あるゲイカップルの物語~互いを愛し続けた42年間〜

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オレゴン州の同性婚キャンペーン動画

アメリカの憲法がまだ同性婚を認める前の2013年に、オレゴン州の同性婚キャンペーンのために作成された、あるゲイカップルの42年間を思い出の写真と共に本人たちが話すこの動画。

ゲイカップルも、異性カップルと何も変わらない恋愛をしています。出会い、恋に落ち、お互いを理解し、家族となり、支え合いながら共に年を重ね、生きていくのです。ただ一つ違うのは、異性カップルには婚姻による全ての法的、社会的な権利と義務関係、そして結婚という特別な響きを持つ関係性が認められているのに対し、ゲイカップルにはこれらを得る権利が与えられていません。

ウォーレンさんとエドさんの物語

残念ながら動画は英語のみであるため、下記に動画の中でウォーレンさんとエドさんが話している内容を書き出しました。

 

ウォーレンさんはオレゴン州で生まれ育ちました。夏の間は近くのベリー農園でアルバイトをして過ごすのが定番でした。
エドさんはサクラメントという町で生まれ育ちました。ベリーを育てる農場での仕事のためにオレゴンへ引っ越し、そこでウォーレンさんとエドさんは出会いました。

初めて会った時のことは今でも覚えています。ウォーレンはある建物の中2階にいて、私はそれを下から眺めていました。私は隣にいた友人に、あそこにいるのは誰だと聞きました。そこで初めて彼の名前を知りました。そして、その名前を私は2度と忘れることはありませんでした。なぜなら、私はすぐに彼にぞっこんに惚れ込んだからです。

そんなある日、ウォーレンが私に、ペティックマンション(オレゴンにある歴史的な建物)へ日の出を一緒に見に行こうと言ってきたのです。私は当時すでに自分がゲイであることに気づいていたのですが、その後も友人としての付き合いを変わらず続けていました。同じ大学に進んだことで、たまに一緒に過ごすことがありましたが、それも友人としての付き合いでした。ところがある日、大学の中庭でウォーレンが私に、「君はゲイなの?」と聞いてきたのです。そして、私は、「そうだよ!」と答えました。その日から私たちの新しい付き合いが始まりました。

1970年に大学を卒業し、ポートランドのダウンタウンで2人とも仕事が見つかり、24,5歳の時に最初の家を買いました。当時は誰も私たちのことを理解はしてくれていませんでしたが、私たしは普通のカップルと同じように42年間を一緒に過ごしてきました。

そう、42年間と言う長い婚約期間を過ごしてきたのです。

ウォーレンは内気で口数が少ないけど、とてもロマンティックでセンチメンタルです。
エドは家族の中で一番話好きで、たくさん話をします。そして、いろいろな計画を立ててくれます。エドと私は親友であり、彼に代わる誰かなんて考えられないし、彼なしで僕は生きていけないと思うと話します。
もし、ウォーレンに何かあったとしたら、私はただ死ぬのを待つだけどの人生になってしまうだろう。
私たちはお互い愛し合っています。私たちはオレゴンで出会い、オレゴンに沢山の思い出があり、これからもオレゴンで過ごすことでしょう。

私たちが共に過ごした42年間、そして64歳になった今、やっと私たちにも結婚の可能性が出てきました。

若者たち、君たちも私たちのように大切な人を見つけ、その人と一緒に42年間を過ごすことができるんです。そして42年たった今でも、お互いに夢中でいられる。

オレゴンで私たちが結婚できる自由を勝ち取りたいです。
私たちは人生を共に過ごし、お互いを愛しています。

2015年、アメリカ最高裁が同性婚を認める

2014年11月にはオハイオ州、ミシガン州、ケンタッキー州、テネシー州を管轄する連邦高等裁判所が同性婚を認めないとの判決を出し、最高裁へと判断が委ねられました。

そして、2015年に最高裁判事9人のうち5人が合衆国憲法14条を理由に同性婚は認められるべきと判断し、全米で同性婚禁止が違憲とされ、全ての州において同性婚が可能となりました。

そして、最後にアンソニー・ケネディー(Anthony Kennedy)判事によって読まれた連邦最高裁判所の裁判所命令の一部がとても感動的なので紹介します。

原文:
No union is more profound than marriage, for it embodies the highest ideals of love, fidelity, devotion, sacrifice, and family. In forming a marital union, two people become something greater than once they were.

As some of the petitioners in these cases demonstrate, marriage embodies a love that may endure even past death. It would misunderstand these men and women to say they disrespect the idea of marriage. Their plea is that they do respect it, respect it so deeply that they seek to find its fulfillment for themselves.

Their hope is not to be condemned to live in loneliness, excluded from one of civilization’s oldest institutions. They ask for equal dignity in the eyes of the law. The Constitution grants them that right.

日本語訳:
結婚以上に深い結びつきが、この世の中にあるでしょうか。結婚とは愛、忠誠心、献身、犠牲心、家族を理想の最高地として具体化したものなのです。婚姻を結ぶことで2人の個人は今までの自分たちを超える素晴らしい人間になるのです。

これらの訴訟の申請人たちは、たとえ死が2人を分かつことがあったとしても途切れぬ愛情が結婚にあると証明しました。そのため、彼ら、訴訟の申請人たちが結婚を軽視していると言うのは大きな誤解であります。彼らの申し立ては結婚に敬意を示しているがためであり、だからこそ、彼ら自身がそれを実現する術を見つけようとしているのです。

彼らの望みは文明最古の時代より受け継がれてきた婚姻という制度から除外され、孤独に生きることを強いられないこと。法の下に平等なる尊厳を求めているのです。憲法は、彼らにもその権利を与えています。よって、当法廷は第六巡回区控訴裁の判断を破棄する。

(訳:Dice-Kay)

婚姻制度からの除外と孤独

結婚している人、これから結婚をしようとしている人にはこのアンソニー判事の言っていることがわかることでしょう。愛する人ができた時、人は強くなれるのです。守りたい誰かができた時、そこに生きる価値を見出すのです。1人ではなく、2人で生きていくことで、これまで1人では成し得なかったことさえも、可能になるのです。

ところが、もしあなたがこの特別な結びつきを得ることができなかったらどのように感じますか?愛する人、守りたい人は目の前にいるのに、その特別な関係性を法律が認めていないがために守ることができない、協力して共に生きていくことができない。

その感情が今までゲイカップルが感じていることです。1人ではないのに、1人とされてしまう。少なくとも私はそう感じていました。

アメリカでは2015年に同性婚が可能になりましたが、日本ではまだ同性同士で結婚をすることはできません。日本で暮らす多くのゲイカップルがこのことを理由に、孤独や将来への不安といった悩みを抱えています。日本でも同性婚への理解が早く進み、同性婚が可能になる日が1日も早く訪れることを私は望んでいます。

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ABOUTこの記事をかいた人

高校、大学の6年間をアメリカで過ごしたあと、2004年5月に日本へ帰国。働き始めると同時期に、今のパートナーと日本で出会い、すぐに同棲生活をスタート。 パートナーの出身国であるドイツでは同性婚(正式名所はパートナーシップ)が可能なことから、将来を考え、ドイツへの移住を決意。同棲から10年が経った2014年12月にドイツにて、パートナーシップを行い、 現在は新しい家族(ラブラドール レトリバーのメス)と共にベルリンで暮らす。