バイセクシャルを悩ませる「バイフォビア」
バイセクシャル当事者に対しての嫌悪「バイフォビア」は、バイセクシャルの人にとって大きな問題となっている。特に、ストレートの人からの嫌悪に限らず、LGBTコミュニティにおいてもバイフォビアは存在し、それがバイセクシャルの人を特に悩ませているという研究結果が明らかになった。
バイセクシャルへの差別・偏見
バイセクシャルは、ゲイやレズビアンからも、ストレートからも偏見を経験することがあるという。ストレートの人からは、レズビアンやゲイであるとみなされてしまう。その一方で、LGBTコミュニティでは、「異性とも付き合える=LGBTコミュニティを裏切るかもしれない」と、周囲から信用を得られないことがあるというのだ。
最近の調査では、この「バイフォビア(両性愛嫌悪)」について研究がなされた。マサチューセッツ大学の研究チームが745人のバイセクシャル当事者を対象に、差別の経験について調査を行った。
その結果、バイセクシャルはゲイやレズビアン、そしてストレートからの差別を経験しているという結果が得られた。
ストレート、LGBTコミュニティの両方から
この研究によれば、
「バイセクシャルが経験する差別の割合は、ストレートからのものが圧倒的に多いにもかかわらず、与えられるダメージの大きさについては(異性愛者と同性愛者からの差別のあいだで)それほど大きな差は見られなかった。」
という。つまり、バイセクシャルが受ける差別はストレートからのものが最も多いとは言え、レズビアンやゲイ、トランスジェンダーの人からの差別のほうが、相対的には大きなショックを与えているというのだ。
単性愛主義による差別
またこの研究では、「単性愛主義」、つまり
「人間は異性愛者か同性愛者のどちらかでしかないまたはそのどちらかにしかなれない、という考え方が、本来連続体であるはずの人間のセクシャリティを二元的な見方にとどめてしまっている。」
ということも述べられている。これは、同性愛者でも異性愛者でも「単性愛主義」に当てはまり、バイセクシャルがある種「異常」であるかのようにとらえられてしまっていることを意味する。
さらに、バイセクシャルの人は一つのカテゴリーに自らを組み込んでいくのが難しく、特に同性愛者のコミュニティでのけ者にされたように感じてしまうとき、最もつらいと感じるのだという。
「2人の人間があなたに対して鋭く叫んでいるようなものなのでしょう。ただし片方の声は1デシベル高いのです。」
今回の研究者の一人、タンジェラ・ロバーツ(Tangela Roberts)はそう話した。
バイセクシャルであるとカミングアウトする人は少ない?
このようなバイフォビアによって、バイセクシャルにはクローゼットを選択する傾向もあるのかもしれない。
2013年にピュー研究所が米国で行った調査では、バイセクシャルであることを「周囲にオープンにしている、あるいは、大切だと思うほとんどの人に伝えている」と答えたのは、たった28%だったという。これはLGBT全体の平均が58%だったのに対し、バイセクシャルではその2分の1以下にとどまっていることがわかる。