ローマ法王「キリスト教は同性愛者に謝罪すべき」でも、同性婚は認めない。

ローマ法王の革新的な発言なのか?

2016年6月27日、AFP通信がローマ法王フランシスコの同性愛者に対する発言を報じた。

この記事の中では、ローマ法王フランシスコは下記のように述べたと報じられている。

「われわれキリスト教徒には、謝らねばならないことがたくさんある。今回のこと(同性愛者の待遇)に限らないが、私たちは許しを乞わなければならない。謝罪するだけでなく——許しを」
「そうした状態(同性愛)の人が善良な人物で、神を求めているとしたら、その人を裁く資格が私たちにあるだろうか」

カトリックは同性愛を認めていないことをご存知の方からすると、この発言は驚きと共に、カトリックの改革が進んでいるのでは? という期待感を覚えるかもしれない。
しかし、決してそのようなポジティブなだけの状況ではないようだ。
ここ数年のローマ法王にまつわる発言やトピックを見直してみよう。

ローマ法王フランシスコってどんな人?

2013年3月13日、南米出身の初の法王となったフランシスコはアルゼンチンのブエノスアイレスで生まれた北部イタリア人移民の息子。とても庶民的な人柄で世界中の信者から多大な人気を博しているフランシスコだが、彼に課せられた使命は非常に大きい

■フランシスコの庶民性が端的に記された記事 ハフィントンポスト
新ローマ法王が乗る「160万円の大衆車」

フランシスコが法王になった時点で、度重なる不祥事が続いていたカトリック教会への信頼は地に堕ちていた。
その不祥事とは

・聖職者の未成年者への性的虐待事件
・法王の執務室から内部情報や書簡が外部に流れた通称バチリークス事件
・バチカン銀行のマネーロンダリング容疑 など


  
就任時から改革と信頼回復という責を負わされたフランシスコ法王は、様々な問題に積極的に対処していく。
その一つが、カトリックでは認めていない同性愛者への対応だ。
就任直後の2013年7月に

もし同性愛の人が主を求めていて、善意の持ち主であるならば、私に裁く資格があるだろうか。彼らを排除すべきではない。(同性愛の)傾向は問題ではない。彼らは私たちの兄弟だ。

と述べた。

ローマ法王、同性愛者を「裁く立場にない」 CNN

フランシスコ法王の人気ぶりと、同性愛者を絶対に認めようとしなかった2人の先代法王との比較が面白いニュース動画。

このインタビューでカトリックは同性愛NGというイメージを、ローマ法王自らが否定する発言をしたのだから、インパクトはとても大きく、その年の末にはアメリカの有名ゲイ雑誌「adovocate」の”今年を代表する人物(Person of the year)”に選ばれ、表紙にも登場した。

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翌2014年10月には、フランシスコ法王の呼びかけで、「福音宣教の観点から見た家庭の司牧的課題(The Pastoral Challenges of the Family in the Context of Evangelization)」というテーマについて話し合う”世界代表司教会議(シノドス)第3回臨時総会”が開催された。
ここでは同性愛者を教会が許容するか、という議題も話しあわれた。
それに関して、CNNが2本のニュースを伝えている。
■2014.10.14 CNN
「同性愛者を歓迎すべし」 ローマ法王庁の姿勢に変化
■2014.10.19 CNN
カトリック司教会議、同性愛者への対応で合意できず

保守派の強硬な反対のために、”同性愛者の許容案”は否決されたのだが、その翌日にフランシスコ法王は下記のように語った。

神は新しいことを恐れていないのです。神が絶えず思わぬ方法で私たちを驚かせ、私たちの心を開かせ、私たちを導いていることからもわかります。神は私たちを新たなものにする。神は常に私たちを”新しいもの”にしているのです。(中略)どれほど神は“新しさ”を愛しているのでしょうか!


■2014.10.20 ハフィントンポスト
法王フランシスコ「神は新しいことを恐れていない」 同性愛者の許容案が保守派の反対で立ち消えた翌日に

その後も、

イタリアの刑務所を訪問して、ゲイやトランスジェンダーの囚人と共に、HIV陽性の囚人が配膳したパスタを一緒に食べたり、

ということが報道された。

同性婚に対しては厳しい姿勢を見せ続ける

これらから冒頭の最新の発言に連なっていく流れを見ていると、フランシスコ法王はまさに「アライのお手本なのでは?」と思ってしまいそうだが、事はそう単純ではない。

このとき出された共同宣言には下記の内容が記されている。

家族は、男性と女性の自由に与えられた忠実な愛の行為である結婚に基づいている。彼らの一致を確認し賜物としてお互いを受け入れ合うよう彼らに教えるのは、愛である。結婚は愛と忠実さの学校である。結婚における男性と女性の明確な使命として、聖書的な伝統において神聖なものとされた、父性と母性の概念が、人々の良心から追いやられてしまった一方で、他の形の同居がこの結合と同じ程度に位置付けられてきてしまったことを、私たちは遺憾に思う。


■2016.2.18 CHRISTCHIAN TODAY
教皇フランシスコとモスクワおよび全ロシアのキリル総主教の共同宣言

この後にも同性婚に反対というフランシスコ法王の考えは続々と報道されている。

同性愛問題では、同性愛者の人権を尊重するという点で前進してきたが、「婚姻は男性と女性の間」という教義を放棄する考えは法王にはない。ちなみに、フランシスコ法王は昨年10月4日、シノドス開催記念ミサで、「神は男と女を創造し、彼らが家庭を築き、永久に愛して生きていくように願われた」と強調している


■2016.3.11 Viewpoint
フランシスコ法王に時間はあるか

教皇フランシスコは8日、家族の在り方に関するカトリック教会の指針をまとめた文書を発表し、離婚や再婚をした信者に対する寛容な姿勢が必要だとの立場を示した。同性婚を容認しない従来の方針は維持した。


■2016.4.11 CHRISTCHIAN TODAY
離婚信者に寛容姿勢を示す教皇、同性婚は認めず

フランシスコ法王の真意はどこに?

ローマ法王となると、単なる司祭ではなく影響力の大きい政治家としても顔も持ち合わせている。

そんなフランシスコ法王の、「同性愛者を許容」しようとするも「同性婚には絶対反対」というスタンスは、政治上の駆け引きなのか? はたまた本心なのか?
現時点では、”神のみぞ知る”ことなのかもしれない。

■プロテスタントについて知るための参考記事

TOP画像引用元
■CNN
「同性愛者を歓迎すべし」 ローマ法王庁の姿勢に変化
■NBC News
The 6 Places Where Pope Francis Will Most Likely Make News

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