日本で初めて導入されるパートナーシップ制度
海外には、同性婚やそれに準ずる制度を持つ国がたくさんあります。日本にはそのような公的制度はありませんでしたが、今年渋谷区が国内で初めてパートナーシップ制度を含んだ条例を可決させました。ここでは、このパートナーシップ制度によってどのようなことが変わるのか、簡単にご説明します。
パートナーシップ制度って?
これまで国内の制度・サービスの多くは、いわゆる「異性愛カップル」を前提とした「家族」を基準に作られてきました。そのため、法的に「家族」関係を結ぶことのできない同性カップルなどは、それらの制度・サービスを享受できないことがありました。
そのような状況を受け、今年に入ってから渋谷区が条例、続いて世田谷区が要綱によって、区内に住む20歳以上のLGBTのパートナー関係を証明する制度を取り入れることになっています。このパートナーシップ制度により同性カップルなどは「結婚に相当」する関係として承認され、一部で異性愛カップルと同等の権利を受けられるようになります。この制度に法的な拘束力はないものの、渋谷区の条例には「区民および事業者はパートナーシップ証明に最大限配慮しなければならない」と明記されています。
パートナーシップ制度により受けられる制度・サービス
では、今回のパートナーシップ制度によって、具体的にはどのような制度・サービスが受けられるようになるのでしょうか?ここでは大きく3つを紹介していきます。
①医療機関での対応
これまでは、同性のパートナーが緊急入院など医療サービスを受けている際に面会や治療方針についての関与を断られることがありました。しかし、パートナシップ関係が認められるとこのような対応が改善され、「親族」と同等に扱われると考えられます。
②区内の賃貸住宅への入居
これまで同性カップルなどは「親族」と同等に扱われていなかったため、区営住宅などの家族向け物件に入居できませんでした。しかし、パートナーシップ制度によって入居資格を得られると考えられます。
また、民間の賃貸住宅においても、ある程度の効果が見込まれています。例えば、以前は不動産業者側が同性カップルであることを理由に入居を断るケースがありました。渋谷区の場合には、条例でセクシャルマイノリティへの差別を禁止しているため、同性カップルであることを理由に入居を断ることは条例違反に当たります。
③家族向けサービス
パートナーシップ制度を利用することでいくつかの家族向けサービスが適用されると考えられます。
例えば、携帯電話の家族向けサービスは、これまでは同性カップルへの対応は携帯会社によって異なっており、Softbankのみが住所が同一であることが確認できれば、同性カップルの家族割引の利用を認めていました。しかし今回のパートナーシップ制度の導入を受け、KDDIとNTT docomoの両社が同性カップルであってもパートナーシップ関係を証明できれば家族向けサービスを適用するという決定を明らかにしています。
また、会社での家族手当の受給や慶弔休暇などの福利厚生制度も、事業者側の判断で同性カップルなどに適用されると期待されます。
パートナーシップ制度の課題
パートナーシップ制度には法的な拘束力がなかったり、異性間の婚姻で与えられる相続や社会保障などには効力を持たなかったり、渋谷区の場合は証明書の発行に手数料がかかるなど、問題視されている部分もあります。また、実際に区内の医療機関等がどの程度対応してくれるのかということも制度が動き出してみなければわからない部分ではあります。しかしながら、今回のパートナーシップ制度の導入を受けて、LGBTについての社会的な注目度を高め、可視化を促進したという見方はできるでしょう。
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