法協調40項優先法案 同婚修法暫未納入』
行政院は(2月)23日午後、「行政立法協調會」を開き、年金改革関連法案を含む約40項目を優先法案として定めましたが、同性婚をめぐる(民法)改正法案に関して、行政院発言人の徐國勇氏は「当法案は賛成派、反対派団体がコミュニケーションを充分に取れるまで待つべきであり、現在のところはリストアップしていない」と意見を表明しました。
訳:Kazuki Mae
一方、法務部主導で計画されている「同性伴侶法案」は、現行の「民法」に定められた婚姻とは別制度として、同性カップルに婚姻に準ずる権利を認める案。まだ立法院にて提案される前の準備段階ではありますが、依然として当事者からの大きな支持を集めるには至っていない状況です。
同性同士の婚姻が「合憲」であるという結論が出た時点で、法律上同性婚が認められていない現行の法制度は「違憲」状態に。「民法改正法案」と「同性伴侶法案」のどちらが施行されることになるとしても、憲法に基づいて定められる以上、婚姻平等の権利を認める制度づくりが急がれることは必至です。
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「婚姻の平等」合法化に向けた追い風となるか?憲法法庭は3月24日開庭。
台湾史上初となる「同性同士の婚姻」をテーマに開庭される憲法法庭。アジアに先駆けて「同性婚合法化国」の仲間入りを果たせるかどうかにも影響を与えることが予想されているだけに、大きな注目が集まっています。「合憲」か「違憲」か、早ければ4月中にも結論が発表される見通しです。