【コラム】同性愛者から告白されたら、受け入れないといけない?〜性的指向・性自認に関する自民党問答集から考える壁の高さ

予想もしなかったQ&Aに驚愕!

6月17日に朝日新聞デジタルは

自民党は、「法の下の平等」を定めた憲法14条に照らし、
性的少数者への差別が禁止されているとする見解を初めて示した。

 

と報じました。
※記事本文はこちら
「性的少数者の差別禁止」自民が初見解 同性婚容認せず

それと合わせて

「差別の解消や禁止には?」 自民党問答集から抜粋

という記事も配信されました。

その問答集には、下記のような驚愕のQ&Aが記されています。

Q:同性愛者から告白されたら、受け入れないといけない?

A:性的指向の多様性について理解増進を図り
受け入れる社会を目指すことと、
個人間の恋愛感情を受け入れるかどうかは
全く別の問題です。
断っても何の問題もありません。
ただあえて記せば、
告白する方も切実に悩んだ末の行動ではないかと思われます。
非難や中傷をしたら、
相手を無用に傷つけることになるかもしれません。

 

これを見た瞬間に

同性愛者は、好意を拒絶したら大変な目に遭わされる
強烈な圧力団体なわけぇ?

 

と思ってしまいました。

セクシャルマイノリティに対する理解推進なんて錦の御旗を掲げても
このレベルなのかぁ、と軽く絶望的な思いにとらわれたりもして……。

私の常識は、あなたの非常識?

しかし、絶望しているだけではなにも進まないので、
少し考え方を変えてみることにしました。

つまり、この問答集は誰のためのものなのか?
と考えることにしたのです。

自民党は、今回の参院選の公約に

性的少数者らへの「理解増進」

 

を掲げました。
この問答集は、その「理解増進」のためのものであるわけですから、
理解していない人を対象にしているわけです。

当事者にとって常識的なことも、
理解していない人にとっては、まったく斬新だった。

そんなことって世の中にたくさんありますよね。

直近でもっとも分かりやすい例が、
フロリダ銃乱射事件に対する反応です。

サムソン高橋氏による下記の分析は
【サムソン高橋・非シャイニー宣言】フロリダ ゲイクラブ銃乱射事件に思う
当事者にとってはとても納得のいくものでした。

当事者ではないですが、アライと呼んでも差し支えないくらい
セクシャルマイノリティへの理解が深い町山智浩氏
twitterで下記のように発言しています。

町山智浩「犯人に同性愛傾向があったとしたらまさにそれこそ動機はヘイトなんですよ。わかりませんか。」

しかし、いわゆるノンケで、特にセクシャルマイノリティへの
理解度が高くないと思われる人の場合は、
かなり事情が異なります。
マルチリンガル国際評論家 岡本泰輔氏のブログに
その点が鮮明に現れています。

[速報、更新中] 犯人のOMAR MATEEN (オマルマティーン)は前の妻へ暴力(DV)も。なんとプライベートセキュリティーガードだった。犯行前の驚きの行動とは。ISISとの関係性も。実はマークもされていた。史上最悪の乱射事件で非常事態宣言発動中。フロリダ州オーランドの同性愛者ナイトクラブでの乱射事件。要警戒。

当初ISの戦闘員によるテロと目されていた時点での勢いが
容疑者Omar MateenがゲイでありPULSEの常連だと判明してから
ガクッと落ちています。
多分、岡本さんの理解を超えてしまったのでしょうね

無理解な人の根底にあるもの

たとえば、
心霊現象でも、
地震でも、
未確認飛行物体でも、
理解のできないものに対して、人は「恐怖」を覚えるのは当たり前のこと。

セクシャルマイノリティに対して無理解な人も
同じように恐怖感を抱いている
と考えるべきなのでしょう。

たとえば、ある年齢以上のゲイの方は

ノンケ(ストレート)が自分をゲイだと分かった時に
「俺を狙うなよ」
と言いながら尻を手で押さえてみせる

 

というような経験があると思うのです。

実際に、こういう状況に直面した場合は

あのですね、ゲイの場合、
そちら様が常識と考えている以上に
好みのタイプがはっきりしているのです。
男だったら誰でもいいなんてことはないですし、
あなた様を狙うというよう心配は
一切されなくて大丈夫ですよ。

 

というような内容を、
この文面の300倍くらいキツイ口調で伝えるか、
苦笑を浮かべながら心の中で舌打ちしながら毒づく
しかないのですけどね。

でも、これも同性愛者が得体の知れない存在だと思うがゆえのこと。
となると、

同性愛者から好意を示された = 拒絶することができない

 

と思ってしまうのも仕方ないのでしょうかね。

私たち当事者からするとゲンナリするような上記のQ&Aも、
無理解な人たちにとっては必要なのだと考えるべきなのかもしれません。

下記の記事でもまとめましたが、
頻発する性的マイノリティ差別発言を見逃してはならない理由
2015年末から地方議会の議員によるセクシャルマイノリティへの
あからさまな差別発言が立て続けに起こっていることを覚えていますか?

一連の発言をした(している)人たちこそ、
無理解な人の代表
だと思っていいでしょう。

この人たちの意識を変えていくには、
どれだけの時間がかかるのでしょうか?

そこに向き合うと、本気で絶望的な思いに囚われてしまいます。

しかし、ある物事への理解を深めていくには、
それ相応の時間はかかって当然
でしょう。

昨年6月に、全米の州で同性婚が認められましたが、
そうなったきっかけを遡ると、
1969年の「ストーンウォールの反乱」に辿り着きます。

※参考記事
同性愛者たちが大激怒!新作映画 “STONEWALL”に批判殺到

全米では46年の時をかけて、
セクシャルマイノリティの権利をかちとってきた
のです。
それを考えれば、日本でもそれ相応の時間をかけなければ
無理解な人の意識を変えていくことはできないのだと思いました。

どこまで長い時間がかかるのか分かりませんが、
少しでもマイノリティへの理解が広まって、
みんなが生きやすい日本
にしていきたいですね。

※参考記事
【ジェンダーマリアージュ】同性婚の権利を勝ち取ったドキュメンタリー映画は、エキサイティングな衝撃と感動だった。

<画像引用元>
Diversity Disconnect

READ  LGBTだけにかかるお金、LGBTだからかからないお金

ABOUTこの記事をかいた人

いたる

LGBTに関する様々な情報、トピック、人を、深く掘り下げたり、体験したり、直接会って話を聞いたりしてきちんと理解し、それを誰もが分かる平易な言葉で広く伝えることが自分の使命と自認している51歳、大分県別府市出身。LGBT関連のバー/飲食店情報を網羅する「jgcm/agcm」プロデューサー。ゲイ雑誌「月刊G-men」元編集長。現在、毎週火曜日に新宿2丁目の「A Day In The Life」(新宿区新宿2-13-16 藤井ビル 203 )にてセクシャリティ・フリーのゲイバー「いたるの部屋」を営業中。 Twitterアカウント @itaru1964