「LGBT差別禁止法って意味あるの?」専門家に直接聞いてみた【後編】

LGBT差別禁止法

「LGBT差別禁止法」。LGBT法連合会が提案しているのは、果たしてどのような法律なのか、もし成立して施行されたら、その時のメリットはなんなのか、全く何も知らない大学生の筆者が直接取材してきました。LGBT法連合会のHPでは、日本で必要となると提案している差別禁止法の考え方について、さらに詳しい内容とデータをご覧いただけます。

※前回記事

READ  「LGBT差別禁止法って意味あるの?」専門家に直接聞いてみた【前編】

取材協力先:LGBT法連合会

LGBT法連合会から5人の方にご協力いただきました!
lgbt law unions

Q. テレビでのLGBTについてどう思いますか?

1(前編で上がった「企業研修が増えるだろう」という話に加えて)法律の効果として、間接的だけど期待したいのがマスコミの対応ですね。今、LGBTについて良い番組も増えているのですが、やはりオネエがいじられ役で、LGBTイコールオネエと思ってる方もいたり・・・。そういうところをきちんと扱うよう、放送局に配慮を求めるようになるでしょう。報道の自由はしっかりと維持しながら、番組のクオリティを高めることを期待したいですね。

スキャン_20151008 (2)メディアも、LGBTの実態をバランスよく伝えなければという意識が高くなるでしょうね。現在はオネエばかり出ているけれど。

Q. LGBT差別禁止法は、当事者にとってどういう意味があるんですか?

スキャン_20151008 (3)病気であるとか障がいという扱いに抵抗を感じている当事者がたくさんいます。そういった概念についても取り扱いをきちんと考えるチャンスになると期待します。また、抑圧されながら育ってくると、メンタリティが脆弱であったりだとか、愛着障害だったりだとか。(愛着障害・・・自分への愛着。自己受容ができなかったり、自己肯定感が持てない症状)学業や職場、人間関係がうまくいかなかったり、すぐにそういったループに陥りがちなわけです。そしてLGBT嫌悪を内面化してしまうんですね。そこから抜け出すのは大変。そうなると到底カミングアウトができないわけです。社会に対して諦めてるし憎しみを抱いている。LGBTであるということが理由の、いじめや差別も、ハラスメントなんだということが明確になることで、そこから抜け出し、自分を取り戻すエンパワーメントにつながると思います。そして大本が変わるということは、全国のどこに住んでいようとも等しく恩恵を預かることができる。渋谷区や世田谷区に誰もが住めるわけではありません。今回の提案したい法律は差別やハラスメントに焦点をあてたもので、様々な期待が込められています。

スキャン_20151008 (2)私たちも今年の4月に発足して、興味を持ってくださっている国会議員の方々にお伝えはしています。ただ、沢山いるはずの当事者から、この法律がほしいんだという声が、いまいち盛り上がって来ていない。LGBT当事者に、是非、この法律の考え方について伝えてほしい。
スキャン_20151008 (9)僕はちょっと前、勤め先の「社長」のような人にカミングアウトしなきゃいけないことがありました。「社長」は単語とかは全然わかってないんですけど「そうか、何かあったら必ず相談してくれ、絶対相談してくれ」って2回も言われて。部屋から出るときにも「何かあったら必ず相談してくれ」って言われてました。その後デスクに戻ってから、自分の肩がすごく楽になって。LGBTに関してこれだけ色々活動しているけれど、日頃から緊張を強いられてたんだなって思ったんです。この法律ができると、みんなそういう風に、肩の荷が楽になるんじゃないかと改めて思ったんですよね。

スキャン_20151008 (2)当事者がよく言う事として、日本なんて変わらないよとか、私たちは日陰者で生きてった方が面白いなんてね。そういうシニカルなことを言われることがあるんだけど。それを言ってる人自体が、神谷さんがおっしゃったように、自分がどのように社会の偏見や排除の犠牲になっているかを、今いちきちんとわかっていなくて生きている。ゲイの場合は多くが、「会社にカムアウトしたっていいことないよ」「同性婚とかだって、会社に知られたら自分が困るだけじゃない」と。「こういうもん」だと思って生きている人たちに、「差別禁止法のような法律が出来たら、がらっと変わるかもよ」と伝えたい。多数派の側の固定観念というか、社会的通念というか。がんじがらめになっているのをポンと変えさせるきっかけに、この法律がなってほしい。

1アンデルセンの童話にもありますね。一人の子どもが「王様は裸だよ!」と叫んだことをきっかけに、国民みんながそれまでのバカバカしい社会的通念を捨てて、自由で生きやすくなりました。

Q. みなさんはなぜこの活動をしているのですか?

スキャン_20151008 (11)20代の後半になると、親は自分に結婚や孫を期待し始めるわけですが、いつまでも期待をさせ続けるのって残酷だと思い、カムアウトしたんです。親は数か月勉強を続けて、自分が生まれてからそれまで抱いていたモヤモヤした疑問が、ある時全て解決して納得したようです。ようやく納得してくれて、受け入れてくれた。「和弘は思春期に、ゲイだと気づいたとき、悩み苦しんだに違いない。それをわかってあげられなかった私は親として失格だ」と言っていたんです。でもそれは親に責任があるわけではないし、自分を責めることではない。社会が、ただ理解していない。知識がないから性的マイノリティを差別してしまっているということが問題なのであって。そういう日本は一日も早く変えなければばならないと思いました。

スキャン_20151008 (2)私の場合は、パートナーと暮らすためにニュージーランドに行ったのですが、2004年にシビルユニオンというパートナーシップ法ができて、男女と同じ同性婚も可能になったのは2014年から。でも、私が行った1996年ころから、同性カップルとして暮らしやすかった。1993年から包括的差別禁止法という、人種・宗教・国籍等全ての切り口で差別を禁止し人権を守る法律があり、その中にLGBT差別の禁止が入っていたんです。ヨーロッパ系の国では、パートナー法や同性婚は、差別全体が解消された最後に、シンボリックに「これで、完全に同等です」と、仕上げの様に制定する。逆に言えば、アメリカでは全州で同性婚は制定されたけれど、包括的差別禁止法が遅れています。キャッチーな、メディアに出てくる話題としては同性婚があり、そちらに多くのLGBTの関心が向かってしまうのですが、差別禁止法はとっても重要だよということを自分としては伝えたいです。
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Q. LGBT差別禁止法は、家族にどういう影響がありますか?

スキャン_20151008 (9)差別禁止法は多くの家族というか、周囲の人にとっても良いんです。親子だとか、社会での人間関係とか、同僚とのコミュニケーションだとか、こうしたら円滑になるのだ、というひとつのツールにはなると思います。
スキャン_20151008 (2)私たちの世代では、ゲイだとわかったら親に勘当されたみたいな話があったんです。一方ニュージーランドのパートナー側の家族での、甥や姪の世代では、我々の世代を見ているからなのか、影響を受けているようです。ニュージーランドの姪の一人はレズビアンとして、最近家族に恋人を紹介したけど、義理の親や兄弟は最初はちょっとびっくりはしても、受け入れはスムーズでした。拡大家族として彼女の恋人を取り込んでいる。これで、皆が家族として幸福になるわけです。差別はする方も、される方も不幸なわけで。ストレートの同僚としても、企業経営者としても、差別禁止法へ取り組んでもらえたらwin‐winだと知ってほしいです。

Q. 最後に一言お願いします!

スキャン_20151008 (11)セクシュアル・マイノリティだけじゃなくっても、例えば明日難病が発覚して、マイノリティになることって有り得ますよね。
他にもお酒が飲めないとか、いろんな面で少ない方であっても自然に生きていけると伝えていける一歩になると思います。
スキャン_20151008 (3)よく言うのは、「多様性をきちんと受け入れている社会は、誰にとっても住みやすい社会だ」ということですね。

スキャン_20151008 (4)LGBT法連合会のみなさま、ありがとうございました!

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取材協力:LGBT法連合会
(注)「LGBT法連合会」の正式名称は、「性的指向および性自認等により困難を抱えている当事者等に対する法整備のための全国連合会」であり、ここで説明している「LGBT差別禁止法」の正式名称は「性的指向および性自認等による差別等の困難の解消および支援のための法律」です。レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー以外にもさまざまな性的指向・性自認のかたちがあります。LGBT法連合会(通称)は、そうした人々を同様に含めた形で差別禁止の法整備を求めており、そうした人々を排除したり、差別したり、また多様性を無視しようという意図はありません。

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