年金を止められてしまったトランスジェンダー女性
英国では現在、男性よりも女性の方が早く退職でき、女性の方が2年早く年金を受け取れることになっている。その年金の支給開始年齢の男女間の違いによって、63歳のトランスジェンダー女性が年金を受け取れないという事態が発生した。
労働年金省「性別識別証明が必要」
スコットランドのグラスゴーに住むサンドラ・マクドゥーガル(Sandra MacDougall)さんは、女性が年金を受給できる年齢である63歳になったため、昨年11月に年金を受給し始めた。
しかし、the Daily Recordによると、マクドゥーガルさんは年金を“男性”の支給開始年齢に達するまで待つように言われたという。
マクドゥーガルさんは2000年に性別適合手術を受け、女性として生活してきた。パスポートの性別欄も“Female(女性)”と記載されている。
しかし、英国の労働年金省は、彼女が未だ男性であると主張し、年金の受け取りを要求するためには、性別識別証明の形で彼女の性別を証明する必要があると主張している。もし、彼女が証明書を提示できなければ、彼女が男性の支給開始年齢に達する2017年7月まで待たなければならない。
ジェンダー公認法成立前にトランジションしたために…
マクドゥーガルさんがトランジションしたのは、2004年にジェンダー公認法が成立する前のことで、その法律の成立とともに性別識別証明も導入されていた。そのため、彼女はその証明を持っていないのだという。
さらに、性別識別証明を発行するための手続きには、2年間の待機期間が含まれており、待っている間に男性の受給年齢に達するため、いずれにせよ年金を受け取れる年齢になってしまう。
マクドゥーガルさんの憤り
彼女は以下のように話している。
「私は男性から女性への性別適合手術を2000年に受け、本当に喜びの絶頂にありました。これからは本当の自分を生きることが出来るチャンスが手に入ったと思っていたのです。」
「手術も終えましたが、当時は証明書を発行していなかったために、証明書をもらうことができませんでした。私は自分が誰であるかということは分かっていたし、新しいパスポートも持っていたし、法的な名前も変え、私の本当の人生が始まったと思っていたのです。」
「しかし今になって、私が女性であることを証明できなければ年金がもらえないというなんて馬鹿げています。」
マクドゥーガルさんは、健康上の理由で仕事に戻ることもできず、最近では障害者の生活手当も削られてしまっているという。