総勢600名が参加
10/26、第一生命ホールで行われたwork with Prideは過去最多の600席が満席という盛況ぶり。
主に企業の人事、ダイバーシティ担当者に向けて開催されるLGBTセミナーwork with Pride、2016年度は会場提供元である第一生命保険株式会社の挨拶からはじまりました。
2016年度の東京レインボープライドに参加した際に、
「へぇ〜あの第一生命がねぇ。」
という声をよく聞いたことがとても印象的だったと語る取締役常務執行役員の武富氏。
まだまだLGBTに関する取り組みに関しては初心者であるものの、多くのお客様に対して本当の意味で満足してもらうとはどういうことかをしっかりと考え社内環境の整備とともにLGBTに関する取り組みを進めていきたいと話しました。
第一生命では今週をLGBTレインボーウィークとして、全社的な研修や若手社員が製作したらレインボーフラッグを社内に設置するなどしています。
少子高齢化による働き手の確保の観点からも企業はLGBTに目を向けるべき
プログラム内の基調講演では国立社会保障・人口問題研究所から釜野さおり氏が、
企業がLGBTに目を向けるべき理由として人口問題、労働生産性の観点から、その重要性を話します。
講演のポイントとしては、以下のことを海外の研究レポートを交えて発表しました。
・労働人口が減っていく中、より一人ひとりの生産性に目を向ける必要がある
・LGBTに対する取り組みは、離職にともなう採用コストの改善に有効である
・制度面の整備だけでなく、時間をかけて雰囲気を醸成していくことが何よりも大事
制度だけでは足りない、雰囲気というのは当事者には敏感に伝わる
企業に勤める当事者によるパネル・ディスカッションでは、大手IT企業からモデレーターを含め4名の当事者が、感じてきた時代の変化や企業に求めること、これからのダイバーシティのあり方についてディスカッションを行いました。
職場でオープンにして働くことについてどう思うか?
2016年の東京レインボープライドで実施された職場でオープンにしているか/職場でオープンな人を知っているかというアンケート結果ではYESと答えたLGBT当事者が4割いることについて、それぞれどのように思うかという質問には、オープンにするといっても誰にでもいきなりゲイですとカミングアウトするようなことはなく、自然なタイミングで必要であればカミングアウトするというスタンスでいいと思いますと、それぞれの職場での生活と照らし合わせて回答しました。
社内で当事者コミュニティを立ち上げ、リーダーも努めているMさんは、社内のカミングアウトについてこう語った。
「2012年に入社した際は、カミングアウトしていませんでした。ただ、そうなると一緒に住んでいるパートナーのことや、小さい嘘をついて、また辻褄を合わせてということが多くなってしまうので、今は必要な際にはカミングアウトをするようにしています。」
LGBTブームについてどう思うか?
ここ1~2年、LGBTを取り上げられることが増えてきてある意味「ブーム」化しているという見方もあると思いますが、どう思いますか?という質問に対しては以下のような意見が語られました。
「90年代にはゲイブーム、2000年代はドラマの影響で性同一性障害が大きく取り上げられましたが、今回のは少し違うと感じています。今まではコンテンツとして消費されていた割合が大きかったと思いますが、今はこういったカンファレンスや、企業が動き始めていたり、より多くの当事者が声をあげはじめていたりするので、より持続的な動きを期待できるのではないかと思う。」
「LGBTも女性活躍も、まだまだCSRの文脈で語られることが多いと思いますが、実は、ダイバーシティこそが企業競争力の源泉だという考え方もあります。本業や業績とは関係ないけど、社会的にいいことだからというのは本来のダイバーシティの意図とは違う気がします。企業の成長に大きな影響を与えるものとして取り組んでもらいたい。」
JAL、NTT、IBMそれぞれが考えるダイバーシティとは
2つ目のパネルディスカッションでは、経営層からみたダイバーシティということで、ディスカッションが行われました。
登壇者は以下三名。
日本航空株式会社 代表取締役専務執行役員 大川順子氏
日本電信電話株式会社 常務取締役 島田明氏
日本アイ・ビー・エム株式会社 最高顧問 下野雅承氏
各社の特色を活かしたダイバーシティへの取り組みとは?
日本航空株式会社の大川氏は、女性活躍推進を数年前からはじめた中で、女性の中でも一人ひとり幸せの形は違うということを考えるようになった。性別やLGBT、障害といったくくりではなく、結局は一人ひとりを大切にするということに尽きるのだと思う。JALは女性活躍推進の際に、意識等のソフト面だけでなく、制度などのハード面も整備してきたノウハウがあるので、そういったことを活かして一人ひとりが働きやすい環境を作っていきたい、と話しました。
IBMの下野氏は、IBMはIT系企業で105年の歴史があるという稀有な企業、これからのIT産業というめまぐるしい変化していく環境で戦っていくためには多様な人材が不可欠であることを以前から認識しており、だからこそ社内でも柔軟にダイバーシティへの取り組みを進めてこれた。過去の延長線上には未来はなく、新しい視点のためにも多様化をこれからも進めていきたいと話しました。
分かってもらうためのアプローチは試行錯誤していく必要がある
ダイバーシティに取り組んでいくことに、どんな難しさを感じるかという質問に対しては、
NTTの島田氏は、まだまだはじまったばかりなので、本当の難しさを実感するのはこれからだとは思うが、社内で話していても毎回LGBTに対する取り組みに賛同されるわけではなく、疑問を持たれることもまだまだ多い。そういった違う視点を持つ人たちにどう響かせていくか、いろんなアプローチで訴えていかないといけないと思う。一方的な議論を続けても理解を得られないこともあるので、柔軟に対応していきたいと、話しました。
LGBTに関する取り組みを表彰されたのは79社
今年からはじまった、企業のLGBTに対する社内社外を含めた取り組みを表彰するPRIDE指標では、79社が受賞しました。
評価はゴールド、シルバー、ブロンズの三段階あり、すべての評価項目を満たした企業に贈られるゴールドを受賞したのは53社にのぼり、
その中でも特筆すべき活動に贈られるベストプラクティス賞にはライフネット生命株式会社のレインボーフォトプロジェクトが選ばれました。
来年はさらに規模が大きくなると予想されるwork with Pride
今年で5回目を迎えるwork with Prideは、過去最多の600名を動員。
1回目の動員数と比べると約12倍を誇ります、PRIDE指標もはじまり来年はさらに大きなイベントになることが予想されます。