アートはLGBTへの”無関心”を打破できるのか?【対談×コピーライター銭谷侑】

2/14、「”好き”に変はない展2017」が開催されます。
2015年からはじまったこの展示会イベントは、写真家青山裕企
さんの写真に象徴的なコピーをつけて展示するというもの。

提供:"好き"に変はない展

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「LGBT」といった言葉を使わずに、見る人の心を動かし反響の大きい企画となり、Twitter上でシェアされた画像を見た人も多いのではないでしょうか。
三度目となる「”好き”に変はない展2017」では、参画するクリエイターの数を増やし、より様々な視点から”好き”を考える企画になっています。
まだまだLGBTを題材にしたアート作品が少ない日本の中で、関心を持ち初年度から、コピーライター兼展示会全体のクリエイティブディレクターとして参画した銭谷侑さんに「アートはLGBTへの無関心を打破できるか」をテーマに話を聞いてみました。

銭谷侑 大学を卒業後、大手広告代理店に入社しコピーライターとして活躍。ことばの技術を活かして、商品・サービス開発や、街の再開発など広告以外の領域でも活躍中。

銭谷侑
大学を卒業後、大手広告代理店に入社しコピーライターとして活躍。ことばの技術を活かして、商品・サービス開発や、街の再開発など広告以外の領域でも活躍中。

外山雄太 レティビーライフを運営する株式会社レティビーを大学卒業と同時に設立。自身もイラストレーターとして活動中。

外山雄太
レティビーライフを運営する株式会社レティビーを大学卒業と同時に設立。自身もイラストレーターとして活動中。

使われている言葉に頼らないことで、入り口を広げていく

外山) まず簡単に銭谷さんの言葉で「”好き”に変はない展」がどういうものかということを教えてもらえたらなと思うんですけど。

銭谷) 「”好き”に変はない展」は、2015年からずっと使い続けている言葉があって、「バレンタインを”好き”について考える日にする」というのをスローガンにしていています。例えば、母の日はお母さんに感謝する日とか、父の日はお父さんに感謝する日とか、あるじゃないですか。1年に1回、人の多様性について考える日を作りたいなと思って作ったのが、「”好き”に変はない展」だったりします。

外山) 企画の内容はどんな感じなのでしょうか。

銭谷) 企画の内容は、初年度の2015年は、青山裕企さんの写真と僕の書いたコピーで、写真と言葉の展覧会ということで始めました。2015年は、日本セクシャルマイノリティ協会主催で、青山さんと僕の個展としての展覧会だったんですが、2016年からはいろんな人が参加できるようになっていて、レズビアン漫画家のネギたぬさんや、バイセクシャルでカメラマンをしている女子高生や、その他、コピーライターとかイラストレーターなど、いろんな人が「”好き”に変はない」というテーマで、表現し合う場になっています。個展から祭典に進化していて、なるべく多くの人が”好き”に変はないっていうテーマで表現をし、なるべく多くの人にその表現を見てもらい、”好き”の多様性について考える場所になっていくといいなという感じですね。

外山) 銭谷さんはコピーライターからのスタートだったと思うんですけど、銭谷さんの動機というか、関わろうと思った理由はなんだったんでしょうか?

銭谷) 一番の動機は、ぼくが最初に付き合ったのが男だったということがあって、それが自分の原体験としては大きかったですね。あとはたまたま周りに、LGBTの人たちも結構多くて、それもきっかけになったという感じですね。

外山) 今、LGBTという言葉が出てきたと思うんですけど、今って、分かりやすさとかもあって、やはりLGBTっていうワードがどこでも出てくると思うんですね。そんな中、「”好き”に変はない」というタイトルじゃないですか、LGBTというのを使わずに、この名前になった理由があれば教えてください。

銭谷) 「”好き”に変はない展」という名前にするときにものすごく悩んだのですが、一番この展覧会を見に来てほしい人はLGBTの本人はもちろん、LGBTに関して考えたことがない人に来てもらいたいと考えたんです。LGBTをテーマにした表現と出会うことで、人ってひとりひとり違うし、同じところもあるし、それはそれでいいじゃんっていう風に思ってもらえるといいなあと。その時に同性愛とか、LGBTとか、ゲイとか、レズビアンという言葉を使っちゃうと、その全然考えたことがない人たちが来てくれないと思ったので、なるべく多くの人に対して入口を作るために、「”好き”に変はない展」っていうネーミングにしたんです。

外山) そうですね、LGBTという呼び方の代わりに最近はSOGI(「Sexual Orientation and Gender Identity (性指向と性のアイデンティティ)」の略語。)という言葉も出てきています。本来、ジェンダーとかセクシュアリティって、特定の人のための話ではなく、この世に生まれたすべての人に関わることがらなんですよね。すべての人にアプローチする必要がある。ただ、アートとかエンターテイメントが社会に与える価値というか、どういう風にアートの力みたいなのを考えてらっしゃるんですか。

右:去年の"好き”に変はない展について説明する銭谷さん。左:レティビーライフ外山

右:去年の”好き”に変はない展について説明する銭谷さん。左:レティビーライフ外山

法律とか仕組みとかをより機能させるためのエネルギーが、アート

銭谷) たぶんいろんな考え方があるんですけど、本質的に世の中を変えるのってアートの力だと思っています。世の中を変えようとしていて、例えばLGBTとかでも例えば法律を変えるとか社会の枠組みを変えるとか建物の仕組みを変えるとか、そういうことも大切なんですが、法律が変わっても社会の仕組みが変わっても、「人の心」が変わらないと世の中の根幹は変わらないと思っています。そう考えると、人の気持ちを変えるためには、仕組みとか法律とかではなくアートだと思うんですよね。やっぱりLGBTに対して、ひとりひとり違ってもいいじゃん、むしろそれを未来に生かそうよとか、そういう風に人の気持ちが変わると、本質的に世の中が変わっていくかなと思っていて、そのためにアートの力が必要という感じですね。

提供:”好き”に変はない展

提供:”好き”に変はない展

外山) 確かにセーフティーネットという意味で、深刻度が高い人たちを支えるための法整備とか、たとえばトイレとか制服とか福利厚生みたいなものが変わっていくのももちろん大事というのはありながらも、まさに、日常生活のなかでコミュニティを作って生活している人が、それこそ個々が変わらないといけないっていうことですよね。でもそれじゃ弱いよねという意見ももちろんあるわけで、そのなかで銭谷さんが、アートなんだとこだわる理由というものを教えていただけますか。

銭谷) 法律とアート、どっちも必要だと思うんですが、例えば戦争は、法律だけじゃなくならないと思うんです。世界には国連という仕組みがあったり、日本では、憲法で戦争はしませんと宣言していますが、世界から戦争はなくなっていませんよね。法律や仕組みだけを作っても、人の気持ちが変わらないと、なかなか世の中が変わっていかないなと思っています。例えば、ベトナム戦争の悲惨さを伝えた「戦争の恐怖」という写真をご存知ですか?爆撃を受けて裸で逃げる少女を撮った写真なんですが・・・

戦争の恐怖:http://historydaily.org/wp-content/uploads/2015/12/Vietnam-War-11.jpg

戦争の恐怖:http://historydaily.org/wp-content/uploads/2015/12/Vietnam-War-11.jpg

ジャーナリストが実際にベトナム戦争に行って撮ったこの写真が、当時、世界の多くのメディアでも報道されたそうです。全世界で「やっぱり戦争は良くないよね」というふうに、人の心が動いたんです。ベトナム戦争が終わった要因は複数あると思いますが、この写真自体も、戦争に対しての抑止力につながったと思っています。そういうこともあったので、法律だけじゃなくて、人の心を動かすアートや表現も同時でやっていかないと、きっとだめなんだなと。

外山) 僕は数年前にスペインに少しだけ住んでたことがあって、同性婚があったからある程度寛容なんだと、自分がゲイであることを、あるコミュニティの中でカミングアウトしたんです。そしたら、「あまりゲイだとか言わない方がいいよ」と言われたので、なぜか聞いたら、「スペインでは、国民の間でも十分に議論が進む前に同性婚が決まってしまったから、そういうことを見ず知らずの人が聞くとまだ差別にあったり、嫌な思いをすることがあるから」と言われたんです。法律が変わればいいものじゃないんだなとすごいその時に感じて、まさにそういうところなんだなと。

銭谷) そうだと思います。
外山さん自身もイラストを描いたりされていると思うんですが、もし外山さんが、アートというのはLGBTへの無関心を打破できるかと、問いかけられたらどう答えますか?

左:外山 右:銭谷さん

左:外山 右:銭谷さん

外山)打破しうる強い可能性を持っている一つの切り口かなと感じています。それはなんでかというと、僕がLetibeeを立ち上げたときからずっと大事にしたいと思い続けているのが、「共感」という切り口なんです。僕自身、自分ではゲイだけど、他のマイノリティの人たちに対していきなり「自分ごとと」として捉えることが難しいことがあって、そういうときにいろんな切り口があったら、その切り口のなかには共感できるポイントって結構見つけられるものだなって思うんです。例えばLGBTでいうと困難が一つの共感ポイントになる人達がいるかもしれない。その人がどれだけ大変だったかとかそういうところに共感する人もいると思うし、結婚式っていう、たくさんの人が参加したことのあるひとつのライフイベントを切り取ることで身近に感じたりとか一緒じゃんと思えるひともいると思う。人によって共感ポイントって全然違うと思うので、それをいろんな面からせめることで共感ポイントの幅って広がってって無関心じゃない人たちが増えていくという意味で、打破する可能性はあるかなと思います。

銭谷) 法律とか仕組みとかをより機能させるためのエネルギーが、アートなのかもしれません。なんでその法律ができたのかとか、なんでこの仕組みができたのかとかって、啓蒙や説明じゃ共感はできなくて、アートや表現の力を使って、共感を作ることが大切なのかなあと。よりその法律の意味をみんなが自分ゴト化としてわかれば、よりその法律は機能して、世の中が変わっていく、そんな気がしますよね。

外山)「”好き”に変はない展」がはじまったのって2015年じゃないですか、それに至るまでいろんなアート作品に触れてこられたと思うんですけど、例銭谷さんが思う素敵な表現ってありますか?

銭谷) バーガーキングの「プラウドワッパー」の試みは、素晴らしいと思いました。

外山)あれは素敵でしたよね。

【プラウドワッパー】
サンフランシスコでのプライドパレードにあわせて行われたキャンペーン

銭谷) 法律まで変えているかわからないですが、当時アメリカでも州によって認識が違うなかで、あれをやってたっていうのはすごいなって。

外山) 僕はバーガーキングもすごい好きなんですけど、love has no labelっていうキャンペーン、あれはとても衝撃的だったというか、こんなうまい方法あるんだぁみたいな。

【love has no label】
AdCouncilによる、偏見を捨てて多様性を伝えるためのキャンペーン

外山) あれは、「え、映ってるのはみんな人間じゃん、みたいな、同じ人間だよねっていう。」みんな生きてる人間なんだってことが、当たり前になりすぎて、実は日常生活で感じることってあまりなくて。それを感覚的に、直感的に感じられるような手法で展開された、というのがすごいな、と。より多くの人にとって普遍的なことこそ、共感ポイントのレベル感が浅くなってしまいがちですし
すが、このプロジェクトは自分いろんな人が共感できるかつ、否定できない内容なんですよね。

銭谷) love has no labelは、人種、障がい、LGBT、宗教、いろんなテーマを含んでいましたが、日本では特にLGBTという文脈で、話題になってましたよね。日本と海外で、見えやすい人種問題だとかそういう違いはありますが、LGBTの社会課題はどの国も根幹は一緒というか。海外よりも、人種問題を自分ゴト化しくい環境にいる日本人は、もしかするとLGBTというテーマのほうが、ダイバシティを考えやすいテーマなのかもしれません。「“好き”に変はない展」も、小さな展覧会として始まったのですが、メディアやネット上で多くの人が拡散してくれるなど、心が動かされる人は多いのかなと思います。

外山) 僕もそうだと思います。あとひとつ思うのは日本だと、もちろん性質やでき方って全然違うんですけど、法律もひとつある種のひとつの作品な気がしてて、人が作ったものって意味で。っていうことを考えると、逆にスペインで僕が体験したこととは違う感じで日本って法律ができたから変わろうかみたいな、「法律ができるくらい政府とかがやらなきゃいけないものなんだ」みたいな。ただそこでかわらない人もいるし、そこで不十分な人もいるんだろなって気はしてますけど。

銭谷) 法律もある意味アート作品っていうのはおもしろいですね。

外山) 「”好き”に変はない展」をはじめて見たのって普通にネットだったんですよ。紹介してもらう前にネットで流れてきて、ツイッターで作品が拡散されてて。LGBT等の特定の言葉を使わずにいろんな人が共感できる言葉で表してるのって、それまでみたことがなくてすごく素敵だなって思ったんです。

啓発、説明に共感する人は絶対にいない。人と違うものにしかお金も払わない。

銭谷) 啓発とか説明に、人は絶対に共感しなくて、エンターテイメントにするとはじめて人は共感すると思っています。例えば、2015年の「”好き”に変はない展」の作品で一番、クリエイティブとしていちばん評価が高かったのは、「同性を好きになる人は、じつは左利きの人と同じくらいいる」というコピーだったんです。このコピーの内容を、説明的にいうと「LGBTは7~8%くらいいますよ」になるんです。でも、人ってそう言われても共感しないんですね。7〜8%というのが多いのか少ないのかもイメージしにくいんです。でも、7~8%という情報を、「左利きの人と同じくらいいる」っていう表現に変えることで、そのくらいいるんだとか、発見があって、共感してくれるようになる。ただの説明や、啓発、啓蒙になっちゃうと、誰も共感してくれないし、シェアもしてくれない。

外山) 銭谷さんの、啓発とか啓蒙には人は絶対に共感しないっていう、そこで「絶対に」っていうのをつかうからにはたぶん自分の中で培ったものがあると思うんですけど。

銭谷) たぶんそれは、広告会社で働いていたというのがすごく大きくて、企画書に人は感動しないんですね。企画書って、説明とか構造が書いているだけで、その構造を世の中にだすと、こういうふうに人は動きますよっていうところが大事なんです。だからプレゼンでは、企画書を見せたあとに、企画書にある仕組みを世の中に出すと、こういう未来が待ってますよというのをヴィジュアルや映像にしてみせると、心がぐっと動いたりする。「仕組みや法律を動かすのは表現」というのは、仕事の中で経験上培ってきたものですね。

銭谷侑さん

銭谷侑さん

外山) 「”好き”に変はない展」が2015年に始まって、2016、2017と、いろんな人の”好き”に変はない、というのを表現してもらおうという参加型になってきて、より広げていきたいっていう思いでやっていると思うんですけど、この先「”好き”に変はない展」はどうなっていくんですか。

銭谷) 例えば、昔「オタク」って言葉がものすごく差別的に使われていたじゃないですか。でもコミケがどんどん盛り上がって、一人ひとりちがう趣味を認め合い、それがコンテンツやビジネスになっていくという流れができている。そのおかげで、いまは「オタク」という言葉がマジョリティに変わってきてますよね。普通の女子高生が「自分もオタクなんですけど」って言えるようになってきている。
ある意味、「”好き”に変はない展」もLGBTのコミケのような場所になるといいなと思ってるんです。一人ひとりが「人とのちがい」を表現し合って、それがコンテンツになって、もっというとビジネスとしても成り立っていったらいいなと思ってるんです。人とちがう生き方をした人や、人とちがう視点をもっている人が、どんどん価値になっていくといいなと。
理想は、人と違うってことが価値化されていって、世の中が回っていったらいいなあと。

外山) いま、人と違うということが価値化されていくって言われたじゃないですか。それすごいいい言葉だなと思っていて、日本で違うことって全然価値じゃなかったじゃないですか。それを、人と違うってこと、それを強みにして作品を作ったり、ポジティブにとらえて表現していくことで価値化していくっていうのがいいなと。

銭谷) ビジネスや社会のなかで、人は人と違うものにしかお金を払わないって思ってるんですね。例えば、広告業界でのクリエーティブは、それが特に顕著だと思います。変わった経歴を持ってる人とか、変わった趣味を持ってる人とか、たとえば最初に付き合ったのが男とかということも、相手からの期待値を高めることにつながるんですね。人との違いを見せたほうが、「人には思いつかないことが、この人には思いつくんじゃないか」と思わせられるんです。

銭谷侑さん

銭谷侑さん

実は人は、自分と違う人生を生きてる人に憧れているというか、自分はそういう人生を生きられないから、敢えてお金を払って、自分とはちがう人生を疑似体験してると思うんです。
たとえば、自分とは違う生き方をしてる人のドキュメンタリー本や映画を買うとか、自分と違う生き方をしてる人だからこそ、アドバイスやアイデアを相談しにいきたくなるとか、実際、世の中はそう動いていると思います。大人になって初めて、人と違うことが価値になるなって思えたんですけど、学生のころはまったく、そうは思えませんでしたね。だからなるべく早い段階で、小中学校くらいのときから、人と違うってことが、実は価値になるし世の中を変えていく原動力になれるっていうことに気付いてもらいたいなって思います。

外山) 学生のときに、「違うことは価値に思わなかった」と仰ってたじゃないですか。結構それで大変だったことはあったんですか。

銭谷) どうしても学校のルールに馴染めなかったりしていて、友達が少なかったりとか。今もですけど(笑)

外山) ルールとして明確化されているのだけじゃなくて、たぶん、暗黙の了解とかってあるじゃないですか。そういうのは僕もすごい馴染めなかったりとか、無理に迎合して疲れちゃったりとか、違いを隠そうとして迎合した結果、自分が疲弊しちゃった、みたいな。高校時代、ゲイだなって気付いたあとも、好きな芸能人とか聞かれたら必ず「菅野美穂」って答えるようにしてて(笑)他のところで矛盾がおきないように。菅野美穂って答え続けると自分の中のうそつきポイントが少しずつ溜まっていくっていう気持ち悪さはすごくあって、自分を取り繕ってるとそこにどんどん嘘重ねていかなきゃいけないみたいな。

銭谷) 外山さんが、ある意味自分がゲイだってこともあって、人と違う人生を送ってきたからこそ、そこに対してお金を払ってでも外山さんの話を聞きたいという人がいると思うんです。まさに、世の中で自分の違いを価値化されていますよね。

外山) 今日、ぼく銭谷さんの話を聞いていいなと思ったのが、ゲイであることとか、違うことそのものが価値というよりも、それを経験しているからこそ持てる視点があるというふうにずっと言ってると思うんですけど、それすごく共感するというか、本当そうだなと思うんですよね。「ゲイなんだ、おしゃれなんだね」とかそういうことじゃなくて、そこって非常に間違いやすいところだと思うので、銭谷さんの言葉の選び方をみてるとすごく慎重に選ばれてるんだろうと感じます。

提供:"好き"に変はない展

提供:”好き”に変はない展

持続させていくことはムーブメント、カルチャーを作る上で不可欠なもの

外山) ちょっと話は戻って、「大人になって初めて人と違うことが価値になるってことがわかった、でも学生のときはそうは思えなかった」と仰っていましたが、一番最初の「”好き”に変はない展」って、学校が舞台ですよね、モチーフに学生を選んだのもそれがきっかけなんでしょうか。

銭谷) もともとはそうですね。なるべくLGBTに会ったことがないと思ってる人たちに対して、届けたいという思いがあって、だからこそ学生をターゲットにしていました。学生をターゲットにしたほうが、SNSでもシェアされやすいとも思っていたので。ただ、今後は関わるクリエイターも多いので学生のテーマだけじゃなくて、いろんな大人とか年齢層幅広く作品をだしていますね。

外山) プロジェクトを広げていくことに対して、周りからの批判はなかったのでしょうか。

銭谷) ありましたね、というのは、主催している日本セクシャルマイノリティ協会は、とても少ないメンバーで運営しているので、きちんと持続できる範囲で徐々に大きくしていこうと思っています。持続するというのに意味があると思うので、例えば4年目とかに大きくしすぎて、次の年はできなかったです、みたいなことになったら、元も子もないですからね。

外山) 持続することが大事というのは、人の意識を変えるために、ということですか?

銭谷侑さん

銭谷侑さん

銭谷) そうですね、人の意識を変えることもそうですし、毎回やるごとにファンが増えてくといいなと。無関心な人たちが、”好き”に変はないというテーマに共感してくれて、応援しようとか、来年は出展してみようとか、どんどんファンが増えて行って、実際にアクションまでしてくれるようになると、世の中が本当に変わっていくなと。

外山) 実際に今まで出展してくれた人のなかに、前までは普通に来場者だったけどって人もいたりするんですか。

銭谷) いるんですよ!2016年にバイセクシャル女子高生カメラマンとして作品を出した高森さんは、2015年に展覧会を見に来て、「”好き”に変はない展」をきっかけに写真家になることを決意したらしんです。2016年に実際作品も出展して、さらに青山さんの事務所のアシスタントみたいなこともしていると聞きました。

外山) すごい。

銭谷) 「”好き”に変はない展」やるっていうのはゴールじゃなくて、これをきっかけに新しいアクションにつながっていくとか、そうなっていくといいなって思うんです。

外山) 出展している人たちというのは、違う視点の強みを活かして、表現している人たちということなんですね。

銭谷) そうですね。人と違うってことが、きちんと表現という価値になっていって、それを見に来る人も「自分も表現してみたいな」と思ってアクションする、みたいな連鎖が続いていくといいなと思います。

左:外山 右:銭谷さん

左:外山 右:銭谷さん

外山) すごいですね、この企画。

銭谷) まだまだ規模が小さいプロジェクトなので、徐々に大きくなっていってファンが増えてくといいなって思ってます。今年は茅場町でやるのでぜひ見に来てくださいね。

外山) いつからいつでしょうか?

銭谷) 2月14日から19日までです。「”好き”に変はない展」のホームページで、日程や場所を紹介していますので、ぜひ検索してみてください。

外山) ありがとうございます。

“好き”に変はない展 2017
場所:Japan Creative Arts Gallery http://jcagallery.net/ ※東京メトロ日比谷線「茅場町」駅から徒歩3分
期間:2017年2月14日(火)13:00 ~ 2月19日(日)16:00
(※初日、最終日以外11:00 ~ 19:00)
入場料:無料
特設サイト:http://sukiten.jp/
クラウドファンディングサイト:https://greenfunding.jp/lab/projects/1773
主催:日本セクシャルマイノリティ協会 (一般社団法人 日本同性愛者協会)

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