Q. 同性愛や性同一性障害は病気なの?

同性愛や性同一性障害は病気なの?

「自分は男なのに男のひとが好きだ……これって病気なのかな」「身体は女性だけど、女性らしさを求められることに違和感があるし、むしろ男性として生活するほうがしっくりくる……自分は病気なんだろうか」そんな悩みを抱えたことが、もしかすると読者のみなさんにもあるかもしれません。今回は、「同性愛や性同一性障害は病気なのか」という疑問にお答えします。

何を病気とするかは、時代や地域によって違う

「病気」と聞くと、どのようなものをイメージするでしょうか? 「風邪で頭が痛い」といった身体的な不調を思い浮かべるひともいれば、「悩みが解消されなくて、何も手につかない」などの精神的な不調を想像するひともいるでしょう。そもそも「病気」とはどのような状態を指すのでしょうか?

たとえばWikipediaには、“病気は曖昧な概念であり、何を病気とし、何を病気にしないかについては、様々な見解があり、政治的・倫理的な問題も絡めた議論が存在している”という記述があります。つまり、何を病気とするかは時代や地域などによって異なるため、ひとつの画一的な基準で「病気」と判断することはできないということですね。

同性愛は病気なの?

では、ゲイ・レズビアンなどの同性愛は「病気」となるのでしょうか? NPO法人EMA日本のウェブサイトには次のように書かれています。

かつて、同性愛は異常であり、病気であるとされたことがありました。
しかし、現在では、WHO(世界保健機関)や米国精神医学会、日本精神神経学会などが同性愛を「異常」「倒錯」「精神疾患」とはみなさず、治療の対象から除外しています。文部省も1994年に指導書の「性非行」の項目から同性愛を除外しました。

また、「同性愛がわかる本」(伊藤悟著、明石書店)には次のように書かれています。

(…)アメリカ精神医学会では、1973年、世界に先駆けて同医学会が発行している精神障害診断基準であるDSM-Ⅱの第7版から同性愛についての記述を削除しました。WHOも、1993年に発表された「国際疾病分類」(ICD)の改訂第10版で、「同性愛はいかなる意味でも治療の対象とならない」という宣言を行っています。日本では、1994年12月に厚生省がICDを公式基準として採用し、95年1月にやっと日本精神神経医学会が、ICDを尊重するという見解を出しました。

まとめると、「かつて同性愛は病気とされていたが、現在の日本、および国際的な基準で考えると、同性愛は病気ではない」ということになりますね。

性同一性障害は病気なの?

さて、同性愛が現代日本または国際的な基準によると、病気ではないということがわかりました。では、性同一性障害はどうでしょうか?

結論からいえば、ネガティブな意味での「病気」ではありません。しかし、自身の性自認と身体的な性別が一致していないことに対して、本人が苦痛を感じてしまっている場合には、「性同一性障害(英:Gender Identity Disorder)」という疾患名が付与されます。ここで重要なのは、「性同一性障害」というのはネガティブな意味で用いられる言葉ではなく、あくまでも「性自認と身体的性別が一致していない状態」に対して医学上の疾患名が与えられているにすぎないという点です。

「病気」「障害」と聞くと、不必要にネガティブなイメージを連想してしまうことがあります。たとえば、「あいつは病気だ」という言葉には「何らかの身体的・精神的な不調がある」という意味ではなく、相手に対する悪口であったり、嫌悪感を示したりといったニュアンスが含まれることもありますね。しかし、性同一性障害における「病気」「障害」というのは、「本人にとって苦痛な状態・症状が起こってしまっている」という意味であり、決して当事者を侮辱するような言葉ではないのです

むしろ、「性同一性障害」という疾患名が生まれたことによって「疾患として適切に対応しなくてはならない」という考えを医療関係者が持つようになり、日本精神神経学会によって「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン」が発表されるなど、適切に対応するための医療的整備が進んだといえるのかもしれません。

結論:どちらもネガティブな意味での「病気」ではありません

同性愛・性同一性障害ともに、ネガティブな意味での「病気」ではありません。「病気」「障害」といった言葉に惑わされず、自分の身体・内面のことを知り、自分にとっての適切な選択を行うようになっていってほしいと思っています。

画像引用元:photo AC

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