LGBT差別禁止法を否決させたウクライナ、EUのビザフリーの旅行協定の加盟を拒否される
ウクライナはEU内でのビザフリーの旅行協定への加盟を目指していた。しかし、ウクライナ議会でLGBT当事者への差別を禁止する法律が否決されると、加盟を拒否される結果となった。
シェンゲン協定
ウクライナは、ヨーロッパとの関係を深めていきたいと考えているグループと、ロシアとのつながりを強めていきたいと考えるグループにはっきりと二分されている。そのウクライナが、今年初め、ヨーロッパのシェンゲン協定の加盟を申し出ていた。
シェンゲン協定は、ヨーロッパ内での自由貿易を促進することを目的としている。加盟している26か国の間を市民はビザフリーで行き来することができ、また国境を越えるときにもパスポートを見せる必要がない。
ウクライナの加盟条件
一方で、シェンゲン協定の加盟国はいくつかの条件を満たしている必要がある。その中でもEUはウクライナに対して、協定に加盟する前にLGBT当事者に対しての差別を法的に禁止することを求めていた。
この必須条件ともされてきたLGBTの権利の改善に関する法案を、今週ウクライナ議会は圧倒的な反対票をもって否決したことで、協定に加盟する計画は頓挫することとなってしまった。450人の議員のうち法案に賛成した議員はわずか117人だったという。
欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長はウクライナの大統領に対して、司法と人権の改革なしにはウクライナ市民にビザフリーの入国等を認めることはできないと語った。
ウクライナのLGBTをめぐる状況
ウクライナでは、極端な保守グループとLGBTの権利を主張するグループの間での対立が頻繁に起こっている。首都のキエフでのプライドパレードは、同性愛などに反対する人たちの攻撃の標的となっている。今年初めにも、キエフプライドで暴力事件が起こった。伝えられるところによると、暴力集団がパレード参加者や警官に石や発煙弾などを投げつけ、その結果2人の警察官が負傷したという。
昨年10月には、キエフ最古の映画館で同性愛の映画を上映していた際、何者かによって火災が引き起こされた。幸い負傷者はいなかったが、映画館はひどく燃えてしまったという。また、2人の男性がキエフの公の場で手をつなぐとどうなるか検証しようとしたところ、暴力団に襲われるという事件があった。
画像出典:Pink News