自分のことがわからず、ずっと悩み続けてきた
たとえセクシュアリティで悩むことがあっとしても、「いろんな愛の形があっていいんだ」と実感する経験をすること、そして自分と同じような仲間を見つけることで、本来の自分を取り戻すことができるようになると思います。
私も学生時代に悩んだ経験があります。中学に入学したばかりの頃です。新入生向けの部活動のオリエンテーションでアキ先輩(仮名)に出会いました。アキ先輩はソフトボール部の中では一番小柄でしたが、足がとても速くて、ボールを追いかける、ややつり上がったアーモンド形の目が印象的でした。仲良くなりたくて、でも相手は3年生だし関わるにはどうしたらいいものかと悩んだ末・・・入部することにしました。ソフトボールに興味はありませんでしたが・・・。
入部したものの練習はきつく、先輩とはたまに一言二言、言葉を交わすだけ。更に、3年生は受験のために部活動は夏までと決められていたので、わたしが入部してすぐに先輩は退部してしまいました。放課後に何の楽しみも見出せなくなってしまったわたしは、次の年の夏に退部届けを出しました。
先輩が卒業するまでも、卒業してからも、誰にもわたしの密かな想いは打ち明けませんでした。もしかすると「好き」というより「憧れ」に近い感情だったのかもしれません。だけど、女の子を好きになるなんて、きっと誰にも言わない方がいいんだろうと思いました。
「私、おかしいのかな」
それからは、誰かを好きになったりだとか、そういうことはあまり考えないようにしました。高校生になって、友達から「男の子を紹介してあげる」と言われました。どうしたらいいか分かりませんでした。
自分はおかしくて、女の子しか好きになることができないのか?
男の子を好きになることもできるのか?
自信がありませんでした。
わたしの周りでは、「彼氏持ちであること」が一種のステータスのようになっていました。
それにまんまと乗っかって、わたしにも何人か彼氏ができました。紹介してもらって、メールして何回かデートして、そしていつの間にか連絡をとらなくなりました。
やっぱり何かが違う、と思いました。
男の子といると、楽しいのは楽しいのですが、ドキドキがありませんでした。「これ、友達となにが違うの?」と思ってしまいました。
本当の自分を見つけた時
「わたしは女の子が好きなんだ」と確信したのは、高校2年生の時でした。夏季合宿で同じ部屋になった子でした。それまではただのクラスメートとしか見ていなかったのに、なぜか3日間一緒に生活しているうちに好きになってしまいました。自分で自分が分かりませんでした。
けれど、アキ先輩の時とは違う類の「好き」であることは確かでした。その子と話をしていると、ジェットコースターに乗ってどんどん空に近づいていく時のように、心臓の鼓動が速くなって気持ちが高ぶりました。
そして、同時に「罪悪感」がありました。
「好きになってしまって、ごめんなさい」
彼女が無邪気にわたしに触れるたび、彼女をもっと近くに感じたいと思ってしまいました。
それが後ろめたくて、心の中で何度も何度も謝りました。
わたしが10代の頃、知識も情報もなく、ただ自分は人と違うのだということだけを感じていました。友達にも親にも、誰にも話すことができませんでした。孤独でした。誰にも助けを求めることができなくて、いつも1人でした。
しかし大人になり、レズビアンバーやレズビアンイベントの存在を知りました。そこへ足を運んでいる内に、いつの間にかわたしの周りには、たくさんの仲間がいました。かつて、わたしと同じようにLGBTであることで悩みを抱えていた仲間です。彼女たちといると、「もう1人じゃない。自分の気持ちを抑える必要はないんだ」と思えるようになりました。
自分らしく生きていくためには
相手が同性でも異性でも、年上でも年下でも、立場が違っても。たとえ実らなくても。「人を好きになること、大切に思うこと」。それ自体がとても素敵なことなのだと気づきました。そして、自分と同じような仲間に出会いました。私はこれらの経験を通して、本来の自分を取り戻すことができました。自分らしくいられる今が一番楽しいです。